前のエピソード――皆、見えると思ってた

　大学につくも社交的な将太は顔見知りがいるや目立ちたがりやな面がややあるようで話し掛けにいく。そんな彼を横目にオレは空気のように通り過ぎる。

「お前、またアイツと登校してんの?　陰キャになるぞ」

「んなのねーって」

「だってアイツ、何考えてんのか分かんねーじゃん。一人になるのが好きなのか分からないけどお一人様は辞めてほしいよな。一人より複数人の方が――」

　なんてわざと聞こえる言葉。意味は分かるがなんで人間は複数人のグループになると孤独な人に対して牙を向くのか。数が大きい方が偉い。いつからそんなバカみたいな地位出来たのだろう。

　イジメられた経験からしていつもグループ。または、黙っているから口答えしないという意味で稀に個人もある。とはいえ、大体は見ててイライラするだのなんだのグダらないことが大抵。

　強いて言うなら“孤独は悪くない”。

　上手く使い分けたりする人もいる。

　グループといて「ちょっと用事があるから」と一人の時間を作るのもある意味大切。だから、学業だけではなく道徳で何かしらやってほしいものだ。

　孤独は悪くない。自分を守りたい人もいれば、本当に苦手で話せない人もいる。ましてや、“見たくなくても見える何か”がある人もいるから理解してあげてほしい、と。

　特にHPS、エンパスに関しては広めてもいいと思う。ここ最近、取り上げられるようになったが“エンパス”に関してはない。サイコパス、ソシオパス、のようにエンパスの反対ダークエンパスもあるからか【差別】【病気】と変に取り上げられたり、それを発端にイジメの可能性もあるとするのならHPS（敏感な人、共感が高い人）として纏めた方が適切。

　話しても理解しない人はしない。

　理解してくれる人もいるが十人十色。

「ん」

　校内に入り、廊下を歩いていると別のクラスだと思われる選択肢科目で見かけた人の後ろ姿。必須科目のためクラスは別だが選択科目だけ見かける女性だけオレは何度が気になっていた。オレみたいに嫌われているわけでもない。失礼だが見た目は同様の陰キャで友達がいなさそうにも見えるが【オタ活】関連から一人が多いがグループでいることもある。

　表からしたら楽しいときは心から笑って笑顔を振りまいているが、オレにはどうも仮面を被って無理しているようにしか見えない。

「あ……」

　なんて無理に声掛けようとしたがタイミングよく講堂へ。声が小さく周囲の人には“思い出して出た言葉”ぐらいにしか聞こえてないだろう。

　さり気なく出入り口から覗くと「おはよう」と二人の女性に話しかけている姿があったが、やはり辛そうな表情。友達関係、日常の悩みかは知らないが入学してから日に日に落ち込む姿にオレは気になりすぎて無意識のうちに目で追っていた。