第17話 月光と誓の剣 エルリエス その2
「坊ちゃま…、そろそろ時間です。」
半田は薄暗い部屋の中を進みベッドを揺すると、目を擦りながら、カイトが起き上がった。
「お疲れのようですね。私だけでも構いませんが?」
「いや…寧ろ行くのは俺だけだ…。半田、お前は二人の動向を常に把握しておいてくれ。」
「かしこまりました。」
カイトは半田が手に持っていた。プラスチック製のバケツと手袋、そして何かしらの注射器を受け取った。 カイトはそれを一旦枕元に置くと、予め綺麗に畳んであった長武の美しい純白の着物に着替えをしながら、半田に尋ねた。
「
「恐らくもう少しで…。」
カイトの質問に半田が答えると、こんどは半田の方からカイトに問いかけた。
「木根リオンの事も言うつもりですか?」
半田の問に暫く考えた後に、少年は応えた。
「いや、木根リオンに起きてるイレギュラーは、伏せておく事にする。 あの人が来るまで……。」
「篠原トオル様ですか……私には坊っちゃんがどうしてあの人にそこまで信頼を預けているのか判りかねます。」
カイトは着替えの最中、突然思い出したかのように、半田に尋ねた。
「そうだ!! あの鍵は、ちゃんと兄者にはバレずに四季原に渡るように手配したんだろうな?」
「えぇ……仰せのとおりに」
半田は、なにか都合が悪そうに応えるが、カイトは意に返さず言葉を続けた。
「そうか……あの女なら、おそらく鍵の使い方を意地でも知ろうとするはずだ。 あの3人の中では一番マトモで好奇心旺盛でもありそうだからな。鍵を受け取っているなら今頃使い方に頭を悩ませているはずだ。」
その言葉に対し気まずい雰囲気で半田が口を開いた。
「あの……それが……寝てました…彼女」
「はぁ?!」
半田の言葉を遮ってカイトは驚愕の声を叫んだ。
着替えを終え部屋用の鍵束を持つと再びカイトはベットに備え付けられていた引き出しから3つの無線を取り出した。 それに対して面食らった表情で半田は尋ねる
「坊ちゃま、それは?」
その問いにカイトは視線をその無線機から移さずに応える。
「俺たちが先程こっちに向かっている間、ヒカリには予めあの三人に用意された客室に盗聴器を仕掛けさせた。 なにかあっては困るからな。」
「ちょっ ちょッと、 坊ちゃま……いくら有事といえど女性の部屋を勝手に盗聴なんて……」
「お前もさっき無断で部屋はいってたんだろうが……それにこれは…悲鳴などの大きな音が鳴ったときだけ……」
「キャーーーッッ!!!!」
2人が言い合いを遮るように、無線の中の一つから悲鳴が響き渡った。
「ほら、このようにな…… これは野々原カオリの客室か……俺は彼女の、部屋に急ぐぞ!! 半田、お前は兄者を見張っててくれ!!」
「は、ハイ!!」
カイトは客室がある区画のエレベーターに乗った。半田は途中の5階で降りたが、カイトは最上階である、7階で降りると。そのまま廊下を進み、カオリのいる部屋のドアを強引に蹴破った。
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