第33話
管理事務所に戻った時は、『ダンジョン』内部は暗くなり始めていた
江崎 零士は、これについて若干驚きが隠せなかった
午前中に五号『ダンジョン』内部へ入った時はまだ日中の様に明るかったはずが、
朝と夜の時刻が存在しているのか、ダンジョン内が暗くなり始めていた
日本時間において時刻はまだ昼前だったため、ダンジョン外の時間とは時間経過が
異なっている事に気がついた
(内部と外の時間がずれている?良くわかんないなぁ)
江崎はそう考えながらも、ふとある事に思い至り呟いた
それはゲームなどで時間経過や昼夜などの概念が関係するものだった
どういう原理なのかは不明だが、このダンジョンは時間が
経過して 夜になるという 変化が実際に起きている
夜が訪れている『ダンジョン』内部には彼個人的に脚を
踏み入れる勇気は無い
まして、夜を徹して内部の探索をしたいという気持ちはない
これがラノベの登場人物なら嬉々としてダンジョン内部へ
踏み入れるだろう
しかし、この『世界線』に『転移』した江崎はそこまでの度胸もなければ、
好奇心もない
「何とか戻ってこれた・・・」
彼はほっとした声で呟きつつ、管理事務所に視線を向けた
元々は古い民宿だった空き家を管理事務所として利用しているためか、
古風な雰囲気がする建物だ
彼は少し足早に管理事務所のドア前まで行くと、ドアノブに手を掛けた
ガチャリという音と共にドアを開けて、建物内に入るが人の
気配は感じられなかった
しかし、彼はそのまま中へと入る
6部屋ある畳張りの部屋の一つには、ここに持ち込んだ書類と
オフィス用ノートpcが
置かれているだけで、今の所特にこれといった物はなかった
彼はドアを閉めて、書類とオフィス用ノートpcがある
部屋へと足を向ける
「本当に『ダンジョン』って何なんだよ・・・」
彼は思わずそう呟きつつ、小気味良く靴音を響かせる
江崎は六畳ほどの畳敷きの部屋に入ると、部屋の隅にある
小さな机へと向かった
その上にはノートPCが一台置かれていた
彼はそのノートpcの電源を入れて、表示された
パスワード画面に入力する
「さて、『廃棄異世界』からの開拓移民集団はどうなったんだろうか?」
彼はそう呟きながら、ノートPCの画面に映るスタートアップの
アイコンをクリックした
すぐにデスクトップが表示された
彼はマウスを動かして操作すると、画面には数多くの
フォルダが現れる
各フォルダ内にはそれぞれ○や□といった記号があり、その中にも
星印が入っていたり、様々な記号がある
中の一つにカーソルを合わせてクリックした
そのフォルダには、監視カメラより送られてくる映像が
記録されている
XCP245『異世界水』を散布した特徴的な
大きな岩が聳えている場所には、開拓移民集団が
拠点を建設中だった
外敵からの拠点防御の為、防御柵の作成や防壁の
建設等を行っている
防御柵の内側では、木造平屋の建物が2棟とテントや
タープの類いが設営されていた
拠点内はそれなりの人数が生活しているようだが、映像には
長閑な様子では無く、狂気を孕んだ早鐘が鳴り響き続け
怒号が響き渡っていた
槍や弓といった武器は用意しているようだ
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