第18話   轆轤祭典

『ララ ルロー アヴァルロー ロー

 ララ ルロー アヴァルロー ロー』


シャラン シャラン ズロロ


客室の煮立てつけられた懐中時計は11時30分を指していた。


 四季原ノゾミが床を燃やし、そこに出現したものに触れて数分後、窓の外から奇妙な音、または音楽のような音がなりだした。 


「すごく綺麗だけど変な歌… 民謡かな」


四季原ノゾミはそう言って、自身のいる客室の窓を開けて、外を確認した。音楽は無視することができぬほどの轟音で響き、コーラスの間に挟まる打撃音は迫力は黒雲の中で打ちひしがれる稲妻のようであり、太鼓の音を模倣した、幾万の知らない種の動物から発せられる遠吠えのようだった。

 

 ノゾミがベランダに出てきてあたりを確認すると、その音楽はどうやらちょうど自分たちがこの村へやってきた時に乗ったあのロープウェイのようなものがある山々から聞こえるものだった。


ふと怪訝な顔でベランダの右にある分厚い仕切りの壁を見る、隣の部屋つまりは野々原カオリがいるはずの部屋の間には除き穴一つない白い分厚い壁で覆われていた。


「カオリちゃん……あの望遠鏡で山を除いてから様子がおかしくなった。」


四季原ノゾミはそう呟くと、再び何かを決心したかのような顔で部屋へ戻っていき、窓を締めた、窓は網戸と鍵をしっかり締めて、カーテンも閉めることで、地鳴りがするほどのあの歌声は、かなり潜ませることができた。




四季原ノゾミはベットの上で仰向けになり

片手を上に伸ばして手に掴み取った『金の鍵』を見て思考を巡らせていた。


「う~ん、わからんなんの鍵だろう?何処の鍵だろう?」


「どうして床なんかにこんなの隠してあんの〜」


「う~ん、判らん」


ノゾミはその間、微動だにせずに思考していたが行き詰まったのか、ベットの上で身体を回転させ、ボヤき始めた。しばらしてもう諦めた所で力がどっと抜け、あくびとともに長旅の疲れから来る眠気が襲ってくる。


しかしノゾミは、そこでふと、カイトの言葉を思い出し、ベッドから飛び起きた。 


 「図書館?そういえば図書館に行けって……。」


「そうだ……私この鍵どころか…あの骸骨の事も、宝石の事も、この村の事もなにも知らない…! まずは調べないと、半田さんに言って説明会が始まる前に…。」

 

ノゾミは独り言を言いながら、そそくさと外室の準備を済まそうと起き上がるが、その時窓側にいる『何者』かの姿に気がついた。


 そいつは黒いコートに見を包み顔が見えなくなるまで深くフードを被っており、やけに高身長であったが、特徴的な体つきからおそらくは女性であることがノゾミには理解できた。


「だ…だれッ…… ガッ…」


 ノゾミが大声を出すより早くその女はノゾミの首を両手覆い強く締めた。 それは、とても人間と思えぬ程の怪力で、ノゾミは振り払うこともできず、首を締められるどころか

骨まで軋む感覚に襲われた。



「ファ~もうだめ〜」


ノゾミはそのまま抵抗できぬまま、首を閉められ、更にはそのままベッドの上抑え込まれ、倒れ込んだ。女はそれでも手を放すことはなく、ノゾミの首を締め付ける。 ノゾミの痙攣にも似た抵抗て、身体を暴れさせると、それを押さえつけながら、震える女のフードから、不可思議な量の『タンポポの綿毛のような』がフラフラと落下して、ノゾミの顔に降り掛かった。


(ガァ……あなたは……)


 全く不自然に、そして不意に迫りくる苦しみの眠気が四季原ノゾミ意識をかりとる。

ノゾミは意識を失う寸前、その体制から、フードの中身の顔を見ることができたが、その正体に驚愕した。


 ちょうどその時、扉の外でノックをならす半田にも気づかぬほど、素早く、そして深刻な意識不明へとノゾミは陥ったが、不思議なことに旗から見ると、それはただ睡眠状態にしか見えなかった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る