第3章 監視対象・陸 春輝

夏輝に入った連絡は…こちら【電脳世界公安調査庁直属電脳世界配信警備局警備部総務課】と名乗るところからだった。


夏輝「はい、もしもし?」


相手「こちら、【電脳世界公安調査庁直属電脳世界配信警備局警備部総務課】なんですが~、あなたが新しく【配信部特命係】に入った、碧空 夏輝(あおぞら なつき)さんですか?」


夏輝「はい。そうですが?」


相手「あ~なら良かった、あなたに依頼なんですがね、陸 春輝の動向を監視して貰えませんか?」


夏輝「どうして?」


相手「こちらの【警備部総務課】は、あなた方の直属の上司の【管理監】である、【天川 照彦】様のご友人の、【森山 敦】国家公安委員長の後ろ楯があるのですよ」


夏輝「いや…「あるのですよ」て言われてもその人を知らないし…」


相手「分かりやすいように説明すると……【裏の管理監】です」


夏輝「はぁ?裏の管理監?なにそれ?」


相手「あなた方の直属の上司に何かあった時に活躍するお方です」


夏輝「はぁ~そうですか…。で?」


相手「要するに、【裏の管理監】からの命令です。あ、そういえば!私の名前言ってなかったですよね?

申し遅れました!【警備部総務課人事担当】であり、【国家公安委員長の秘書】である、【柳 孝太郎】です。以後お見知りおきを~」


夏輝「『命令』と言うのであれば…分かりました…動きます」


柳「宜しくお願いします」


夏輝「はい」


……そこから2ヶ月経ったある日……


春輝 「あんなやつどうでもいいけど、仕方ないな…」

春輝がTwitterを見ていると夏輝が不思議そうな顔で覗いてきた。

夏輝 「??え?なにそれ?」


春輝 「あぁ!気にしないで!!」


夏輝「何々?めっちゃ気になるじゃん!」


春輝「兄貴のことをツイッターで呟いてただけ」


夏輝「兄貴?」


春輝「あぁ、夏輝は覚えてねぇーか」


夏輝「?」


そう言えば、過去に現実世界で夏輝が俺に兄の職業を聴いたとき、煙に巻いてたな…と春輝が思い返しながら呟く…「あいつどうしてんだろうな~」


夏輝「どこかで頑張ってるんじゃない?」


春輝「そうだといいな」


夏輝「あ、話変わるんだけどさ……」


春輝「なに?」


夏輝「俺らの管理監の名前って知ってる?」


春輝「そう言えば知らないね…」


夏輝「俺さ、最近知ったんだけどさ……【管理監】の名前、【天川あまかわ 照彦てるひこ】て言う名前らしいよ」


春輝「天川 照彦?………(まさか!)」


夏輝「ん?どうしたの?」


春輝「【天川 照彦】なんだな?」


夏輝「え?う…うん」


春輝「ちょっと出掛けてくる!」


夏輝「ちょっとどこ行くんだよ!!」


春輝「すぐ戻るから!待ってて!!」


夏輝「わかったよ」


それから、2時間後に春輝は部屋に戻った。


夏輝「遅かったじゃん」


春輝「あぁ、ちょっと調べものしてて」


夏輝「何を調べてたの?」


春輝「俺の個人的興味で調べてただけだよ。

【天川 照彦】て人物をね、それとこっちに戻り際に聞いた事件の話をちょっとね」


夏輝「ん?事件?…何の事件?」


春輝「大手配信者殺害未遂事件だってさ」


夏輝「何その事件?」


春輝「電脳世界での事案らしいよ」


夏輝「ん?どういうこと?」


春輝「あぁ…夏輝はここが取り扱ってる事件の事は説明されてないのか?」


夏輝「どういうこと?」


春輝「俺達、配信部特命係はちょっと特殊な事件にも首を突っ込めるけど、それは後ろ楯あっての事なんだ。…だから、たまに俺達は電脳世界で起きた事案じゃなく、現実世界にて起きた事案を回されるポジションに居るんだよ」


