第41話 英雄の雄たけび? (2)
でも、みなさんも知っての通りで、僕もウォンへと怒声を吐き、悪態をついたから。
奴に殴る、蹴る、の暴行を受け。
自身の身体中が痛くて仕方がない状態だった。
だからサラに助けてくれと嘆願されても、僕の身体は安易に立ち上がることはできないと。
僕もカッコ良く説明をしたいのだけれど。
そんなことはうそだよ。
今も僕はウォンが怖くて、アイカ他、奥さま達を捨てて逃げている訳だから。
あの時の僕も一緒だよ。
ウォンの覇王宣言を聞き、自身の身体を震わせ、怯える、情けない男王さま……。
そう、あの時の僕は狸寝入り、死んだ振りをしていた。
ウォンの奴が怖くて仕方がない。
だからサラが! 奥さまが! 僕を名指して助けを呼んでも無視を決め込んでいた。
「ウォン! 貴様! サラの腹を! 女の腹を殴ったなっ!」
僕がウォンに怯え、ガクガク、ブルブルと身体を震わせながら狸寝入りをしていると。
僕と同じく、ウォンに暴力を振るわれ、地面に横たわり呻っていたウルハが、自身の気力を上げ、立ち上がり。
ウォンのことを睨みつつ怒声を吐けば。
ウルハは、アイカよりも先に、ウォンへと殴りかかった。
僕の代わりにサラを救出しようとね。
でもさ、ウルハの奴も最初に。
ウォンから不意打ちで、自身の急所を狙われて、まだ足にきている最中だから。
フラフラとした足取り──。
それも自身の脇腹を抑えつつ。
「サラを返せぇえええっ!」と吠えながら。
ウォンに殴りかかっても。
ヒョイ! だ。
ウォンの奴にあっさり交わされ。
ドン!
ガン! と。
逆にウォンから蹴りの連打を入れられた。
だから今度はウルハの口から。
「きゃぁあああっ!」と絶叫が放たれ。
その後は、「うぅ、ううう」と呻りながら地面に横たわる。
だからウォンの奴は勝ち誇った顔をしながら。
ウルハの背に、自身の足を乗せ。
「うぉ、おおおっ!」
ウォンは勝利の雄叫びを上げる。
だからアイカの奴がとうとう頭にきて、憤怒しながらウォンへと呻りつつ、罵声を吐いたと言う訳なのだ。
でも、もう既に興奮して、自身の身体中にアドレナリンを分泌させているウォンが、いくらアイカが酋長だとしても。
ウォン自身がもう既に覇王宣言──。
女尊男卑思想ではなく、男尊女卑思想を主張して、女性であるアイカの意見に耳を傾ける気はさらさらないのと。
ウォン自身はまだアイカは自分の物! 嫁だ! と思っている節もあるから。
「煩い! 黙れ! アイカ! 今日からお前もウルハも含めて、妹達も俺の物だ! 分かったなぁ! アイカー!」と。
「今の俺の言葉に意義ある者は前に出ろ! 俺がアイカ姉妹とウルハをかけて勝負をしてやるから前に出ろ! 今直ぐにだぁあああっ!」
まあ、僕の元嫁が大変に喜びそうな台詞……。
そう、アイカのバカが歓喜して、自身の身体を火照らすぐらいカッコ良い言葉……。
英雄伝説に出演する騎士さまが、自身の惚れた女王さまを。
どうしようもないぐらい、役立たずの王さまから力づくで強引に奪い。
女王さまと結ばれ、巨大な帝国を築くような英雄伝説のヒーローみたいな台詞を。
ウォンが威風堂々と吐き、放つから。
アイカの奴は「ウォン」とだけ言葉を漏らせば。
その後は確か、あのバカは自身の顔を桜色に染めながら沈黙したと思う。
◇◇◇
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