第3話 お祭り
私からスマホを奪い、屋台を渡り歩く。
片時も放さず、画面をじっと見ては、誰とも目も合わすことはない。
ベビーカステラを頼むと食べることなく歩き出す。
お金は、私が払う。小さな手に引かれるままに
うちの長男と私の2人だけで祭りを歩く。
スマホはテレビ電話になっていて、熱を出した弟たちが、焼きそばとたこ焼きを買えと言い続ける。
断固拒否である。風邪の日はうどん、プリン、リンゴジュースとお腹に優しくあるべきだ。
ヨーヨーとスーパーボールを掬って帰るが、お兄ちゃんばっかりとワンワン吠える。
お熱な風邪ひき小僧達は元気そうだ。
帰り道のディスカウントショップで1本100円ちょっとの発泡酒を買い飲みながら帰る。祭りのお高いのビールと比べれば、節約した満足感がアルコールと共に脳を満たす。
長男は最近、ダメな大人というものに気づき始めたが、まぁいいや。
長男に焼きそばとたこ焼きを我慢させた代わりにアイスを3つ買って帰る。
戸を開けると熱い抱擁でお出迎えだ。文字通り熱い。
きつねうどん、ベビーカステラにアイス、歯磨きついでに着替えもって汗を拭く。布団で洞窟を作って誘いこんで、桃太郎、スイカ太郎と昔話を2周したらみんな寝た。
なかなか帰らぬ誰かさんと一緒に飲むはずの発泡酒は、甘辛く仕込んだ油揚げの魅力の前に、気づけば2本を残して空けてしまっていた。
ワサビ醤油のご飯で作った稲荷と梅若うどん、すぐに食べれるようにラップして、うどんは自分で茹でてもらおう。
もう帰ってきてもいい時間なのに、そう思いながらも起きてられない。
歯を磨き、いかにも待ってたけど眠ってしまった風に食卓に突っ伏して目を瞑る。ちょっとドキドキして待てるのはあと何年かな。ずっとがいいな。
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