夏輝「つまり、どういうこと?」


春輝「つまり…今回、俺達特命係は依頼が来ない限りは動かなくていい事案と言う事なんだけどね…でも少し調べてみたら、たぶんだけど依頼が来そうな事案だったからね…」


夏輝「というと?」


春輝「俺が調べてた人物…【天川 照彦】と同じ大学に在学してた人物で、それに【電脳世界公安調査庁】に居た過去がある人物だったんだよ」


夏輝「つまり…お役人だった人物てこと?」


春輝「そう」


夏輝「そんな人が、また何で配信者に?」


春輝「誰かの密命を受けてたんじゃないかて噂もあるけど…審議は分からない」


そうこうしていると………


刑事「お~~!ここが!【国家公安委員会の管轄の配信部特殊対策班】かぁ~」


春輝「?」

夏輝「?」


春輝「どなたですか?」


刑事「あぁ!初めまして!僕、【警備局刑事課】の『波川なみかわ なぎ』と申します!宜しくどうぞ!」


春輝「で?その【刑事課】の波川さんがどうしてここに?」


波川「あなた方は、【特殊対策班】の方々でよね?」


春輝「まぁ、正式名はそれとは違いますがね」


波川「あれ?でもメモには、そうやって書いてありますよ?」


春輝「このメモ書いたの誰ですか?」


波川「こっちの部長です」


夏輝「【豊田部長】だね?」


春輝「知ってるのか?」


夏輝「研修でお世話になった人だよ」


春輝「そうか、それぞれ研修の形式違ったから…担当教官も違ったんだな」


夏輝「そう言うこと」


春輝「で?その【豊田部長】から預かったメモに、【電脳世界国家公安委員会・委員長森山管理監統括部・電脳世界公安調査庁直属電脳世界配信警備局警備部特殊対策班宛】て書いてあったと…」


夏輝「………」


春輝「おそらく、この【森山】て人物は【裏の管理監】だろ?…だよなぁ?夏輝?」


夏輝「え!?なんで知ってるの?」


春輝「実は、調べものしてたてのは…嘘ではないんだが、本当の事実とは異なるな」


夏輝「どういうこと!?」


春輝「最近、俺を【監視対象】としてマークしてるのはなんとなく分かっていた…けど誰の差し金か分からなかったから、俺らの直属の上司を調べたんだ…勿論名前でね…そしたら、検索しても出てこないどころかすべての情報が消されてる訳よ。唯一あったのは彼のTwitterの情報だけ」


夏輝「そうなんだ…」


春輝「それで、夏輝が【裏の管理監】と繋がって情報を消したんだと直ぐに分かったよ。なぜならTwitterだけを手掛かりみたく残してたからね」


夏輝「………」


春輝「密命があったんだろ?そこに関しては、なんも言わないよ」


夏輝「でも…」


春輝「これで、全て分かったよ。調べてた人物…つまり、俺らの直属の上司にあたる…【天川 照彦】は…俺の実兄だ、そして兄が機能しなくなったときに【裏の管理監】として置かれたのが、俺らの事を現実世界でもよく知る人物で、尚且つ電脳世界で高い地位に居た人物と言うことで…【森山氏】が選ばれたんだ…。」


