第16話 月光と誓いの剣 エルリエス その1
「半田さーん、で? どうですか? 坊っちゃんの言われた通りやりましたけど…」
黒いメイド服に身を包んだ小柄の女性 飯塚ヒカリは、調理場から駆け足で出てきて周りに人の気配がないか気をつけながら、飯田に耳打ちした。
「正直に言おう…それはわからない。 坊っちゃん…カイト…いやカイル様は彼女たちはおろか私達の事も信用していない。 もはや信じているのはただ一人…」
「篠原トオル……ですか……。 本当に大丈夫でしょうか……。 ほら篠原トオルってあの『痴漢魔』の……。 いえ…あれは冤罪でしたけれど…火のないところに煙は立たないと言いますし……。」
ヒカリは明らかな不安を露わにした。
「大丈夫ですよ。 それにあの三人については、既に坊っちゃんはタナカさんの協力の下で調べは付いてます。 きっと、四季原さんは我々に尽力していただけるふさわしい人間のはずだ。」
半田はため息混じりに応える。 右手の指にハマり、クルクルと遊ばれる車の鍵がチャチャラと音を立てているの。 その半田の出で立ちは顔とは違い妙に若々しいものであった。
「だといいんですけどねぇ。 いくらそうだといえまだ高校生ですし…… あっ カナタ様からのお呼び出しがあったので、私はこれで……」
「そうですか……ヒカリ様、では私もそろそろ……。」
ヒカリは怪訝な顔をしながらも
四季原ノゾミ様はきっとあの暗号を解いているはず。そして予測が正しければ鍵の使い方をよくわからず、今現在苦悶しているはずだ。
半田は長いエレベーターの旅路の中で四季原ノゾミの事をそう思案していた。 何事も
自らが残したメッセージが本来の意味で伝わることは殆ど無い。 暗号ならなおさらのことだ。
なれば、自らが、思い悩ませた責任もあるというもの、その責任を果たすために今、新たなメッセージ、つまりはこちらが恐れる何者かに感知されない程度ではあるが、せめてヒントを与えられればと思い、半田はノゾミいる。客室に向かい扉をノックした。 所が全く反応がない。 半田はもう一度扉をノックしたが全くの無反応だった。
予期せぬトラブルに焦った半田は緊急用のバールを用いてドアを開けようとするが、その時あることに気づく
ドアには鍵すらかかっていないのだ。
得も知れぬ不気味な状況に半田は固唾を飲むと恐る恐るその、扉を開ける。 そして扉の先に広がる状況と何より四季原ノゾミの姿を見て、呆然と一言呟いた。
「坊っちゃん、ほんとに良かったのですか? この方で……。」
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