第0話 ∞ 表その2
カナタの眉間に向けて、発射されたその銃弾は、しかしなぜか…命中することなく、宙へ消失した。
「クソ…が…底力なんて見せずに…潔くくたばりやがれ!!」
トオルは、喚きながら、今度は何発も続けて発泡した。 標準が定まっていないわけでわなく、それは到底素人とも思えない、まるでいくつもの戦場を渡り歩いた傭兵のように
正確無比であったが、不思議なことにカナタには、一発も当たらなかった。
「だから言ったでしょ…僕は殺せないって。 現実に僕を滅することは叶わない…。」
「それに何より物量がまだ足りない。」
「これでもか?」
カナタは、大きく背伸びをしながら笑顔になり、愉快な雰囲気でトオルを見下していたが
トンネルの奥からもう一つの声が響き渡り 次の瞬間その顔が驚愕に変わる。
そこにはまず一人背の低い中年の刑事、田中総三郎が、タバコを更かしながら、少年二人に歩み寄り、手に握っていた拳銃の銃口をカナタに向けた。
そして眉一つ動かさず、弾切れのままの銃口をカナタに向けたトオルに対して、タナカは、声をかけた。
「トオルくん、随分待たせてしまったね。
下がって、 協力は求めてある。」
「タナカさん……。」
タナカは、自らを見つめるトオルを横目に、カナタに対して銃口を向けたまま、怒号を浴びせた。
「カゴメカナタ 国家転覆及び殺人の罪で、ここで今貴様を処分する。」
するとタナカの背後から、計40人ほどのタクティカルな格好をした男たちが、駆け足気味に隊列を組み、可米彼方に、大口径のアサルトライフルを向け、トリガーに指をかけた。
「ふざけた冗談はやめてください、僕がなにをしたって言うんですか? 証拠はあるんですか?」
今までずっと、ジョーク用品の仮面を貼り付けたような不敵な笑みを崩さなかった、カナタの顔が、初めて狼狽え、まるで怯えたかのような、絶叫を発した。
「証拠なんて存在しない、持ってるやつ全員、いやこの国、果てはもっと大きな概念的な括りごと、お前に消されたからな…ただ」
「トオル!!」
「え?」
トオルが言葉を言いかけた時だった、人と言うよりは、まるで雪の結晶石のような白く、美しい少女が、男たちをかき分けて、トオルに抱きついた。
「なぜ君が……まさか!!」
カナタはなにかに気づくと、もうとっくに夜の闇に消えたロケットを見上げた。
「まぁ…そういうことだ…。 お前はあれにこいつを積んだつもりだったんだろうが…。」
「あれは…遺された少年騎士の一人。 1度目の『日本沈没』の際に流れた複製だ。」
「証拠はない…ただここにいる全員がお前と言う存在を知っている…それで十分だろ。」
「そんな……。」
狼狽えながら問いかけるカナタに、対してトオルは少女の頭を撫でながら、ため息混じりに、応える。
「何が刑事の教示だ、警察官としての意思だ!!証拠もなしに、ふざけた証言で僕を犯人に仕立て上げて…こんな中学生を撃ち殺そうって言うのか!! それが警察官の大義か!!」
「人の意志だ!!」
カナタの怒りに対してタナカは、より強い怒りと、そして意思を露わにした。 その問答を見ていたトオルは、見かねた様子でカナタに言葉を投げた。
「我々……人類は…お前を不要と……
いや…脅威とみなしたんだ。」
「そんな無茶苦茶な…!!」
「撃てぇ!!」
怒りを露わにしたあなたの姿に、およそ1年通して、今まで見られなかった、決定的な『隙』を見出したタナカは部隊に攻撃命令を出した。 トオルはそれを聞き少女の耳を塞いだ
発砲音の連続は、その場にいるもの全ての聴覚を麻痺させる轟音で、次第にそれは千の数の線香花火のような音に姿をかえた。
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