第13話  金歯の鍵

落ち着かない…落ち着かない…


客室に案内された。ノゾミはとりあえず荷物の整理だけして、から制服のまんまでベッドに、ダイブしてみた、額に手を起き腕に巻かれた水色の細い帯が特徴的な腕時計を眺める。


時計の針は午前11時18分を指していた。

二時半までかなりの時間がある、とりあえずもうちょっと横になってから、学校の制服から持ってきたジャージに変えようと思い、ベッドでこのまま落ち着こうと思うものの、やっぱり触れるどころか、見たこともなかったかほどの高級品に囲まれているため、落ち着かない…。


 例えば、自分がドジを踏んでここにあるものを壊したりしたら、どうしよう。 そんな不安ばかりが脳裏に焼き付く。まったく持って、人に最も深手を負わせる牙は悪意ではなく、厄介な善意だと言うことを、ノゾミは、実感した。


ノゾミは枕を抱きしめ、うつ伏せになり、とりあえず、落ち着くため、あえてよそ事に頭を向けることに専念した。


まず最初に思い浮かべたのは、家で世話をしていた植物だった。 サボテンはいいものの、問題はパンジー、母親に世話は頼んだものの、この夏場に万が一世話を忘れると言うことがないのか、実は家を出る前からの不安であった。


次に思い浮かべたのは、キャリーケースの中身、忘れ物がなかったかだ、万が一不備があった場合、暫く思い介しても、特に不備はなかったかのように思えたが、そう言えば、少し前から、新しいブラジャーが、欲しかった事を思い出した。 年頃の成長期なのか、前から使っていたものからどんどん痛みを伴うほどに窮屈になって使い物にならなくなる。

 せっかくだからこれを気に仕事をさっさと終わらせて、3人でここの服屋さんを巡ろうとか、考えた。


そして、最後に思い浮かべたのは、弟のことだった。実はこの弟の存在は、今の献身的かつ、やや心配性の ノゾミ自身の人格の根本にあるほどの大きな存在なのだが、あの少年、つまりは可米海十(カゴメ カイト)に出会ってから、普段は記憶のその底にしまってあるはずの、弟の記憶を頻繁に思い出すのだ。 


 というのもノゾミの弟はちょうどカイトと同じくらいの年、11歳の頃、事故と病気が重なり、意識不明、その後治療のベドも経たぬまま、2年たった今でも、植物人間のままだったのだ。 抗う余地のない、理不尽、それまでずっとそれから隠れてきたが、弟と僅かに似た、何かしらを持つ、少年によって、自らのトラウマを目覚めさせてしまったのだ。


そうしていると、ドアのノックが鳴った。

寝っ転がった為に着崩れした制服を直しながら、「どうぞ」っと返事を返すと、トレイに5切れの海老サンドを載せた半田が入ってきた。


「こちら、昼食を、おもちしました、足りないようでしたら、備え付けのインターホンでお申し付けください。」


「あっ どうも ありがとうございます。」


心ここにあらずと言った返事を返すノゾミに対してら半田は去り際、突然、語気を強めた。


「それはこの地域の名物サンドです…しっかり備えて業務説明会に備えてくださいよ。」


そう言うと勢いよくドアがしまった。

 ノゾミは一瞬だけ自分が無礼を働いたのかと焦ったが、『兎に角食え!』っと、遠回しに威圧された事を理解し、サンドウィッチをクチに運んだ。


確かにそのサンドウィッチは今まで食べたことのないほどの美味だったがしかし、三切れ目をクチに運び咀嚼した瞬間、ガリッっと言う音と共に突然葉に激痛が走った。


「痛ア」


といったノゾミの声と共に金属製の何かが床に溢れる音が鳴った。 ノゾミは気になり机のしたを除くと、金色に輝く小さな鍵が落ちていた。


「何…コレ…なんでこんなものが? サンドウィッチに?」


「!?」


鍵に疑問を持っていた望みだが、サンドウィッチをよく見てみると、それらを覆っていた包み紙の内側に1枚、1枚、文字が書いてあることに気がついた。


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