第29話


 タブレットの画像が粗くて文字の形状からすると、かなり

 古い文字のようだ

 彼は撮影しつつ魔方陣の周りを歩いてみる事にした。

 周囲に何かしら罠や仕掛けが無いかを警戒する為だ

 しかし特に何も見付けられず、ただ時間だけが

 過ぎていくだけだった

(これは本当に何なんだ?

 彼はそう思いつつ、人差し指で魔方陣の文字をなぞる様に

 スライドさせる


 すると、魔方陣が淡く光り始めた

「げっ!? 触っても起動するのか!?」

 魔方陣は淡く光ると、周囲に風が舞い上がりだした。

 次第に弱くなり、魔方陣の中央に黒い禍々しい煙の様な物が湧きだした

 黒い煙は人の形になり、やがて人へと変わっていった。

 暫くしてからそこに現れたのは、不気味に光る赤い眼光を持った

 西洋鎧姿の騎士だった

 その騎士は西洋甲冑で全身を包み、貌はフルフェイスのヘルメットで

 覆われているせいかその表情は一切窺い知れなかった。



(おいおい・・・マジかよ!?)

 江崎はそう思いつつ、撮影用のドローンとカメラを

 起動させておくことにした

 西洋鎧姿の騎士は腰に刺していた二本の剣をゆっくりと抜いた

 それは、重量を極限まで切り詰め直剣にサーベルを掛け

 合わせたような形状の 剣だった。

 そんな光景を見ていた彼だったが、ゴクリと唾を吞み込む

 動作をすると意を決して口を開く


「あ、あの~? こ、こんにちは~?(うわぁぁぁ!!緊張しすぎて声が

 裏返ってしまったぁあ!)」

 内心混乱しながらも必死に頭を回転させて話しかけるが

 騎士は無言のまま微動だせずに立ち続けている

 その事に少し安堵した彼はさらに声をかけることにした。

「き、君って誰かな?一人なのかな?(やっぱ返答はないよな。

 当たり前だけど・・・)」

 そんな事を考えつつも彼が相手の様子を窺っていると、西洋鎧姿の騎士は

 ゆらりっとした動作で江崎へと迫り、 右手の剣を

 袈裟懸けに打ち込んできた

 彼は驚きながらも咄嗟にバックステップして避けると、持っていた

 カメラを 右手に持ち替えて、左手で短剣を抜き放つ

 その短剣は、闇夜と炎のように妖しい輝きを放っており、

 ねじ曲がったぎざ刃はギラリと鈍く光を反射させ、怪しげな

 光を放っていた

 傷口を壊し出血を強いるためにあるのか、それを誇るかのように

 切っ先は鋭く尖っている


 それは、初めて『転移後』に『日本探索協会』の

 自分自身のロッカーより取り出した武器だ

 初めて見た時も、きちんと手入れされており、まるで新品のようだった

 だが、その武器は江崎はまったく見た覚えがない武器だ

 刀身は漆黒に染まっており、鍔部分には紅い宝石のようなものが

 埋め 込まれ、時折妖しく煌めいている

 柄の部分にも鞘部分も白銀に輝いており、そちらは闇夜と炎のように

 妖しい輝きを放っていた

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