第36話
「江崎君には大人しく五号『放置田ダンジョン』の調査を
してもらうということで・・・
もう一つの『放置空き家ダンジョン』に無断侵入した訪日観光探索者の目的は、
言わずと知れた『逸れスライム』の討伐配信よ」
新島は微妙な表情で言う
「全国に存在する『放置空き家ダンジョン』には、『結界』を張り巡らせていますが
その『結界』を突破できる道具が、海外市場では日本円で300万ほどで
売られているっす」
廣瀬は何とも言えない表情をした。
「海外探索者に取っては300万程度は小銭だが、国内探索者にとっては大金だ。
少なくとも国内探索者の懐事情を考えると購入は難しい」
古株の山田が、苦り切った表情で言った。
「 『『空き家等ダンジョン化対策の推進に関する特別措置法』で、 国が指定する
条件が揃った場合に限り、 補助金制度が適用されて解体費が無料になるけど」
新島がため息を吐くようにそう言った。
「 会長・・・そう言っても『放置空き家ダンジョン』の解体は危険度が高くて
手付かずの状態で放置されているのが現状っすよ
下手に解体作業すれば、『放置空き家ダンジョン』内に棲むモンスターが外に
這い出てきて 周囲環境を汚染するっす
それに全国に『放置空き家ダンジョン』は推定で900万戸にも及ぶっすから、
一か所だけ解体して補助金を貰っても焼け石に水っす
数だけ見れば、下手したら『廃神社』や『廃寺』怪異ダンジョンよりも
多くて とても手が回らない状態なんすよ」
廣瀬がそう続けた。
「(なんかもうツッコミ所満載なんだが)」
そんな感想を抱いた江崎だが口出しせず、内心だけで留めた。
「少子高齢化の影響で空き家率が増加したのは、ここ20年程度だから その前から
放置されている『放置空き家ダンジョン』も多々あるはずだ」
佐藤が続けて言った
「・・・だからと言って、江崎さんが企画提出した訪日観光探索者向け
『放置空き家』ダンジョン弾丸ツアー』などは絶対採用はしないでほしいっす!」
廣瀬が江崎に視線を送りながら、そう叫んだ
江崎は、思わず『へ!?』と言いかけてしまうが、なんとかそれを押しとどめた
「さすがに採用はしないわよ。
ただその代わりに、江崎君が再三に渡って五号『ダンジョン』の担当を願い
出ていたからそれを叶えたけどね」
新島がそう続けた。
「江崎・・・お前まさかとは思うが、五号『ダンジョン』の
担当をさせてもらえるか、『放置空き家』ダンジョン弾丸ツアー』を
採用してもらえるか、会長に対して再三に渡り企画提出をしていたのか?」
佐藤は信じられないものを見る様な目で江崎に聞いてきた。
「へっ!?(そんな事知るわきゃないんだけど!?)」
江崎は内心でツッコんだ
「江崎君・・君って奴は」
古株の山田が、何かを悟ったかのように江崎へ言った
「会長の英断には、支持できるっす!!
廃墟ツアー感覚で、『放置空き家』ダンジョン弾丸ツアーなんぞ
開催されていたら、ただでさえ日本探索者協会職員は人手不足と予算不足なのに
各都道府県の市役所、警察、自治会にその家主に対しての事前説明の
多さで発狂しかねなかったっす!」
廣瀬が何処かほっとした様子で言ってきた。
「おい、各国の大使館や日本外務省に対しての事前説明や現日本政府関係者に
対しての調整が抜けているぞ」
佐藤が廣瀬に対してツッコミを入れる
「どっちみち企画が通っていたら、発狂していたっすから
本当に良かったっすよ・・・」
廣瀬はため息を吐きながらそう続けた
「(どんな企画を提案していたんだよ。この『世界線』の俺は!?)」
江崎は内心で再びツッコんだが、 口出しせず聞き流すことにした
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