第15話 僕は集落内で浮き始める(1)
「おい、健太。今日もわらわの為に洗濯がんばれよ」
「御方、洗濯頑張って」
「あなたぁ~、お気をつけてね」
「健ちゃん、サラのためにも洗濯がんばってね」と。
今日も朝から……と、言っても?
ここはスマートフォンの電波が入らないから使用もできない上に。
僕を女神さま……。
そう、シルフィーの奴が、僕の意志とは無関係に、異世界召喚した時に。
あいつが破壊したみたいだから、スマホの画面に時刻表示が出ない。
だから今、僕自身も何時なのかはわからないけれど。
僕は夜明け、鳥のさえずりと共に起きて、家事を始めるから。
まだ正午にはなっていないと思うから?
日本時間の九時か、十時ぐらいだろうと思われる時間帯から。
僕は奥さま達の熱いラブコールを背に浴びながら小川へと向かう。
「クソ~! あのチビ! 未だガキの癖に俺達の酋長や妹達を嫁にして本当に歯痒いな」
「俺はプラウムのことを愛していたのに」
「ああ、俺だって、ツンデレぽいが。エリエの事を心から愛していた」
「俺は、あの可愛いサラに惚れていたから、もう少ししたら愛の告白をして。サラの許へと洗濯篭を持っていくつもりだったのに」
「俺はプラウムだ!」
「俺はエリエだ!」
「えぇっ! お前もプラウム狙いだったのか?」
まあ、その他にも多々、僕の陰口を叩いたり、嘆いていたみたいだよ。
家の奥さま四人は、他人が羨むほど、本当に麗しい四姉妹だったからね。
チビでのろま……。
魔法は使用できないし、武力もない僕のお嫁さんにするのは可笑しいこと。
勿体無いことだと。
集落の男性達が不満を言っていることは。
いくら鈍感な僕でも、あの頃わかっていた。
でも他人が僕への嫉妬心で漏らす、悪態も。
僕は素知らぬ振りをしつつ。
僕が洗濯をしないと。
あのアイカさんまでもが、僕に対して不機嫌極まりない表情をするから。
僕は他人から白い目で見られようが。
素知らぬ振りを続けながら洗濯場へと通っていた。
でも僕の許に新たに洗濯をしないといけない
そう、この僕に魔力や武力と言ったチート能力や魔法アイテムも与えずに。
自身の娘や義理の娘を与えたエルフの女神シルフィーの追加……。
そう、あいつの容姿を見て確認をすればわかる通りで。
まさに女神さま……。
大きな子供が二人もいるようには、到底見えないほどの若さと美貌だから。
この集落内に住む男性達の、憧れの的でセックスシンボルだから。
そんなあいつの許へと通い夫のように訊ねては洗濯物を受け取るだけではなく。
僕は屋敷の掃除をしたりもするし。
あいつが僕に妻として甘えてきたらヨシヨシもしてやらないといけない。
特にシルフィーの奴は、僕に甘える時の声が大きいから。
あいつの声は外まで漏れていたらしい。
「えぇ、えええっ! 何でぇえええっ! 嘘だろぉっ! 俺の女神様がぁあああっ!」
「おい、冗談だろう? 家の女神様は、アイツの強引な求婚も断ったんだぞ!」
「だよな?」
「うん……」
「あのクソチビ! 俺の女神様迄、手をだしやがった! 絶対に許さない!」
シルフィーに対して好意を持つ男性達も多々いるからこの通りだった。
僕に対しての悪態の方が、日増しに増えていった記憶がある。
だから僕は、集落内を歩く時も、自身の腰を屈め、下を向きつつ、上目遣いで小さくなりながら歩いた記憶がある。
それを偶々、アイカさんが見れば。
「何だぁ~、健太ぁ~。その弱々しく、情けない姿は。わらわの夫なのだから。自身の背隙を伸ばし、威風堂々。肩を振り、風を切って歩け。分ったなぁ、健太~?」
僕は何も事情も知らないあいつ!
アイカの奴によく叱咤された記憶がある。
◇◇◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます