第4話
―――しばらく経ってから、江崎 零士は管理担当となった
五号『放置田ダンジョン』施設へとやってきていた
五号『放置田ダンジョン』がある場所は、山間部の限界集落にある
周囲は山で囲まれており、その山の麓に 集落があった
舗装されていない道が集落の入口を指し示している
道なりに山の中へと進むと、竹林が続く道の先に人工的に切り開かれた土地には
僅かに古めかしい和風建築の家々が建ち並んでいる
山間にある事から、その鬱蒼とした雰囲気がいかにも霊的な
モノが居そうだと思わせる雰囲気が漂っていた
林業をしていた 山がポツンポツンとあり、一番近くにある森林も
植林などされていないため 暗くジメジメした感じが漂っている
玄関に竹を加工した戸が備えつけてあり、まるで旧日本家屋のようだ
道はあれど舗装されていないため、江崎零士が運転する『日本探索協会』専用の
黒塗りのベンツS600ロング社用車がゆっくりと進んでいく
道は一本しか無く、目的地までは真っ直ぐ進むのみで迷う心配はない
その為、スピードは出さないようにしている
しばらく進み、少し古びた建屋群が見えてきた辺りで江崎は車を止めた
荷台のバックドアを開け、中に入っている装備類を下ろす準備を始める
「・・・何か都市伝説などで語られている幽霊村か、ミステリースリラー系の
舞台に なりそうな所だな」
江崎はそう言うと、荷下ろしの準備を始める
それから数分ほどで荷物の積み降ろしと装備類の装着が終わり、改めて彼は
五号ダンジョン付近を見渡す
辺り一帯は雑草が生い茂り荒れ地化しており、管理事務所として
空き屋が1件ある
何処か日本古来の建物と古風な雰囲気だ
辺りをよく見ると人里離れた山奥には立派な造りをした寺があり、
存在感を示すように建っている
だか一目見ただけでも、維持するための人手などがなく荒れ果てているのは
はっきりと分かった
今いる五号『ダンジョン』周りは、まるで廃村や限界集落のように
人が居らず寂れている
現世から切り離されたかのような場所だった
遠くから見れば廃村や限界集落に見え、近くから見たとしても
廃村や限界集落のように寂れている
江崎は荷下ろしをしながら周囲を見渡すが、人の気など全く感じられない
(ここは俺が担当するんだよな?)
彼は暗澹たる気持ちになりつつも、荷下ろしを続けていると五号『放置田ダンジョン』の
方から3名ほどの作業員のような人物が近づいてきた
作業員かと彼は思ったが、3名とも屈強な男性で 作業員の格好はしていない
とはいえ、探索者らしい格好でもなく。
その格好と服装は、まるで特殊部隊のような格好だった
武装はしていないが、腰には拳銃やナイフなどの武器類を携帯している
「 『日本探索協会』の江崎 零士さんか?」
先頭を歩いてきた男性が話しかけてきた
身長180cmほど鋭い目つきで、年齢は20代後半か30代の
前半辺りだろう
肩幅も広くがっしとした体つきをしており、鍛えているのを
感じられる
声も低くく威厳ある声色だ
何処か野性味のあるイケメンと言った感じであった
「あ、はい。そうです。そちらは・・・?」
江崎は、ぎこちない返事をした後、言い淀みながら問いかける
「手野武装警備株式会社武装警備隊『ダンジョン課』の嵩原だ
この五号『ダンジョン』警備と『廃神社・廃寺』怪異ダンジョン』警備に来た」
そう名乗ってきた
「武装警備隊?(あっちの『世界線』でも手野武装警備株式会社の
『武装警備隊』は存在していたが、『ダンジョン課』なんて無かったはず・・・)」
そう心の中で思っていると、嵩原は話を続けた
「俺の小隊を指名してくれたみたいだが・・・
上からは詳しいことは知らされていない。
本社からの作戦方針明示は、あんたの現場指示に従えという事だ
小隊30名合流まで、あと1時間ほどかかる」
嵩原はそう言うと、後ろの2人の隊員に声を掛けていた
どうやら合流予定時刻を確認をしたようだ
(ちょっと待ってくれ!?
この『世界線』にいた俺は一体何をやっていたんだ!?)
そう心の中で叫ぶと、彼は思わず天を仰いだ
『武装警備隊』30名合流する1時間の間に、江崎がまず最初にしたのは
限界集落で生活している村民との懇親会であった
現地住民は至って穏やかな印象を受け、年配の男女ばかりだったが赴任挨拶に
回った感じでは極度な排他的でなく、むしろフレンドリーな反応が多かった
よそ者の移住者でも温かく迎えて、自ら積極的に話し相手になってくれるような
雰囲気であった
(これで超排他的だったら、本当に絶望しかなかっただろうな)
江崎は、安堵のため息を吐いた
そんな事を思いながら、管理事務所としている空き屋内を
ざっと見渡して見る
元々は古い民宿であったのだろう。
手入れや掃除など全くされてないからか、埃まみれだった
その空き屋内の壁には、地図らしき張り紙が貼られていた
(・・・これの事だな)
彼は無造作に貼ってある貼り紙の1つを手に取ると
視線を下に下げて見ながら内容を確認する
それは五号『ダンジョン』周辺の地形図のようだ
周囲は山に囲まれた森林地帯で、人里はない
五号『ダンジョン』化するまでは、田畑だった様だが今では雑草が
生い茂り荒れ地化している
五号『ダンジョン』入口には、遠くからでも目立つ様に鎮座する
電飾看板があった
▼探索者協会中部支部作成:探索者用注意書き
・私有地につき立入禁止区域――不法侵入を禁ず
・(注釈:上記の通りダンジョン探索者協会は探索許可を有資格者に限らせています)
・周辺環境に異変を感じた場合、速やかに探索協会各支部へご連絡ください
無断で立ち入った場合、日本では軽犯罪法第1条32号などにより処罰対象となります
――そう書かれていた
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