第14話 擦り切れる涙
『お願いです。ノゾミ様あなただけが頼りです。』
『カイト様を助けてください』
『私がこの部屋を選びました。』
『カーペットをそろそろ変えたばかりだ。』
『化粧水を使い切らないと』
一見まばらに見える文体だが、繋げまで読むと、真意を察するに難しくない、謎解きですらないメッセージだった。 ノゾミは明らかに首を突っ込むと、碌な事に、ならない案件なので暫く戸惑ったが次第に鍵を握りしめ、
メッセージに従う事を決心した。 それは無意識にカイトと自らの無力で眠ったままの自身の弟の事を重ねていたからだろう。
意を決してカーペットをめくると底にはなにかの焼け跡とそれに覆いかぶさるように、チョークの粉のようなものが被さっていた。
明らかに何かがおかしいが、見た感じ、可笑しいことだけしか解らないので、ノゾミは途方にくれていた。 そしてもう一度メッセージに、ヒントがないかよく思いだしたが、一つだけ、きちんとした指示のような事が書かれているのに、触れていなかった、メッセージがあるのに、気がついた。 そう、化粧水だ。
ノゾミは思い出すなり、化粧台に駆け込み、台の上にそれらしい、物がないか探った。
そして明らかに内容量の残量がわかるようにラベルが剥がされた。化粧品を発見した。残量はちゃんと残り僅かだ、メッセージをそのまま受け取ると、これを何かしらに全て使うんだろうが、どうもその方法が解らない。
しばらく悩んだ末、一か八かこの内容物を先程の焼け跡に全てかける事を決断した。
念のためか、ただの癖がノゾミは化粧水を振りながらカーペットを足でめくり勢いよくぶちまけた。 内容物をの液体はノゾミが想像するより、遥かに、というよりこの世に存在しないほど、粘度なく、軽かった為に勢いよく飛び散り、ノゾミの、靴下にもベッチャリとかかった。
「うわぁ ちょっとも~」
そんな事を言いながら靴下の方を見ていると
突然床が勢いよく燃えだした。 その炎は驚くことに不快緑色で床を円形にきれいに燃やした。
「うわぁあああああああ」
ノゾミは飛び上がり必死になって濡れた靴下を遠くに投げ飛ばす、しかしよく考えてみたら靴下は別に燃えておらず、燃えていたのは地面だけ、そしてその炎はカーペットや周りのものにも燃え移らなかった。詳しい科学のメカニズムは分からないが恐らく床に付着した粉末とあの液体が接触することで初めて発火する現象が起こったのだろうと、ノゾミは自分の推測を、結論付けた。
炎は円形に地面を燃やしえぐると突然煙を上げて、消滅し、地面には僅かな焦げと人一人が入れる分の円形の穴だけが残った。これやさっきの炎の色を見ていると、それは科学というよりは、魔術や呪術の、類にしか見えなかった
「ここ、七階だよね〜」
円形に広がった穴を嫌な予感を押し殺し、恐る恐る覗いたノゾミだったが、次の瞬間、案の定おぞましいものを目撃し後悔することになる。
まず目に入ったものは『白骨化した左手』それも形は人間の手ではあったものの、バスケットボールを余裕で握り込めるほどのサイズだった。 存在しうるはずもない巨人と言っていい、そしてその巨人が何やら南京錠で施錠されている、箱を持っていることがわかると、ノゾミは、恐る恐る、嗚咽しながら、手を開かせ金の鍵を用いて南京錠を解錠し、中身を見た。
箱の中身は、目を奪うほど美しく輝く指輪と一本のビデオテープ、そして手紙が書いてあった。
手紙は『祭りの事を知りたいんでしょ?カイトの言葉を思いだして』っと書かれていた。
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