第8話

 定期連絡を終えて管理事務所から再び、五号『ダンジョン』入口に戻ると、

 再度ダンジョン用偵察ドローンを内部に向けて飛ばした

「台風の影響で、モンスターが活性化って意味がさっぱりわからん」

 江崎はそう零した

 ドローンは広がる草原を北へ進み、やがて廃墟と化している

 関所らしき建物を 発見した

 だが、中世時代を彷彿とさせるような建物は辛うじて原形を残してはいるものの

 無惨なほど崩壊しており、 ほとんどが倒壊していた

 ドローンを高度を上げて確認してみると、惨状は想像以上だった

(これは何なんだ?!)

 廃墟の建物は、建物の南側から伸びる草木が建物の半分程を覆っており、

 建物を倒壊させかけていた



 元々1階建ての小さな小城程度の大きさの建物ではあるものの、

 柱や壁となる木材類も殆ど風化してボロボロになっていた

 そして廃墟と化した関所らしき建物から少し離れた所では、中世時代の

 鎧を身に纏った二足歩行の豚の様なモンスターの集団が

 廃墟を漁っている光景も確認された

(げっ! あれオークかっ!?)

 江崎は映像を視て、気持ち悪さのあまり思わず貌をしかめた

 外見とは裏腹に非常に凶暴で好戦的な性格をしており、実家の

『放置田ダンジョン』内でもかなり散々な目に遭ったのを今でも

 鮮明に思い出す


 江崎は、ドローンを操作して周囲を確認して分かった事は、この廃墟と化している

 関所はT字路の分岐点になっている事だった

 左右に道が伸びているのだが、右側は当然の様に草木が生い茂る森で

 何があるのかすら不明だ

 左も同じく道が続いているのだが、ここにも草木が生えており何が

 生息しているのかは不明だった



 江崎はドローンを操作して、廃墟からさらに北へ進みながら左右を視た

(このT字路に分岐した道・・・さてどちらから行くべきか)

 彼はそう考えつつ映像を確認した

 しばらく思考した彼は、草木が生い茂る森へドローンを操作して向かわせた

 100m程進むと景色が、鬱蒼としたツタ植物に溢れ、ジメジメした熱帯雨林を

 思わせるような環境に変わっていた

 更にその場所を抜けると湿地帯へと変貌した

 映像確認しただけでも、そこを移動するには一苦労しそうな環境だ

 江崎は、ドローンを高度を上げると周囲の地形を確認する事にした

 樹木は暖かな森などに生えるものではなく、細く縦に長い形状の樹木だった

 足元には様々な植物の葉が、絨毯の様に敷き詰められているかのように地面にも

 生い茂っている

 ドローンから送られてくる映像を食い入るように見ていると、木々の間を

 巨大な『何』かが移動しているのを確認した


(あれは・・・熊?)

 江崎は目を凝らして見てみると、それは熊ではなかった

 体型は肉食恐竜型に似ているが、濃赤色の鱗と外殻、頭部から

 背中にかけて逆巻く炎を想わせる独特な形状の蒼い突起が立ち並ぶ背部

 全長の半分近くを占める程に極めて長く巨大に発達した蒼い尻尾・・・。

 前傾姿勢で歩行する光景は、それだけでも重厚感溢れる強さを醸し出していた

 だが何よりも目を引いたのは、重厚な刃物のような形状に発達した尻尾だ

 甲殻には鉄分を豊富に含んでいるのか、威容からまるで『大剣』のような

 イメージを 想起させる



「ナニコレ」

 ドローンより送られてくる映像を見て、彼は呆然した

 巨大な二足歩行のトカゲの様なモンスターは、まるで海亀が縄張りを巡回して いるような 動きで徘徊している


 江崎のの知っているファンタジーワールドに登場するドラゴン系

 モンスターよりかは巨大だが、それ以上に現実離れしているのは

 全長が20m以上はあるのではないか?といった程の大きさだ

 そんな巨大な両生類の姿をしたモンスターに遭遇するとは、想定外にも

 程があった

(い・いったいなんだって、こんな馬鹿でかい生物がいるんだよ!?)

 映像に釘付けにされている彼は、その生物に圧倒される 江崎は生唾を飲み込むと

 ドローンを操作してモンスターとの距離を取った

 幸いにも生物はこちらに気付くこともなく、徘徊を続けていた 。

(アレがこのダンジョンに棲み着いているのだろうか?こんなデカブツを

 この『世界線』の人間は倒しているのか?)

 と内心思った

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る