第5話 始まりの追憶 2
この世界は属性に合わせた7日を1週間、30日で1月、12ヶ月で1年としてる。
今は春……新年、1月になったばかり。
微妙に前世の感覚と違うのが少しややこしいけど慣れた。
気付けば魔法を学んでから、早くも2年くらい経ってる。
俺――いや私はもう7歳だ。
身体強化は案の定、負担が大きかったから放置。
つまり適性無しの私に出来る事は障壁のみ。
しかも貧弱な体も改善されず……
だから魔法の練習よりも体を動かそうって遊びに行く事が増えた。
中身のお陰で本来学ぶ事が短縮出来てるから、学校に入学するまで好きに時間が使えるんだ。
そんな感じで、好奇心の赴くままとにかく毎日を楽しんでる。
街の外にも興味はあるけど、危ないから子供は勝手に出られない。
魔物を退ける結界に合わせて、大きな壁で囲まれてるからね。
そんな危険な街の外で日々魔物と戦ってくれている、狩人――ハンターという人達。
両親もハンターだけど、お母さんは私が生まれてから家に居る。
魔物なんて私は見た事無いし、人から聞いたり本で読んだ程度の知識しかない。
人が魔力を放出すると、負のマナと呼ばれる物が生まれて……それが集まって何らかの生物の姿を模して魔物になるんだとか。
例え使わなくても、生きてるだけで魔力が溢れていくから変わらない。
それなら上手い具合に使っていこうって事らしい。
魔物は放っておくと少しずつ力を増してしまうから、街の外で戦って処理する必要がある。
だからその為のハンターは最も重要な職業と言っていい。
私なんかじゃハンターにはなれない。
別になる必要は無いんだけど……じゃあ将来何をしようなんて思ったりもする。
誰でも当たり前に魔法を使ってるから、魔法に頼らない仕事なんてそれこそ前世の感覚で言う普通な物だし。
ファンタジーな世界に生まれ変わって普通に働くのもなぁ……面白くない。
旅人――シーカーっていう所謂冒険者も居て、そういう本も多いから……それが良いかな。
街から街だけじゃない。山や森だって冒険するんだ。
せっかくこんな世界に生まれ変わったんだし、沢山の物を見て経験してみたい。
思いっきり楽しんでみたい。
と言っても、やっぱり戦えない事が大きな問題になる。
敵だらけの危険な旅なんて、実力も相当高いからこそ出来るんだ。
まぁ今考える事じゃないとは思うけどね。
私はまだまだ子供だし、毎日楽しく遊んで家族と幸せに暮らしていればいい。
――なんて、のんびりしてたんだけど……最近ちょっとだけ街が騒がしくなった気がする。
魔法で治せるとは言え、お父さんもケガをして帰ってくる事が増えた。
街の周辺で魔物がどんどん増えてるらしい。
手強いのも居て、ハンターも犠牲者が出てしまっていると街の人が話してるのが聞こえた。
嫌だな……必要な仕事だけど、お父さんが心配だ。
戦いという物を知らないし、この状況もどれ程の事かも分からない。
分からないから余計に不安だ。
そんななんとも言えない不安の日々を過ごしていたある日。
その日は昼から両親と出かけてた。
忙しなく戦い続けるお父さんの休養で、家族と美味しい食事をって事らしい。
でも歩いてるうちに、やけに街が騒がしくなっていった。
ここ最近の様子とは明らかに違う。
魔物が街のすぐ近くまで来てるなんて聞こえてくる。
両親も異常を察して、家へ引き返す事になった。
不安になって、私の手を引いて急ぐ両親を見上げた。
見上げた先にそれが見えた。
遠い空に黒い影。
前世ではある意味当たり前の様な、ドラゴンの形……
そして――けたたましい警報の、鐘の音が響いた。
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