第34話

 ぎゃいぎゃぃと喚く異形の怪物に襲撃を受けており、拠点内に

 入り込まれる寸前であった

 奇声を上げて迫っているのは、彼もこの『世界線』に

『転移』してから目撃したゴブリンだ。


 襲撃してきたゴブリンの群れを撃退し続けている様だが、終わった

 訳では無いらしく遠くから新たな敵が近づく様子が映っていた

 急ごしらえの戦闘行為しかできない開拓移民集団と、組織立って行動できる

 ゴブリン達では 多勢に無勢である。

 ゴブリンの群れは圧倒的な数であり、とても開拓移民集団だけで

 対応しきれる物では無いだろう

 しかも、開拓移民集団で闘えるのは殆ど居ない様にもみえる

 薄汚い外見の緑色の体表をした小鬼達が棍棒や石斧などを手にして、

 拠点へ襲撃をかけている



『野郎ども新手のお客さんだ!!所定の位置に付け!』

 そう指示を出しているのは、最初の開拓移民集団を

 率いてきたリーダー格の男だ

 まだ若く20代半ばから後半ほどの年齢だ。

 弓兵であるためか、やや細身の筋肉質な身体をしている

 更には矢筒を背負い腰にはナイフを佩いているため、いかにも

 猟師といった格好だ

 肩で切り揃えた茶色い髪を風になびかせながら、鋭い眼光で

 辺りを警戒している

『射手、指示を待て!! 引きつけてから攻撃しろ!』

 そう指示を出したのは、ダークエルフと人間のハーフの男だ

 褐色の肌に金髪碧眼のイケメンだ



 彼はエルダートレント製の弓に矢を番えている

 そんな彼の後ろには、緊張した面持ちの男達がいた

『野郎ども! 盛大なおもてなしの用意はできたか?

 攻撃を開始しろ!!』

 リーダー格の男はそう叫びつつ、すぐさま矢をつ

 がえ弓を引いた。

 その弓から放たれた矢は、空気を切り裂きながら風を

 切り裂くような音を奏でて飛んで行く。


 狙いは拠点に襲撃を仕掛けているゴブリンの群れだ

 掛け声と共に極限まで引かれた弦が一斉に解放され、

 矢が放たれた。

 放たれた矢は風切り音を鳴らしながら、ゴブリンの群れに

 襲いかかると次々と 突き刺さり、ゴブリンの悲鳴が上がった。

 しかし、それでも拠点を襲撃するゴブリン達は止まらない。

 リーダー格の男は舌打ちすると再び弓を引いた

『頭を狙え!! 頭ァ!!』

 リーダー格の男はそう叫びながら、次々と矢を放つ。

 放たれた矢はゴブリンの頭に命中して突き刺さると、

 脳天まで届いたのか 悲鳴が上がり地面へ倒れた。


 それでもゴブリン達は攻撃を止める気配を見せず、拠点に

 向かって突撃している

 絶対数の多いのはゴブリンの方だが、着実に拠点を襲撃する

 ゴブリンの群れはその数を減らされていく

 やがて最後の1匹が倒れ伏し、静寂が訪れた。

 開拓移民集団とゴブリンとの戦いは終わったが、勝利した

 開拓移民集団は疲弊しきっている

 リーダー格の男が指示を飛ばすように叫ぶと、男達は

 それぞれに返事をしながら動き出した

 まず始めに行ったのは負傷者の治療だ。




『まだ、手持ちのポーションと薬草が足りねぇな』

 そう呟いたのは、リーダー格の男だ

『旦那、もうすぐ日が暮れる如何する?」

 そう尋ねているのは、ダークエルフと人間のハーフの男だ

 他の男達も疲弊してはいるが、これからの行動について

 話し合っていたようだ。

『設営中の拠点の周りに松明を灯す。

 日が落ちればゴブリン以外のモンスター共の襲撃も増える』

 そう答えているのは、リーダー格の男だ

『こいつは、夜通しで襲撃に備えるしかねぇな』

 疲労困憊な様子の男が不満そうな声を上げた

『死にたくなければ、しっかり働け!!』

 リーダー格の男が檄を飛ばすと、男達は不平不満を口に

 しつつも作業を再開した

 こうして拠点の襲撃に備えた対策が取られていく


「・・・何この映像」

 江崎はノートPCの画面を見ながら呟いた

 ゴブリンの群れと開拓移民集団との戦闘映像だったが、それは

 アニメやラノベでは決して見られないような

 激動の光景だった

 何と言っても、ゴブリンの数が多すぎるのだ

 しかも、その数に負けずに開拓移民集団も善戦していた。

「いや、本当にこれ何なんだ?」

 江崎はそう呟いた

 彼はこの映像を見て、どう言った感想を持てば

 良いのだろうと困惑した

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