第37話 ウォン! (2)
でもあの時の僕は、ウォンに邪魔だ! と荒々しい口調で突き飛ばされて尻もちをつき、唖然としながら様子を窺っていた弱虫だから。
そのままウルハやその他の奥さま達……。
心に傷を負った上に、僕の正式な妻、筆頭奥方であるはずのアイカから優しい言葉、労りある言葉を一言もかけてもらえず。
地獄にでも落ちた気分で、肩を落としていた僕に優しく手を差し伸べてくれた。
労りある言葉もくれた。
頭も優しく撫でてくれた奥さま達──。
自分の財産をウォンのいい
アイカの奴が僕がウルハ達と集落を出ていくことを了承したから。
気が動転──。
アイツは動揺、困惑が治らずに、涙を流しつつ、嗚咽をもらしているから。
ウォンの暴走を止めることなどできいでいる。
だからウォン奴はここぞとばかりに。
「アイカに逆らったお前等は見せしめとして、後で俺の物で突き、おもちゃにしてやるから覚悟をしろよ。お前達」と罵声を吐きつつ。
ウォンはウルハ達を足踏み、足蹴りを続けていたと思う?
まあ、そんな状態のあいつ! ウォンだからね。
あの時のあいつは、あの集落の男王気分にでもなった気分に酔いしれたじゃないか?
あの日からウォンは男王になったのかも知れないね?
今の僕……。
そう只今、自分の奥さま達を捨てて、僕はアイカとウォンから逃走を図っている訳だからと嘆いたところで。
僕の愚痴話しを元に戻すけれど。
僕は完全にあの集落の覇王化したウォンに対して再度ウルハ達を庇うために勇気を振り絞り。
ウォンの前で両手を広げ壁──盾になって魅せたよ。
「ウォン! やめろ! やめるんだ!」、
「これ以上、ウルハさん達に酷いことをするなぁ!」、
「ウォン! これは、この集落の男王としての僕の命令だ!」、
「だからウォン! 直ちに拳をしまって、この場を立ち去れ!」、
「そうすれば、彼女達に対しておこなった荒々しい行為や暴力に対して咎めることはしないから」、
「ウォン! お前は! この場から立ち去れ!」と。
僕は生まれて初めて、年上の男性を睨みつつ、憤怒しながら怒声、罵声を吠え、吐いて魅せた。
あいつ! ウォンに対して僕は、震え慄くこともしないで吠えてやったから。
あの場、戦場だった場所……。
喧騒していた場所が、僕の威勢ある声でシーンと静まりは帰るのだが。
覇王化しているウォンが男王である僕の下知に対して聞き入れる訳もないから。
「チビ! お前、今俺に何をほざいたか分かっているのか?」
ウォンの奴は怪訝表情で僕へと尋ねてきた。
だから僕は「ああ、わかっているよ。だから今直ぐこの場を去れ、ウォン! 不愉快だ!」と、告げた記憶があるよ。
だからウォン直ぐに。
「うぅ、ううう。こ、このクソガキがぁ! ぶっ殺してやる!」と。
自身の身体を怒りで震わせながら、僕に呻り、吠え──。
あいつの硬くて重い拳を剣の代わりに振り下ろし、謀反を企ててきた。
◇◇◇
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