第6話 僕のハーレム王生活の始まりは体調不良から(1)

 神殿の裏で魔法の使えない僕は、自身の口から「フゥ、フゥ」と、風を吹きつけながら火を起こし終えると。


 その後は朝食を作り始め。


 そして無事に作り終えれば。


「よーし! 寝ているみんなを起こしにいくか!」


 僕は独り言を漏らしつつ勇んで……。


 そう、日本人の思春期の男子ならば一度は憧れる。


 異世界ファンタジーな世界のハーレム王……。


 僕の神さま、女神さまの気まぐれによる強制的な異世界召喚は。


 只今自身の大事なものに対して、男気を魅せることもできずに。


 ある者から敗走をしつつ地面を駆ける。


 僕の情けない容姿を見ればわかる通りで。


 僕にはチート的な魔法や武力、武器を報酬としていただいた訳ではなく。


 女神のように麗しい奥さまを一度に四人ももらった。


 だから僕は一時的にでも、日本人ならば一度は夢見る。


 夢の異世界ハーレム王となることができた。


 だから僕は自身の毎日のお仕事であるの一つ、朝食作りが無事終わった。


 だから毎日恒例の、寝ている奥さま達を起こしに神殿へと向かい、到着すれば。


 自身の奥さまの寝顔を眺め、うっとり。


(僕のアイカさんは本当に綺麗だな……。この女性ひとが僕の奥さんだなんて未だに信じられないよ。これって本当は現実ではなく。僕の夢の中の妄想ではないだろうか?)と思う。


 と、言うことはないよね?


 みなさんも知っての通りで。


 只今僕は「クソ! クソ!」と泣きながら悪態をつきつつ。


 逃走? 逃亡? 家出?


 まあ、どれでもいいけれど。


 ある者達から逃走を図っている最中──。


 それに僕は、毎日のように。


 奥さま達四人から。


 ドゴン! だから。


 僕の口から自然と「いてぇ!」と悲痛な声が漏れる。


「スゥ、スゥ……」


 でも僕の麗しい奥さま達はこの通りだったのだ。


 そう僕が、『起きてぇ~! 起きてぇ~! アイカさん、起きてぇ~! 朝だから起きてぇ~!』と身体を揺すり、揺らし続けても


 僕の奥さまはこの通り。


 いつも寝がえりを打つだけだった。


 だから僕の華奢な身体にアイカさんの裏拳が直撃すれば。


「うぅ、うううっ。痛い。痛いな、アイカさんは」


 僕は自身の腹部を押さえつつ、呻りながら。


 両目から涙を漏らす日々が続いた。


 だから僕の意志とは無関係におこなわれた、この強制的な異世界転移は。


 僕の予想に反した生活……。


 そう僕が以前暮らしていた日本のアニメや漫画、ライトノベルのヒーロー達みたいに。


 僕が神さま、女神さまから特殊な能力や魔力、武力を与えられ。


 今寝返りをし、僕の腹部へと裏拳を入れた、麗しいヒロインさまを助けつつ。


 この世界の魔王を討伐する勇者さまになるとか?


 僕のお腹を寝返りで殴ったヒロインさま、僕のアイカさまはね。


 この小さな集落の酋長! 女王さま!


 そう、日本の太古にいたらしい? みたいな立場の女王でありシャーマンだから。


 僕が、神さまから与えられたアイカさんを助けつつ。


 僕の中に秘められた謎の力が働き。


 僕が自身の智謀とチート的能力を駆使しつつ。


 この大陸を統一して皇帝陛下──!


 そしてヒロインさま達と裕福に余生を暮らす。


 異世界ファンタジーな英雄物語とは、ほど遠い世界だったのだよ。


 まあ、只今走る僕の様子や過去の回想シーン──。


 主夫業をしている僕の様子を見ればわかる通りでね。


 僕はヒロインさま達の艇のいい下僕だった。


 だって僕はもうこの世界にきて、半年以上になるけれど。


 最初の一週間ぐらいだった。


 僕のメインヒロインさま、アイカさんが優しかったのは。


 それも何で彼女が僕に優しかったのかは。


 僕がこの地の水や食べ物が合わず嘔吐に下痢の、食中毒を起こしてね。


 僕が生死の境を行ったり来たりしたからであり。


 瀕死状態の僕を見てアイカさんは、泣き崩れるエリエさんやプラウムさん、サラちゃんを叱咤激励しつつ。


 アイカさんを筆頭に、奥さま達の愛──渾身的な介護で僕は不死鳥の如く蘇り。


 今にきている訳なのだが。


 このジャングル内を涙を流しつつ、走り抜けていく僕の容姿を見れば。


 あの時に病魔に侵され、他界をしていた方がよかったような気もする? と。


 僕の嘆きや愚痴ばかりを聴いてもみなさんは面白くはないだろうから。


 僕の原始的な異世界生活の、朝の説明の方をもう少し詳しくするから。


 みなさま聞いてください。


 お願いします。



 ◇◇◇



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る