第4話  もう逃げられない 引き返せない

三人は悩んでいた。


それもそのはず、初めて降りた駅は無人駅でおまけに電波は圏外だったからだ。


 知らない無人駅の最も悩ましいことは改札がどこにあるのかが分からないものだ、こればかりは本当に駅によって様々であり、無賃乗車を意図せずとも行ってしまったり、下手をすれば、今の状況のように、そもそも、『駅から出られない、といった問題』が発生する。 


更に悩ましいことは、この駅には人っ子一人いない上にその駅が海上の橋の上にあるということだった。 


駅には大きな階段がありそこを登っていくと、合計で8ある扉の廊下へ繋がっているがいずれも開かず、先程から木根リオンは必死に全ての扉のドアノブを乱暴に回しながら、重くもない、貧弱な自分の体重を使って必死に開けようとしている。そして何よりこの駅の特徴的な部分は強靭なロープで遥かな山の方へ繋がっている、いくつもの巨大なゴンドラが設置されていることだった。


駅の様子からして、非常に奇妙でまた絶望的なことなのだが、恐らく操作方法も分からないこのゴンドラを用いて、駅を出ろ…ということなのだろうと一階に残っていた。同い年二人は予想だてて、ため息をついていた。


そもそもこの錆びついたゴンドラに乗れたとして、内部の様子からスペースは充分にあるものの、果たして満パンのキャリーケースを引いた3人を、支えられるのかも分からない。

 

「う~ん!!ん゙ 動かない…コレ」


ゴンドラの近くにあった、後下茶色に古ぼけたゴンドラの何かしらを動かすためのレバーとクランクをのぞみは全力で動かそうとしたが、錆びついているからか、あまりにも動かなかった。


何より、このゴンドラ、見た目からして 内部からも外部からも、操作可能のようだが、内部の操作盤も外部の操作盤も錆びついており、ランプの、ような部品も点灯していなかった。


「イヤーーーーッ!!」


二人が途方にくれて間もなく木根リオンの声で、悲惨感と驚愕感が滲み出るような、悲鳴が周囲に撒き散らされた。


二人はその悲鳴を聞いたと同時にキャリーケースをその場に起き、急いで木根リオンの元へ向かうため、階段を駆け上がった。


二人は何事かと思い木根リオンの、元へ辿り着くと、木根リオンは尻もちをついており、

そのすぐ正面に、見知らぬ10歳前後の背格好の少年が立っているのが、見えた。


どうやら電車に乗ってから今の、今まで人に出会わなかったため、何気ない人との出会いでも、それは心底、木根の心臓を刺激したのだろう。現に2人も、一瞬、少年の存在に、驚愕した。


少年は整った顔立ちをしており、スカイカラーの目が特徴的だった。 何より四季原のぞみはその少年の外見的特徴、そして纏う雰囲気について、何かしらの既視感を覚えたが、その正体が何なのかを、思い出すことは少なくともその場ではなかった。


少年は木根リオンの悲鳴に一瞬、驚いた素振りを見せるものの、すぐに尻もちをついた、リオンに無表情で手を差し伸べ、立たせると、礼を言わせる間もなく、また、三人のことなど、はじめから認識していなかったかのように目も合わさず歩き去ろうと階段の方へ向かっていった。 


三人は、呆気に取られていたが、我に変えるとともにすぐに少年の、後を追った。 もし、現地の人間ならば、駅の出方を聞かねばならないからだ。



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