第36話 ウォン! (1)

「ウ、ウォンさん、もう、やめてよ。やめて……」


 僕は、自身の身体を震わせながら尚且つ小声で恐る恐る。


 そして自身の言葉を詰まらせながらウォンへと、僕は勇気を振り絞り。


 僕の奥さま達にこれ以上酷いことをしないでくれと嘆願をしたんだよ。


 こんな情けない僕がね、初めて大人の男性──。


 それもオークの漢戦士最強と謳われているウォンの目の前で大の字で佇み。


 地面で横たわり呻る、ウルハやその他の奥さま達の壁になって魅せた。


 あの時の僕は相変わらず、自身の身体と足を震わせてはいたけれど。


 男王として僕なりに頑張ったと思う。


 でもね、あいつは、そんな僕に対して。


「チビ、退け! 邪魔だ!」と悪態をつきつつ。


 僕の身体を自身の左手でドン! と、突き飛ばし、自分に立ち塞がる壁を退けると。


「おい! お前等! 酋長に逆らえばどうなるかを、皆の見ている前で見せしめにしてやるから覚悟をしろよ」と。


 ウォンはニヤニヤいやらしく笑いながら言葉を吐けば。


 ドン!


 ガン!


 ドン! ドン!


 ボコッ! 


 ガン! ガン! と。


 相変わらず地面に横たわるウルハやその他の奥さま達の麗しい顔や腕、背等を踏みつけ、蹴りの連打を入れ始める。


「きゃぁ!」


「ぎゃぁ!」


「うッ!」


「ツ……」


「痛い」


「いッ、痛い」


 だからウルハや、その他の奥さま達の顔が激痛で歪み、悲痛な声をまた漏らし始めたよ。


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