31話 洞窟に潜入

翌朝、俺はすっきりした目覚めを迎えた。


しかし、他の奴らはそうではなかったらしい。


「の、飲みすぎたぜ……!」


「くっ、主人の前でなんたる醜態を……」


「わ、私、いつのまに寝たんですの? うぅー頭が痛いですわ」


「あれれ〜? 目が回ります〜」


「ったく、仕方がない奴らだ。ほら、順番にやるから待ってろ」


それぞれに蒼炎を施し、二日酔いを治していく。

毒が消えるということは、これにも効くはずだ。

案の定、皆が頭痛から解放されていく。


「そういや、ユキノは平気なんだな?」


「えへへー、ヴァンパイア族ってザルらしいです。何でも、目的の相手を酔い潰せるように」


「……その目的は聞かないことにしよう」


「ご主人様はお酒が効かないみたいなので残念ですねー」


今ほど、この蒼炎が発現して良かったと思ったことはない。

どうやら、酔わせてお持ち帰りコースはなくなったみたいだ。

昨日の残りの鍋を食べて、準備ができたら出発する。


「さて、どうにか成果が欲しいところだ」


「でも、この辺りには生き物が少ないですねー」


「多分っすけど、あいつが周辺のボスだったんじゃないっすかね?」


「まあ、あの強さなら納得か」


それが正しいのかはわからないが、順調に森を進んでいく。

すると、小さな洞窟を発見する。


「おっ、これは……もしや。皆、周辺に敵がいないか確認をしてくれ。後ろから敵が来たら厄介だ」


「うしっ! 俺も残りますぜ! 兄貴の背中を守るのが俺の役目!」


「はっ、見張り等は私にお任せください!」


「では残りの獣人と一緒に洞窟の入り口の見張りを頼む。俺とユキノ、ニールとエミリアで洞窟に入るとしよう」


俺は炎を灯して、洞窟内部に入っていく。

そこは天井が三メートルくらいで、道幅が二メートルくらいの場所だった。


「ご主人様〜暗くて怖いです〜」


「その棒読みやめんか。大体、お前を連れてきたのは夜目が効くからだろうが」


「はいはーい、わかってますよ」


「わ、私は怖くありませんことよ」


「ふぇ〜ん、外で待ってれば良かったよぉ〜」


能力的に選んだのだが……人選を間違えたかもしれん。

てっきり魔物でもいるかと思ったが、そのまま順調に進んでいく。


「……ご主人様、止まってください」


「何かあったか?」


「この先から空気の流れを感じます。おそらく、広い場所に出るかと」


「わかった。では、ここからはより慎重に進むとしよう」


全員が頷くのを確認し、ゆっくりと歩き出す。

しばらくすると、向こうから僅かに明かりが漏れているのが目に入る。

あそこが、ユキノが言っていた場所だろう。

すると、カランと何かを蹴る音がした。


「ん? 何か足元にあるな……」


「あつ、これは……骨ですねー」


「ひぃ……!? ほ、骨ですの?」


「ひ、人のですか?」


「んー、細かいですし何とも言えないですけど。この辺りから急に色々な骨が散らばってますね」


「……どうして、この辺りにだけ骨が散らばってる?」


ここに来るまでは魔物もいないし罠もなかったし、当然だが骨もなかった。

なのに、ここだけにあるのは不自然だ。

かといって罠があるような感じには見えない。

最悪何かあってもいいように、炎の幕を展開して先頭を進んではいるが。


「確かに変ですね」


「こ、この先にいる奴の仕業では?」


「でもでも、こっからまだ距離がありますよぉ〜」


「この先……距離……敵がいるとして……っ!!」


その瞬間、慣れ親しんだ熱を感じる。

俺が向こうにいる敵だったら同じ事を考えるはず!


「エミリア! すぐに最大の水魔法を頼む!」


「えっ!? ど、どういうことですの!?」


「いいから俺を信じろ!」


「わ、わかりましたわ! すぅ……全ての者共よ、激流に飲まれなさい——タイタルウェーブ大津波!」


俺の言葉を信じ、洞窟を埋め尽くすような津波が発現する。

それと同時に、向こうから熱波が押し寄せた。

水と火がぶつかり、激しく拮抗する!


「ひぃ〜!? 何ですかぁ〜!?」


「くっ……! アルス! どういうことですの!?」


「いいからそのままで! ユキノ! 炎が止んだ瞬間に広場に突入だっ!」


「わっかりましたー!」


「二人は後から来るように!」


俺とユキノは走り出す準備をし、その時を待つ。

間違ってもエミリアが負けるとは思っていない。

能力を制限されているとはいえ、仮にも作中最強クラスの魔法使いなのだから。


「ひぃー! お嬢様〜!」


「エミリア! いけるな!?」


「当たり前ですわ! こんの——私を舐めないでくださいの!」


次の瞬間、炎を水がかき消す!

それと同時に俺とユキノは洞窟の奥に滑り込む!

そこには、三メートルを超える牛の化け物がいた。

太い手足に逞しい胴体、右手には斧、左手には盾を持っている。


「ブモォォォォォ!」


「ちっ、ミノタウロスかよ!」


「あちゃー、アレかなり強いんですよねー。ただ、炎なんて使えましたっけ?」


「わからん! もしかしたら上位種かもしれん! ただ、あの骨の理由はわかった」


「あそこまでおびき寄せた敵を、炎で一網打尽にしたってわけですね。あとは……焼けた肉を食べると」


「わかってるからいうなし。ったく、緊張感のない奴だ」


だが、お陰で冷静になる。

そのおかげか、視界が広くなり……とあるモノを発見する。


「ご主人様! アレ見てください!」


「ああ、わかってる。どうやら、逃げるという選択肢はなさそうだ」


「そもそも、逃げられます? 背を向けたらあの炎が追ってくるでしょうし」


「別に逃げるだけなら俺とエミリアがいれば問題ない……ただ、アレを見て逃げるのはあり得ん」


そう、奴の後ろの壁には……魔石が埋まっていた。


つまり、ここは鉱山の入り口の可能性が高いということだ。






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