第5話 海の底
三人は少年の元へ急ぐと、少年は先程まで二人がかりでも、動かせなかったクランクをあっさりと回していた。クランクを回すたび
すぐ、近くにある壁面から、何かしらの機械音がなり、壁に備え付けられた。大量のパイプから煙が吹き出してきた。
「ねぇ…ちょっと僕?…私達この駅から出たいんだけど…。」
野々原カオリは、少年に話しかけたが、少年は、その問いかけを無視して、操作盤の方に向かっていく、操作盤のレバーを引くと、ゴンドラのロープが動き出した。
「この…生粋な…ガキぃ」
木根リオンが、渋い顔をしながら、悪態をつくと、
駅から見えるローブの伸びる方面の山から、1台のゴンドラが、向かってきた。
ゴンドラが、駅に停車し少年がゴンドラに乗り込むと、レバーに手をかけ、3人の方に振り返り、言葉をかけた。
「…駅の方面へ向かうんだろ…乗れ…。」
少年はこの瞬間だけ、3人に目を合わせたが、この時ノゾミは、先程感じた、既視感の正体を思い出す。 この少年の顔つきは、どこか、今回のバイトの依頼主の顔写真と似ていたのだ。それと同時に彼女は、少年の瞳の奥に何か得体の知れない恐怖と悲壮感を感じた。
ゴンドラ野中は見た目道理サビの匂いに包まれており、鼻を劈くその不快な不清潔感からか、とても椅子に腰を降ろそうとは、誰も思わなかった。
標高の高さから、やたらと冷たい、突風がゴンドラと一同に、迫り続けた。
「あぁ! 僕の髪に! 鬱陶しいですねぇ。コレ!」
「つか、寒くない?」
「そんなスカート短くしてるからですよ。先輩」
髪に纏わりついた葉っぱを野々原カオリが取りながら、吐き捨てる。
風につられた滑らかで色とりどりの植物の葉が視界を奪うほど大量にこちらにぶつかってくる。制服のブレザーや、髪に引っかかるのが非常に鬱陶しく、更に制服を改造しスカートをやたらと短くしている、木根リオンは特に脚をはじめに肌寒い感覚に襲われた。
「ねぇ…君はどこからきたの?あの…もしよかったら道…教えてほしいんだけど…」
のぞみは少年に声をかけるが少年はまるで聞こえていないかのように、シカトし、ずっとゴンドラの外を眺めていた。
「私達、龍哭村のカゴメカナタさんって、人に会いたいんだけど…。」
「仕事か?」
のぞみの、言葉に少年は、振り返り言葉を遮り、返した。 三人は心底、驚きのぞみは、溜め込んだ言葉を少年にぶつけた。
「もしかして…家族とか?…喧嘩でもした?」
のぞみの問いかけに、少年は俯いたままなにも答えない。
「えぇ? こいつ家出少年ってこと?!」
木根リオンは空気感をぶち壊す大声を出した。 それを聞き終えたあとのぞみはしゃがみ込み少年の目をしたから覗き込未ながら、言葉を続けた。
「私達…君の家族の人とと会いたいんだけど…もし君が連れて行ってくれたら…仲直りするお手伝い、してあげる…だからお願い君の家族の所まで連れて行って…。」
そこでカオリがのぞみの言葉を静止するかのように肩に手を置く
「迂闊だよ…。 のぞみちゃん、こういうのは早とちりで…無闇に行動するのは…万が一虐待などが原因だとするとこの子を家に帰すのは…。」
「そもそも…普段はここに住んでいるわけではない…帰省だ…。」
カオリの言葉を遮るように少年は再びゴンドラの外に目を移し語りだした。
「よそ者のアンタ達とは、別件だが、俺も仕事で帰ってきた。」
「今夜は5年ぶりの『塩隔祭』…だからな」
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