第2話 探しものバイトその2

そもそも話でいえば、このバイトの依頼書類は最初からおかしなところが多々あったのだ。 まず第一に勤務先の場所に関してあまりにも大きな不可解があった。


メールや依頼書に記載されている。龍哭町、高根駅を3人は、予め交通の便やその地域の名物などを調べていたのだ。もし、メールに記載されているものよりも早く着く、交通ルートがあれば、そっちを使いたいし、それに折角いったこともないような、土地に赴くなら、ただバイトをしただけで、帰るなんて、あまりにも、エネルギー有り余る、女子高生三人組には我慢ならないことだからだ。


そしてもう一つ奇妙なことはその業務内容及び業務期間だった。

 なんでも依頼主は企業ではなく、富豪の個人で、内容は『自身の別荘屋敷の中で紛失したネックレスを探して欲しい、といったものだった。』

 そんな一日もかからずすぐにでも終わらせられそうな業務内容にも関わらず。 拘束時間は何はなんと一週間という記載がされていた。

 どう見たって疑問を持つ不自然さだが、この3人はある、2つの理由のせいで警戒心を完全に失うこととなった。


一つは報酬だ、業務内容の報酬はこれはまた良心的すぎる破格のもので、まず、一週間の泊まり込みつまりは三食、宿が提供されること、そして本来の成功報酬に加えて固定の日給が3万5千円もある、一日に3万円を超えるバイトはそういうえに、成功報酬はなんと、参加したバイト全員に30万円であった。


 それをまとめると、7日間、衣食住付、日当3万5千円、そこに成功報酬を加えて30万円、この条件だけ見たら、他のどんなに仕事、バイトも、全く持って割に合わない感覚にさせられた。 だがこれよりも3人がこの仕事に無意識ながら惹かれた理由は依頼主のプロフィール欄に記載されていた『顔写真』にあった。

 

 依頼主名 可米 彼方(カゴメカナタ)と名前が記載されている、顔写真の見た目はまさに美少年といった顔立ちで、天然色特有の緩く光を反射する桃色の髪と引き込まれそうな蒼い目が特徴で何より、それは写真越しでも、独得な雰囲気を醸し出していた。 それはまるで人智を超えた、常識外の美しさの精霊が人々に導きをもたらすため、 微笑みかけているようだった。 

 

何より、彼の美貌については野々原カオリも認めていたことが、その美が本物であることの証明でもある。


 というのも野々原カオリは高校生活を営む傍ら、モデルの副業もこなしているのだが、彼女は著名な雑誌の、表紙を度々がざるほど、業界の中だけでは、割りと有名だった。

 その地位から仕事をする上で無数の美男美女と関わる機会が必然的に膨大で、明らかに肥やした目に、映し出されたその写真が美を感じさたという事実は、彼が美貌においては稀有なぞんじいであることの現れである。

 

まぁ早い話、3人が3人とも明らかに怪しい案件に男の顔につられて飛び込んでしまったのが今の、後悔しがたい現状であった。

 


3人は他にスペースなど無数に空いているのにも関わらず、肩を寄せ合い、縮こまり、次に来る終点を待っていた。 そして程なくしてアナウンスがなる。


「次は〜終点〜終点〜高寝駅〜高寝駅〜終点です。 長らくの乗車ありがとうございます。お忘れ物のないようにご注意ください。」

 


「次は〜終点〜高寝駅〜 お疲れ様でした。」

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