第17話 ∞ 裏その一

12月24日


持ち前の熱心さが功を奏したのか37歳にして海洋学博士を取った、二児の母親、四季原 ヨウコ(シキハラ ヨウコ)は、急遽決行された、最新鋭の遠隔潜水機による日本海の調査を目的としたプロジェクトのリーダーとして早朝から潜水機のモニターを中継するタブレットを凝視していた。


このプロジェクトチームが急遽発足した背景には最近突如として、日本列島の地中から発見された『アポカリプスメタル』と呼ばれる物質にあった。 アポカリプスメタルは岩手、青森、愛知、長崎、東京などから突如として相当量発掘され、このまま発掘すれば日本列島の隅から隅までかなりの量、地底に埋まっているのだと予想された。 


 このアポカリプスメタルは名称さえまだ決まっていない未知の元素で公正され、特にその物質は人体を含む有機物の細胞異常、細胞劣化と破損の修復、抑制に繋がるらしく『薬師』の意味を最もアポカリプスの仮名が与えられた。


 問題はその重さにある、その比重はなんと

約220.3g/cm3 それはかつて最も高い重量を持つ鉱石ウラン鉱石の十倍以上である。そんな物が地中にに大量に埋まっていながら、日本列島が海の上を浮かび、その存在を維持できているのは、理論上不可能と言ってもいい、 それは紛れもなく地質学を超えた全ての科学の確実性を揺るがす。ものだった。

 

 当然、科学の権威の失墜を覆すには、その謎を突き止めなければならず、かつ極秘裏にプロジェクトを発足する必要があったため、メンバー自体は全て日本人で構成され、しかしプロジェクトの援助は国際的に行われた。


 四季原ヨウコは元来、心の根の底まで科学者だったわけではない。 実際、名門の大学を首席で卒業できたことから、極めて熱心かつ優秀な生徒であったことは間違えないが、学校を出たあとは、すぐ同級生との結婚生活を楽しみ、間もなく女の子をその身体に宿したため、教授から用意された、研究家への進路には決して積極的とは、言えなかった。


 しかし、それから14年後、彼女突然熱心な研究科へとなり、様々な発見や論文などの功績を出していき、その3年後…つまり現在において業界では著名な海洋博士となる。


 とはいえ、彼女は突然、研究科としての探究心に駆られたというわけではなく、理由は金だった。

 

 というのも彼女の息子は10歳の時に交通事故に合っており、脳に重症を負ったことで植物人間に成っている。 


 治療するには難しいほどの容態で、意識を戻すにも、脳の手術を数度行わなければならなかった。 入院の費用と更にその施術を全て行うには、相当な額の金銭が必要となり、稀有な事例ではあるが、愛情が彼女を守銭奴に変えた。




 




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る