第50話 亡骸(2)

 でも少し間が開けば。


「うぉ、おおおっ! やったぞぉ! やったぁっ! これで俺が、この集落の王だぁあああっ!」


 そう、バカなウォンの覇王宣言!


 勝利の雄叫びを聞き。


 そこで初めてみんなが我に返ったらしいから。


 ウォンから一方的な強打を食らい躯になり、冷たくなった僕の身体へとサラが慌てて詰め寄り。


 そして抱き起し、泣き叫びながら。


 アイカとウォンへの恨みつらみを漏らしつつ、サラが泣きだしたのだと。


 そしてサラに続くようにウルハやその他の奥さま達が嗚咽を漏らしたり、泣き叫んだり、啜り泣きをしたらしいと。


 僕は後日、洗濯の最中に教えてもらった。


 でッ、サラから恨みつらみを言われ続けている二人──。


 ウォンは土壇場で僕に勝利をした訳だから。


 自身の頭や顔から血を流そうが上機嫌──。


「わっ、ははは」と。


 あいつは勝利の美酒に酔いしれ、歓喜していたらしい。


 洗濯の最中に主夫の人達が、ウォンに対して不快感を募らせた顔をしつつ、僕に色々と教えてくれた。


 だから僕も「フムフム、そうなのですね」と洗濯をしつつ言葉を返したと思う?


「うん、そうなんだよ。男王……。そして酋長はなぁ?」と。


 アイカのことを事細かく教えてくれてね。


 どうやらアイツも、僕の頭が反対を向いている様子を凝視して──。


 自身の両目を大きく開けたままの状態で唖然、呆然としていたらしい。


 いくらサラやウルハ、その他の奥さま達に。


 僕が他界をしたのはアイカが原因だと、みんなから恨みつらみを言われても。


 初めの頃は無反応でいたらしいからね。


 でも、まあ、アイカがウォンの命乞いをしなくても。


 僕自身も立っているのがやっとの、虫の息と言う感じだったと思うから。


 あのまま、最後の気力を振り絞り、ウォンに止めを刺しても。


 僕自身もウォンと仲良く死んでいたと思うのと。


 もしかすると、アイカの奴が憤怒して僕のことを殴り殺した可能性だってあるしね。


 だって僕はウォンとは違い。


 アイカの夫だったとしても、アイツとの血の繋がりは一切ないから。


 自身の妻に殺された可能性もあるよ。


 今の僕の姿──。


 そう、二人から逃走を図り、ジャングル内を駆け抜ける僕の姿を見ればね。


 だからさ、僕の元妻に殺されなかっただけでも、よかったと思うしかないよ。


 後で僕を殺したのがウォンではなく、アイカだとわかれば。


 僕のショックは更に大きく、心の傷だって大変に大きくなり。


 屋敷内で引きこもりになっていた可能性だってある訳だからと。


 僕が説明をしたところで話しを元に戻すけれど。


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