第3(0)章
エピソード0 ∞表 その一
12月24日 23時00分
白い巨体で荘厳たる威圧感を放つ、人類の科学の結晶、 『スペースシャトル』が、飛び立つため、凄まじい熱エネルギーをエンジン部分から解き放ち続ける。
咆哮とも取れる鳴り響くエンジン音と熱は周囲のコンクリートは愚か、それを取り囲む草原にすら、余すことなく伝わった。
発射場、その出入り口は青々と茂る草原の隅には、の巨大トンネルをつうじてしかなかった。おそらくこれは最高企業秘密を守るためのもので、その証拠にトンネルの内部には
カードキーチェッカーを始めとした関係者のみしか通過することを許さない設備が数多くあった。
しかし、そのトンネル出口には本来、そこの作業員、並びに関係者とは、到底思えない少年の人影が、ただ今にも飛び立たんとするスペースシャトルを見上げていた。
少年の容姿は、驚くほどに麗しく、美しい顔立ちで、真紅に輝く目は、ただまっすぐにスペースシャトルの方を凝視しており、しっかりと透き通るような白い肌は鮮やかに光を反射する桜色の髪が足元の草原とともに風に撫でられていた。
「せっかちだねぇ……カナタ、別れの挨拶ぐらいしてくれてもいいじゃん。」
スペースシャトルを見上げる少年の背後、トンネルの闇から、また今度は違う、長身の黒髪の少年が声をかける。この二人は全く同じ制服を身に着けていた。
カナタと呼ばれた少年は不敵に笑いながら、黙って振り返る。
それを見た黒髪の少年は目を閉じ、まぶたの下にできた、特徴的な濃いクマを擦り、軽いノリの言葉を続ける。
「なにぃ あのロケット…お友達に買ってもらったの? もう帰るの…淋しいね…。」
「人を宇宙人みたいに言うな……まぁお見送りだよ。 綺麗な眺めだ。 そうだろうトオル」
続けられた言葉にカナタは食い気味に返す。振り返っていた首は再び宙の鉄塊を見あげて、言葉を続ける。
「何より、本当にここで良かった。 君と彼女が出逢った、この場所に意味がある。ここは、僕が手を伸ばした、君の苦しみが終わった場所だから。」
「なんだよ~帰らないのかよ…じゃあめんどくせぇけど俺が送るしかないか」
トオルと呼ばれた、黒髪の少年はため息混じりに、呟くと懐から、やたら重心が太くそれでいて長い拳銃を取り出して、カナタにそれを突きつけて、不自然なクシャッとした笑顔をカナタに向けた。
「こいつはお前を殺るための『特注品』でよ…ほぼ確実に気持ちよく逝けるぜ!」
「酷いよ〜冗談にしてもあんまり面白くないし…ビックりするだけだよそんな安物の玩具なんて…」
カナタの失笑にトオルは少し怒気を混ぜたひくい声で唸る。
「ざけんなよ…こっちはこの1年散々てめぇの糞の肥溜め以下の筋書きのせえでよ、クソ詰まんねぇ冗談みたいな日々に悩まされてきたんだ……おれのが冗談かどうか今、味あわせてやるよ…」
トオルは、セーフティーを外して引き金に指をかけると言葉を続けた。
「やめな……君に僕は殺せない。」
カイトは、緊張としている、状況の中でも笑みを変えず、振り返りもしなかった。
「うるせえよ…あぁそういえば……てめぇに合うまで、俺は人は殺したこと無かったけどよ……。 まぁ、 悪くねぇ刺し心地だったよ。」
タァン という銃声と同時に、黒い鳥影と白いスペースシャトルは宙を舞い始めた。
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