プロローグ 天炎霊化のアイ その4

※途中ややセンシティブな表現が登場します予めご注意ください




そのトンネルは、巨大さからくる威圧感が特徴的でトンネルの中を覗くと、誰もが吸い込まれそうな感覚に陥り、暗黒の先に宇宙、あるいは、ブラックホールの類、プラネタリウムに行ったことがあるだろうか、客に宇宙の壮大さと、広大さ、その規格を表すためにcgを使って眼前に星を迫らせられたときのような感覚に、非常に酷使していた。


「そこの…トンネルの右脇坂があるじゃないですか、そこを登って直進してください。」


固まっていた、一同の表情がヒビキの一言で我に返る。


「あ、ああ じゃあ」


ジュウジはギアを一速に下げゆっくりと坂を登る、ヒビキ以外は皆感じていたが、特にジュウジはその坂を上がって幾度に得も知れぬ、恐怖が胸を締め付けられ、心臓の鼓動が早くなる、ただでさえ距離が長い坂を登る時間はまるでそれだけで一日が過ぎるような感覚に陥っていた。


「グーグー」


だがその時、後部座席からイビキが聞こえてくる。様子からして木原カリンが話すだけ話したあと窓にもたれる眠ったらしい。

 ジュウジは勝手に緊張しているだけだったが、その様子を知ったときは心底、ムカつき

それでいて少し救われたような気がした。


長い坂を上がり切ると、トンネルの上へつながり、不思議なことにそれは巨大な橋になっていた。


「大灰海」


とっ看板には書かれていた。


ジュウジはともかく橋を渡ろうとエンジンをかける、いつもより安全を度外視したかのようにスピードを上げた。 一言で言えば嫌な予感、一刻も早くこの場を離れたかったのだ。しかしその嫌な感覚は次第に強くなっていき。 仕舞には鳥肌を立てて、奥歯が勝手に鳴り出すに至った。


「ここをすぎれば、いよいよリュウナキにつきますよ。」


ヒビキは浮かれた口調で言うと、ミナミは、完全にカリンが眠っていることを確認し、ひくい声でヒビキを問い詰めた。


「貴方…一体何者なの? 私を知ってて、待っていたのだったら…貴方は…」


「トオルは気になるな…僕の削りからどうなったのか…」


ミナミの問いかけに対して、ヒビキは喜々として理由のわからないことを呟く。


「トオル 元気してる? ミナミさん。 いつも帰り道でトオルから、君の話を聞くたび、ずっと君を欲しいと思って……。」


「いつか来る…この日を待ちわびたよ」


「君は必ず 『仁籠子ジンカイシ』を妊むからね。そりゃ祭司は特にだけど『帰し病み』を望む僕の村の人はみんな君を待ってる。」


「ヒッ……何なのよ貴方は…」


怯えたミナミは、鞄から蒼色に光る大型のナイフを取り出しヒビキに突き立てた。 それに対しヒビキはミナミに微笑み呟いた。


「そうだね…ずっと君は僕に瞬間を夢見てきたもんね。」



「ジュウジさん!! 車を止めて」


ミナミの叫びに対して、全く車のスピードを緩めず寧ろ加速していった。 ジュウジは身体を震えさせて。振り向く。


「無理だよ……ミナミさん…ブレーキ…踏んでけど…ずっと… それに僕の…身体…全然…動か…ゴフッ!」


身体を震わせたジュウジが突然勢いよく吐血した。 その血はなんと銀色に変色しており知の中をナメクジのような生物が泳いでいた。


「なに……コレ?…ハッ」


ミナミは加速して走る車の進路上に大勢の人だかりができてるのを確認した。 人々は皆筋肉質で黒い仮面と、黒い袖なしの装束が特徴的で、腕の内部に見たこともないような『コイン』がはめられている。 その人々は新路上を横並びに並び、列を作りまるで車を通さない壁にでもなるようだった。



「ようこそ…リュウナキ村へ」


ヒビキが呟くと、車は勢いよく人だかりに突撃し、車内外問わず強い衝撃を生んだ。


車の中はベコベコに凹んでおり、その中で唯一気を失うどころか無傷なヒビキが、壊れたドアを怪力で外し出ると、傷の浅い、壁となった村人たちに命令した。


「いつも通り、女は使えるから、好きにしてもいいけどどっちも殺さないでね…。

 男の方は別に大丈夫、川にでも捨てといて。」


村人達は車に乗り込みまず意識が朦朧としているジュウジを引きずり出し、灯油を注ぎ、体に火を付ける


「グギャアアアアアァァァアァァァアァァァアァァァ」


ジュウジは人とは思えぬ絶叫を放ちながら、本来動くことができないはずの体で橋の下に飛び降りた。


一方であとの二人は完全に破壊された車の進路方向に引きずられていった。


「貴方……可米カナタなの?……」


ミナミは村人達に引きずられながらも、掠れた声でこちらの様子を覗き込んで車ヒビキに質問した。


「ずっと…そう名乗ってきた……でもね…違うんだ…僕は本当の可米カナタじゃない……。」


するとミナミを引きずっていた村人はミナミの意識があることに気がついたのか、突然、運搬を中止して、一斉に体中を囲んで蹴りづづける暴行に及んだ。


「アガッ……グギャ……ヒ」


ミナミは短く悲鳴を上げながらその意識を手放した。






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