第32話
江崎は咄嗟に短剣を構えて防御の体勢に入るが、その攻撃も見えない
壁によって阻まれる
西洋鎧姿の騎士はそれでも諦めず、何度も斬撃を繰り出した
斬撃と横薙ぎに斬り裂く一閃を繰り出すが、そのどれもが彼には届かなかった
それでも見えない壁には次々と罅が入り、遂には粉々に砕け散った
江崎は思わず茫然となっていたが、すぐに我に返って短剣を構える
その隙を逃さずに距離を詰めてくる西洋鎧姿の騎士に、闇夜と炎のように
妖しい輝きを放っている短剣を再び横薙ぎに振るった
鋭く尖っている切っ先から、赤黒い液体が飛び散った
突っ込んでくる西洋鎧姿の騎士の全身に、再び強酸性の効果が
付与していると思われる
赤い液体が降りかかり、西洋鎧姿の騎士の動きが鈍った
全身から煙を上がらせながら、地面に片膝をつく
(おっ!! これはチャンスか!?)
江崎はそう思うと、西洋鎧姿の騎士に向かって駆け出した。
しかし、西洋鎧姿の騎士はその見た目とは裏腹に機敏な
動きで素早く立ち上がると、左手に握る剣を頭上に掲げた。
その動作を不思議に思いながらも、彼は走る
速度を緩めようとはしない
西洋鎧姿の騎士の頭上で、満月の形をした二つの球体が現れた
それは月光のように、淡く輝く淡い球体だ
その輝きは不規則に揺らめき、幻想的な印象を見る者に与える。
しかし、同時に不気味で危うさを感じさせる光でもあった。
西洋鎧姿の騎士が天高く掲げた剣を振り降ろすと同時に、
二つの球体が彼に向かって飛来する
(うぉぉぉぉぃっ!? まだそんな技を隠しているのか!?)
彼は思わずそう叫びたくなったが、グッと堪える。
高速で向かってくる球体など、常人では躱せることは事は不可能だが、
『ネクロマンサー』一式装備により身体能力を一時的にも強化しているため、
避ける事は可能だ
ただ、短剣で打ち落とすことは迫ってくる球体に対しては不可能だろうが
江崎は強化された動体視力と反射神経によって、まず一つ目を避けた
球体は地面に激突すると同時に凄まじい衝撃と轟音を八方に響かせ、
周囲の枯れ草を巻き上げながら地面を破壊した
その球体の放つ轟きは遠く離れても聞こえるほどだ
また威力もまじいもので、着弾地には深い穴が穿たれていた
彼は冷や汗を流しながらも、二つ目の球体に視線を向けると
素早く飛び退いた
(あの球体はやばい!)
二つ目の球体もかろうじて身体を躱して通過させると、着弾した場所から
強烈な炸裂音と衝撃波が烈風の如く吹き荒れた
大地が抉り取られ無数の土塊が宙を舞う中、彼はそれでも体勢を
立て直そうとする
西洋鎧姿の騎士は躊躇う事なく次の攻撃を仕掛けていた
走るような構えから左足を踏み込み、再び間合いを詰める様を見て
江崎は身構える
再び突っ込んでくる西洋鎧姿の騎士へ、闇夜と炎のように
妖しい輝きを放っている短剣をもう一度横なぎに振るう
切っ先からまるで血のような液体が、西洋鎧姿の
騎士の全身に降りかかった
血のような液体を勢いのまま突っ込んだ西洋鎧姿の騎士は、背中から
地面へ倒れ込むように体勢を崩した。
全身から煙を上がらせながら再び立ち上がろうとするが、彼は
追撃をかけるように短剣の切っ先から血のような液体を
西洋鎧姿の騎士に向けて勢いよく噴出させた。
その一撃は、鈍く重い轟きを周囲に響かせる
西洋鎧姿の騎士は明らかに動きが鈍っていたため、回避することなく
血のような液体を全身で受け止める。
それと同時に、全身から白い煙を上げボコボコと膨れ上がったかと思うと
一気に弾け飛んだ
変化は劇的であった
西洋鎧姿の騎士の姿は何処にもなく、まるで煙の
様に跡形も無く消え去ってしまった
「倒したのか?」
江崎はそう呟いた
彼はほっとして力を抜いた時、脳内で言葉が響いた
『英霊召喚陣解放・・・英霊名:アレス』
それは無機質な声だった
「今度は何だ?_」
思わず、そう声に出てしまった
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