第13話 女神様! (2)

 ドン! ドン! と。


 僕は屋敷の扉を叩く。


「シルフィーさん! シルフィーさん! いますか?」


 僕が叫びながら扉を叩けば。


「あら? あなたぁ~。やっときてくれたの~。わたくし寂しかったのよ~」と。


 僕と会うのは初対面になるはずなのに。


 シルフィーの奴は、自身の部屋の扉を開けると直ぐにこの調子でね。


 あいつは歓喜しつつ、僕を向かい入れてくれた。


 だから僕は戸惑った記憶があるよ。


 シルフィーが僕に対して余りにも馴れ慣れしいと言うか?


 彼女自身が、一応は男である僕に対して無防備過ぎるのもあるけれど。


 流石親子だよね。


 プライムさんを見た時と一緒かな?


 余りにもシルフィーが美し過ぎるから見惚れた僕だった。


 だってあいつ、大きな子供が二人もいるようには到底見えない。


 そう、人で言うところの二十代中盤か、後半ぐらいの、異国情緒溢れる金髪碧眼の女性にしか見えない。


 だから僕はシルフィーの屋敷の玄関先で唖然、呆然としつつ、佇んでいた記憶があるよ。


 まあ、そんな僕にシルフィーの奴は嬉しそうに微笑みながら。


「あなた~、早く、早く~。部屋に入ってぇ~。さぁ、早く~」


 僕の二の腕を掴んで、自身の屋敷へと入れと、強引に誘ってきた記憶がある。


 でも僕は、シルフィーの洗濯物をとりにきただけだから。


「あ、あの、シルフィーさん? 僕はアイカさんに頼まれて貴女の汚れた衣服や下着をとりにきただけなので。屋敷内へとあがるのはよろしいです。洗濯物を渡してもらえますか?」


 僕の二の腕を強引に引き、部屋へとあげようとするシルフィーに対して。


 僕が苦笑いを浮かべつつ、拒否を示した。


 だって僕の主夫業は、洗濯を終えたからと言っても終焉を迎える訳ではなく。


 僕は神殿に帰れば。


 洗った洗濯物も陽が高いうちに干し、乾かして入れ込まないといけない。


 その他にも、夕飯の準備やアイカさん達姉妹の湯浴びの準備もしないといけない。


 そして食べ終えればお片づけ。


 その後は、奥さま達四人への夫としての義務も果たさないといけない僕だったからね。


 超がつくほど忙しい。


 そう僕は、この世界にきて初めて、主夫業と言う物が。


 こんなにも大変で、忙しい物なのだと理解ができた。


 だから僕は、世の主婦さま達に対して、本当に御苦労さまだと言いたい衝動に何度も駆られたぐらい。


 僕は忙しい日々を過ごしていたから。


 シルフィーが部屋に入れと誘うが。


『御遠慮します!』、


『洗濯物だけ手渡してください!』と。


 あいつに告げた。


「えぇ~、あなたぁ~。ちゃんとわたくしの部屋の掃除もしてください。それがあなたの義務ですからぁ~」


 僕がこの世界……。


 この我儘女神さまの気まぐれで、異世界召喚をされた日に。


 アイカさん達姉妹から告げられた下知と同じことをシルフィーにも、不貞腐れ顔で言われた。


 だから僕は、「えぇ~、うそでしょう?」と悲鳴をあげた記憶がある。


 でも僕が叫んだところで、この我儘、気まぐれ女神さまが許してくれる訳ではなく。


「あなた~。アイカさんから聞いているはずですよ。わたくしの身の回りの世話をするようにと。だから早く屋敷へとあがり。義務を果たしてください」と。


 僕の女神さまは、自身の頬を可愛く膨らませながら僕へと不満を告げてきた。


 だから僕は仕方がないと思いつつ。


「おじゃまします」と言葉を漏らして。


 女性一人が暮らす屋敷へと入り。


 主夫業を再開すると。


 僕の身体が何だか重たいな?


 一体、僕の身体は、どうしたのだろうか、ではないよね。


 僕がふと気がつけば。


 シルフィーの奴は、僕に抱きつき甘えているのだよ。


「あなた~」、


「あなた~」と。


 あいつは僕へと、甘え声音で囁きながら抱きつき、甘え。


 僕の腹部の下にある。


 あいつにとっても大事な物をやたらと刺激しては妻らしく振る舞ってきたから。


「シルフィーさん、僕の大事なところを余り刺激しないでください……。僕も一応は男なので。そんなに優艶に刺激をされれば。僕の煩悩が持ちませんからやめてください」


 僕は一応はシルフィーの奴へとやめるようにと告げた。


 でも僕が、シルフィー屋敷を掃除していると言うことは、そう言うことだから。


「別にいいわよ。あなた~。わたくしもそのつもりだから。ふっ、ふふふ」


 シルフィーの奴は、妖艶に笑いつつ、意味深に告げてきた。


 でも僕は、そんなあいつに対して、「あっ、ははは」と笑い誤魔化し、また家事──。


 部屋の掃除を始めだす。


 僕の腰に抱きついている、シルフィーをモップのように引きずりながら部屋掃除を続けていると。


 僕はいつのまにか、フルチン! と化しているから。


 僕が「あっ!」と驚嘆を漏らし、足を止めると同時に。


 シルフィーの奴は、パクリ! だよ。


 パク!


 だから僕の理性が飛び! 煩悩パワーがさく裂!


 僕自身も我に返り、気がつけば。


 シルフィーのお尻を叩きつつ。


 ハイド! ハイド! をしている最中だった。


 だから僕の女神さまの口から。


「ヒィ、ヒ~ン!」と。


 馬の嘶きみたいな台詞が漏れていたような気がするよ。



 ◇◇◇

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る