第8話 光もたらす者

古臭い、洋画風の、やり取りをひとしきり終えたあと、三人は、停車してあった巨大な黒塗りの高級車に乗るように促されて、後部座席に腰をおろした。 座席は車の物とは思えぬ程に心地よい乗り心地で、内装には高級感あふれるシックなデザインに飲み物を収納できる。簡易冷蔵庫初めとして、通常の車両には、到底ない、様々な機能が備わっていた。


また、カオリは、状況を説明された半田によって、ポリ袋を手渡され、そこに、しこたまゲロを吐いていた。


ノゾミは、高級ブランド全般に目が無い、リオンにその場で聞いた所によると。この車はベネティクス アルレンツェと呼ばれる、有名な高級車であり、過去9台しか、製造されなかった。推定2兆円はする車らしい。


「あの~、わざわざ、送っていただかなくても…いや嬉しいんですけど…自分たちで歩いて行きますよ。 距離も近いですし。」


そんな高級車に自分たちが万が一粗相を働く事を恐れた。ノゾミは、半田に進言するが

返答は斜め上の予想を超えるものだった。


「あぁ~それはですね…不可能です。 貴方達が彼方の元にたどり着くのは。」


「どうしてですか?」


ノゾミは、率直に疑問を投げかける。


「この村中の全ての人は彼を心酔、崇拝しております。 故に彼の邸宅の前は、常に祈りを捧げる者や助言を仰ぐものでごった返しております。それに…。」


「ゲーェー、オロロロロロ」


言葉を遮り、カオリが猛烈にゲロを吐き出した。 それを見たリオンは、(こいつが載ってる雑誌を買い漁って、こいつでイタしてる こいつのファンが、この状況見たら無事で済むのかな)っといった疑問を頭の中で巡らせながら、彼女の背中を擦り続けた。


「ともかく…そんな状況の、人がいるのに、歩かせるなんて、できません。」


っと半田が言ったが、その少しあと後ろでまだ吐き続けてる、カオリを一瞬だけ見て、「坊ちゃま耳を」っと低いトーンで、何やら他3人に聞こえないように、助手席に乗っている少年と小声で話し始めた。

 

どんな会話をしているかは3人には分からなかったが、それまでニコニコと笑っていた半田の目がカオリを見る時だけ、冷淡に変わり、また声のトーンからして、相当に深刻で

真剣な話だということだけ、ノゾミはうかがい知ることができた。


「見えて来ました…間もなく到着ですよ。」


程なくして半田の言葉で窓の外を見渡すと、そこには押しつぶされそうな、ほど巨大な洋館がそびえ立っている様を見る事ができた。


洋館は中世の城のように高く秀逸で芸術的なデザインをしており。全体的に白を貴重とした色合いが更に高級感を醸し出していた。


半田の触れ込み通りではあるが、予想以上に正面の門の前には人だかりができており、何より異様なのはその半数異常が、まるで降臨した天使を見るかの如く、恍惚とした顔で涙を流しながら、その豪邸に祈りを捧げていた。 


特にノゾミはそれが心底、不気味に見え、嫌悪感を覚えた。それが何故かというと彼らの顔と様が、先程ゴンドラの中で自分の腕を掴み語りかけた、カオリの顔を思い出させるからにほかならなかったからだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る