第9話  根源者

一同を乗せた高級車は人だかりにバレないように裏手に入り、そのまま専用の地下道を経由して車庫に到着した。ノゾミ達は少年に付いていく形で、豪邸の玄関に向かったが、途中、茂みの中から、突然何が素早く少年に飛びかかり、抱きついた。


「カイトーやっと帰ってきたのね~!!」


少年に抱きついた。存在の状態は和服を女の子のようであった。 見たところ年は少年と同じく10歳前後で、美しいブロンドの髪が、きれいにおかっぱに揃えられていた。


「ハルカ…その服…ミハルは近くにいるのか?…」


「うん、一緒に来たんだ。 君が今夜の祭りの為に帰って来るって。」


ハルカと呼ばれた子は、少年に抱きついたまま、問に答えた。


そのやり取りを三人は、一歩引いた場所から

見ていた。


「なんか…可愛い邪魔が入ったね。」


ノゾミが微笑みながら言うと、舌打ちをしながら、リオンは、吐き捨てた。


「なんだよ、あいつ…無愛想で無口なクソガキのくせして、彼女持ちかよ…。」


「さっきから、子供相手に大人気ないっすよ〜先輩〜、恋人いないからって、妬んでるんですか〜。」


よろめきながら、ようやく調子を取り戻しつつある、野々原カオリが鋭いツッコミを入れた。


「何ぃ? アンタだって彼氏以内じゃないー」


「私は、モデルって仕事やってる以上ファンがいますからねー、ただ単に運がない先輩とは違いますよ〜」


「ぐぬぬ〜 さっきゲロったくせに」


2人が言い合いをしていると、突然、こんどはその背後から、声をかけられた。


「ハルカは彼女じゃありませんよ。」


声をかけられた三人が振り向くとそこにはなんと、ハルカと、服装、顔つき、身長、体型など全ての、外見が完璧に同じ子供が現れた。


「ヒィ…イャアァァァ コ、コレ 『ドッペルゲンガー』ってやつ!?」


木根リオンは腰を抜かし、尻もちをつき、悲鳴を上げた。


「ドッペルゲンガーでは、ありませんよ、私達は二卵性双生児の双子、まぁ秒単位の世界では兄弟ってことになりますが。 あとお姉さんパンツ見えてる。」


「うん?兄弟?ってことは、君たちふたりとも…もしかして…お、男?」


ノゾミが自身なさせげに眼の前のハルカのそっくりさんに質問した。


「左用…彼女ではないと言ったのも、そう言うと理由です。」


「ミハルお兄ちゃん〜、その人たち誰〜どおして、僕たちを女の子と間違えたの?」


「ハルカ、このお姉さんたちは、よそ者のなの、よそ者の目は、眼球の代わりに、腐り果てたトマトが入って、いるからと『知』を見ることの出来ない、節穴なんだよ。」


ハルカとミハルは、お互いに、唄のようなものを唄いながらグルグルと3人の周りを回って追いかけっ子をして遊んでいた。


「このガキども~」


リオンが苛立っていると少年が口を開いた。


「おい…俺らは、これから兄貴に用事があるから…その格好をして、出歩いているってことは、今夜、成るつもりか?『御到使(ミトウシ)』に」


「うん、今年は私達だからね〜、じゃあ、また祭りの時に会おうね〜カイト〜」


「そうか…じゃあな…」


走り去っていく二人の背を見ながら、少年は、悲壮感、あふれる眼差しで呟いた。

 そこはかとなく、その行動に違和感を感じた。 ノゾミは、次第にこの村で今夜行われるであろう、『塩隔祭』に、興味をそそられることになる。


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