おでかけ
長船 改
おでかけ
ある日、おばあちゃんが縁側でお茶をすすっていると、孫のショウタがあっちへ行ったりこっちへ行ったりと、何やらばたばたしているのを見かけました。
「おやおや。いったい何をしているんだい?」
おばあちゃんは、居間に入ってきたショウタに話しかけました。
ショウタは元気いっぱいといった様子で「お出かけの準備!」とだけ答えました。
おばあちゃんは「そうかい。お出かけかい。」と言って、にっこりと笑いました。
ショウタはおばあちゃんの隣にやってくると、背中に背負ったリュックサックを降ろし、中に入っているものを確認し始めました。
リュックサックには色んなものが入っていました。
お菓子に水筒、タオルや着替えなどなど。
中には、お出かけには必要のなさそうなロボットのおもちゃまでありました。
「あのね、パパとママに会いに行くんだ!」
そう言って笑うショウタに、おばあちゃんは目を丸くしました。
「そうかい、もうそんな時期かい……。」
おばあちゃんは目を細め、何度も頷きます。
そして、ショウタの頭を撫でながら「だけどあの2人はいつもバラバラに世界中あっちこっち飛び回ってるっていうのに、よくショウタとの予定を合わせる事が出来たもんだねぇ。こりゃ感心だ。」と言いました。
ショウタは「おばあちゃんも一緒に行く?」と尋ねました。
しかしおばあちゃんはゆっくりと首を横に振り、「おばあちゃんはよしとくよ。せっかくの家族3人水入らずだ。楽しんどいで。」と言って、またお茶をすすりました。
「わかった!そうする!」
ショウタはリュックサックを背負い、縁側の外に置いてあった自分の靴を履きました。
「ちゃんと明日の夜には帰ってくるんだよ。そうじゃないとこっちに戻れなくなっちまうから。」
そう注意をするおばあちゃんに、ショウタは「はーい!」と大きな声で返事をしました。
「じゃあ行ってきまーす!」
大きなリュックサックによろよろとバランスを崩しながら、それでもなんとか走っていくショウタの背中を、おばあちゃんはにこにこと笑顔で見送ります。
「おやおや、あの嬉しそうな背中はどうだい。でも無理もないか。あの子にとっちゃあ、コレがこっちに来て初めてのお盆、初盆なんだものねぇ……。」
おでかけ 長船 改 @kai_osafune
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます