第7話
江崎はまず最初に入口の外から、ダンジョン用偵察ドローンを内部に
向けて飛ばした
全長6センチの円盤型ドローンが、4つのプロペラを回転させ推進力を得て
ゆっくりとダンジョン内部へ進んでいく
空中に50センチ四方の光の映像が映し出され、壁や通路の状況が確認できた
やがて小型モニターに映し出された映像を視て、彼はドン引きした
「……これ本当に『ダンジョン』内部か?」
そうぼそりと呟いた
映像に映し出されたのは真っ暗な地下洞窟ではなく、草原が広がり遠くの方に
大きな岩山が聳え立っているという光景だった
それはまるでゲームの世界にあるような光景なため、江崎は頭を
左右に振って混乱し頭を抱える
が、すぐに冷静さを取り戻すと ドローンを操作するモニターを見つめた。
広がる草原の中には、至る所で蠢く影が見えた
それは、まるで蟻の大群の様だった
しかも、それらは大群と言っていい規模で蠢いている事が確認できた
(あれは何だ?)
江崎は顔を顰めると共に、ドローンを操作して映像を拡大させた
映し出された映像を良く観察すると、それは蟻ではなかった
正体は、彼が実家の『耕作放棄地』から発生した『ダンジョン』内部で闘った
ゴブリンだった
「おいおい・・・嘘だろ」
彼は思わずそう零した
実家の『耕作放棄地』から発生した『ダンジョン』内部では、
草刈りならぬゴブリンやコボルト、オーク、スライムというRPGゲームや
ラノベ書籍で登場しているモンスターと何だかんだで戦闘をした
この五号『ダンジョン』のゴブリンは、送られてくる映像を
視る限りでは実家の『ダンジョン』内部にいたゴブリンよりも
少し大きいサイズだ
そして数も圧倒的に多い
江崎は数に圧倒されつつも、ドローンを操作して周囲を確認する
『ドローン』より送られてくる映像は開放的な草原の景色で、はるか先には
巨人らしき人影がのしのしと歩いているが映像で確認できた
その時、ふっと実家の『ダンジョン』探索を終えた時に父親が言っていた事を
思い出した
『年に2回は草刈りをしないと、内部にオーガやキマイラが
棲み付くようになる』とその時は
『なんじゃそりゃぁ』と思ったが、現に数年前から『耕作放棄地』
化している
隣の田圃では、草木が生い茂る中でどでかいモンスターが犇めいているを目撃した
―――この五号『ダンジョン』ではどうやら大量のゴブリンの他に
巨人系モンスターが棲みついているらしい様だった・・・
「この五号『ダンジョン』は、まるでガチガチのオープンワールド(Open world)
じゃないか……。
この『世界線』の俺は、なんでこんなわけのわからん『ダンジョン』に執拗に
拘っていたんだよ!?」
江崎はドローンから送られてくるこの五号『放置田ダンジョン』の映像を視て、
思わずそう内心悪態を吐いた
江崎は一旦管理事務所へ戻ると、ドローンから送られてきた五号
『放置田ダンジョン』 内部映像を『日本探索協会ダンジョン課』の
佐藤 正樹に報告した
この『世界線』では、佐藤は『日本探索協会』の副会長的な役職についており
彼の直属の上司でもあるからだ
『映像確認したが五号『放置田ダンジョン』内部は、『オープンワールド型』で
間違いないだろう。
『日本探索協会』が管理している一号と二号も『オープンワールド型』
ダンジョンなため、 特に珍しい事ではないな。
ただ二つとも『地下迷宮』タイプで、通路も複雑で移動的制限が有るために
探索しやすさは比較対象にならないが。
海外『ダンジョン』ならば、探索者の実力次第で攻略難易度も大きく変わってくる
例えばポーターを付けた状態でも、最低で1ヶ月以上掛かるよう
なダンジョンも有る
しかし日本国内の訪日観光探索者や日本探索者に開放している一号から三号『放置田ダンジョン』・・・
今後四号『ダンジョン』が解放予定だが、装備類が充実している
訪日観光探索者の攻略期間は 一週間程度、RTA勢なら約三時間で深層まで突破する事も可能だ』
通信機の向こう側から、淡々とした口調で佐藤が報告をしている
その内容を聞いた江崎は、頭が痛くなった。
(本当にこの世界は何なんだ?)
と愚痴をこぼすしかなかった。
もう1つ江崎を唖然とさせるのは、余りにも淡々と答えてくる佐藤だ
元の『世界線』では尊敬できる会社の先輩だった
だが、こちらの『世界線』の佐藤はあまりにも淡々とした口調で話すため
感情が読み取りにくい
『それと五号『ダンジョン』もだが、台風の影響で内部に棲息している
モンスターも活性化しているはずだ。
一応忠告しておくが油断はするなよ?
それと新島『会長』に説教されたくなかったら定期連絡も忘れるな』
佐藤はそう忠告する
「それは必ず(まさかと思うが、この『世界線』の俺は社会人としての
常識『報連相』を 疎かにするような社会人失格の迷惑野郎だったって事か!?)」
江崎はそう思いながら、心の底からため息交じりで返事をする
『・・・・最後に『ダンジョン』配信もするな。
幾ら前々からお前が言っている『ジャパニーズ・ダンジョンツーリズム』などは
趣味的なもんだ』
と言い終えると、向こうから通信を切断した
江崎は、通信機を机に置くとため息を吐く
「『ダンジョン』配信なんて、できるわけないじゃないか・・・・。
ネットやラノベ系主人公じゃあるまいし・・・俺はそんな勇気はない」
江崎はそう独り言を呟いた
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