第18話 結束 その3

4月10日13時00分


四季原ノゾミら、3人が、リュウナキ町へ消え、世間では行方不明扱いになる。3ヶ月前。



「捜査補助監さん…。僕のしたことは、ちゃんとみんなに知れ渡りますか?」



少し恰幅の良い体型の大柄な男性は、目を焼き尽くすほど白一色の小さな『取り調べ室』で机を前に体型に合わない椅子に腰掛けていた。 


そのまま虚ろな目で天井を見つめる。 沈黙の中、壁上部に設置された時計の音を聞きながら、互いにだが目を合わさずに男はそのまま部屋の隅で何かしらの調書を纏めている男に尋ねたが帰ってきたのは、ただ紙をめくる音とそれに印を押す音だけであった。


部屋には現在二人しかいない、だが


「それは、難しいな…証拠を始めとして…そもそも不可解なことが多すぎる…それにこの事件を担当する私の権限により、事件自体もまだ明かされていない。」



第三人目の男、『特別暗解事件捜査局 局長 田中 総三郎 (タナカ ソウサブロウ)』はその初老で小柄の出で立ちをまるでアピールするように背を曲げて歩き、ノックもなしに部屋に入り、無理やり言うなれば主客転倒の黙秘からなる沈黙の時間を突き破り、部屋へ通じる扉を開けながら男の質問に答えた。


「あ〜それは残念だな〜、なぜそんな事をするんだい?」


天井見たままで更に手錠をかけられた男は問いかけた。


「質問ばっかり…取り調べをするのは僕の方なんだかな山岡教授。」


容疑者山岡の放つ生温い吐き気のような不気味さに物怖じせず、余裕綽々といった感じにタナカは山岡の向かいに腰掛けた。


「まぁいい、僕はね、この事件の真犯人を近年のあらゆる未解決事件と関連付けて操作を進めている。」


「つまり、ここ最近の凶悪事件は全部私が犯したことだと…そんな事を本気で証明されたら…何回死刑を言い渡されるかな?」


山岡はタナカの奇想天外な言葉を鼻で笑いながら皮肉で返す。 しかしそれに対してタナカは一瞬だけ真剣な顔つきになるが、直ぐに締まりの無い顔になり、しかし異様な眼力で山岡に自身の顔を近づけて囁く。


「いや…仮に僕がそれを完璧に証明できたとすると、きっと君に言い渡される刑は数多くの凶行よる死刑ではなく、『虚偽自白』による禁錮刑となるでしょう。 まぁ、ちゃんとした弁護士をつければ脅しによっての虚偽自白は無罪になるんだけども」


山岡はじっとタナカの言葉が終わるのを待ってからタナカを睨みつける。 だがタナカは意に返さず、持ってきた黒いスーツケースから、大量の書類が入ったファイルを取り出すと、山岡に見えるようにファイルの中身の書類をならべた。


 書類は全部で13枚あったが、そのどれもが、ただ、大勢の人の名前がしるされているだけの書類だった。


 山岡は最初こそ、興味がなさそうに書類を眺めるだけだったが、次第になにかに気づいたのか、鼻息を荒げ、目に涙を浮かべながらその書類を1枚、1枚手に取り、震える声でタナカに尋ねた。


「刑事さん…これって…この名前は…」


「署名…。君の教え子だ。 『先生は悪い人じゃないどうかお願いします。』 …そうたのまれた。」





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