夏輝「ちょっと待って!!それが、この事件に関係あるの?」


春輝「大いにあると思うよ」


夏輝「どうして?」


春輝「たぶん、【裏の管理監】である【森山氏】を選んだのは、おそらく…【電脳世界国家公安委員会の有識者】とも言う人物達だろう、それ故に「ボロ」が出たんだ…」


夏輝「ボロ?」


春輝「夏輝は知らないだろうが…実兄である人物…つまり、俺らの直属の上司にあたる人物だか…ここ、【電脳世界】の【パスコード】がないんだ」


夏輝「パスコード?」


春輝「波川君、説明宜しく!俺はちょっと疲れたし用を足したいから頼むね」


波川「えぇ!?」


夏輝「ごめんね~自分勝手な奴で」


波川「はぁ…分かりました……。説明します」


夏輝「宜しく頼みます」


波川「【パスコード】…つまり、電脳世界での認証番号の事なのですが…夏輝さんにも、たぶんパスコードが埋め込まれるハズですよ」 


夏輝「え?俺、全然知らない!」


波川「では、服の腕の部分を捲って見て下さい…きっと腕の部分に刻まれてるハズです」


そう言われると、夏輝は服の袖を捲った…。


夏輝「本当だ!…[112023066126]て入ってる!」


春輝「そう!俺も入ってるぜ!」


夏輝「うぉ!びっくりした!」


春輝「俺のは、[112023053165]だがな…」


波川「それは、あなた方の固有番号です」


春輝「固有番号?」


波川「11は、勤務先の固有番号です。」


春輝「つまり、ここの固有番号てことだな?」


波川「そうです」


春輝「その下は?」


波川「2023は、この世界に来た年です」


春輝「なるほど」


波川「そして、05や06は、あ行~わ行までの数字です」


夏輝「なるほどね」


春輝「じゃ、最後は?」


波川「最後の数字は、誕生日と年齢の下一桁の数字です」


春輝「なるほどね」


そうして、波川が一通り【パスコード】について説明し終えた時に…部屋に一本の連絡があった。


電話相手「【配信部特命係事務局】の【野田山 灰】です!」


夏輝「はい、なんでしょう?」


夏輝は不思議そうに顔を傾げながら電話に出た


野田山「こちら、【法務省特別対策班配信部特命係事務局】なのですが…そちらに、陸さんはいらっしゃいますか?」


夏輝「居ますよ」


野田山「変わって頂けますか?」


夏輝「分かりました。……春輝にだって」


春輝「?俺に?」


春輝「もしもし?どちら様ですか?」


野田山「こちら、【法務省特別対策班配信部特命係事務局】の【野田山 灰】です!お久しぶりです」


春輝「あぁーー野田山さん!」


野田山「研修の時以来ですね!」


春輝「そうですね!でも、どうして?野田山さんが、僕なんかに?」


野田山「それが…【今回の事件】の事で……」


春輝「【今回の事件】と言うと…大手配信者殺害未遂事件ですか?」


野田山「そうです…その事件、捜査しないで貰えます?」


春輝「どうしてです?」


野田山「実は………」


春輝「なるほど。分かりました。出来るだけやってみます」


夏輝「知り合いか?」


春輝「あぁ、研修でお世話になった人だ」


波川「それでは、お二人に【依頼】の事伝はしましたので、私はこれで!」


春輝「ちょっと、波川さん待って下さい!」


夏輝「?」


波川「なんですか?」


春輝「そちらの、【豊田部長】を任意で事情聴取しても良いですか?」


波川「え?どういうことです?」


春輝「さっき、野田山さんからの情報に…現場に豊田部長も居たと証言が入ったのでね…」


波川「………」


夏輝「そんな!」


春輝「俺もこんなことはしたくない…けど、正義の為だ!」


夏輝「それで、その人が違うってなっても?」


春輝「夏輝…お前はじっとしててくれ…気持ちはわかる…けど、野田山さんから言われたんだ」


夏輝「その、野田山って一体何者なんだよ!」


春輝「俺ら特命係の前任者とも言える人物だよ」


夏輝「え?」


春輝「【野田山 灰】…電脳世界公安調査庁の元Sで反社会的勢力にも顔がしれ渡っていて、【天下の正義執行人】とも異名のつく人物だよ」


夏輝「そんな人からどうして?」


春輝「今は、俺達を金銭面で援助してくれてる人物なんだよ…ほら【事務局】って言ってたでしょ?」


夏輝「あぁ、そういえば…」


春輝「それは、ここの【事務局】と言うよりかは、上の組織の事務局なんだよ」


夏輝「と言うことは…ここよりも風向きが良いから、情報が入ってくると言うことか」


春輝「あぁ、そう言うこと」


夏輝「じゃ、捜査しろって事?」


春輝「捜査じゃない…【調査】だ」


夏輝「調査?」


春輝「今回に限ってはな」


夏輝「どういう事?」


春輝「野田山さんの意向で、今回は捜査じゃなくて、調査にして欲しいと言う形になったんだ」


夏輝「………意向を買ったわけか?」


春輝「睨むなよ…夏輝、今回限りだ」


夏輝「どういう事?」


春輝「こっちには【切り札】があるから、「【野田山】さんの不正を白日の元に晒すのは、もうしばらく後で良いよ」


夏輝「…何か考えがあっての事なんだな?」


春輝「そうだ!俺を信じてくれ!」


夏輝「分かったよ」


そうやって、長い事件の幕があけたのだった…続く

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