朝だ。


ここは太陽から近いせいか、日が窓から容赦なく部屋へと差し込んでくる。

そんなことだから、フロイラインは布団へと潜り込み、完全防御態勢を作った。


実に平和だ。まるで昨日何事も無かったかのようにぐっすりと眠れる。

昨日あんだけ頑張ったんだ、誰も文句を言わないでくれ。


私にとって寝ることこそが至高なんだ。まさに人間の喜び。気持ちよすぎる。

そんな事を思いながらフロイラインはまだまだ布団の中へと入り眠っていく。

だが、そんな平穏を壊そうとするものが一人。


「フロイライン起きなさい!早くしないと学校に遅刻するわよ!」


「あとでぇ……、私がいいって言うまで待ってぇ……」


「分かったわ」


「ありがとぅ………」


フロイラインの睡眠は守られた。たった二言返しただけで。伊達に睡眠王の称号を名乗っていない。


これで平和が訪れる。……訳が無かった。

布団が暖かい。暖かいというか熱い。

フロイラインはこれに近しい思いを知っている。アリスに燃やされた時と近い……。

すぐさま布団から顔を出すと、布団がジリジリと音を出しながら燃えている。


「頭おかしいんじゃないかな!!」


「起きろって言ったわよね私」


笑いながら容赦ないゴミを見る目。いつものアリスだ。容赦なく私を殺そうとして、ぞんざいに私を扱うアリスだ。

今思うと、やってる事やばいな。

でも昨日のアリスより、いつものようなこっちの方が安心する。

そして、そんないつものアリスにフロイラインは逆らえる訳もなく。


「はい……もゥ……いいです……。すいませんでした……」


そう言ってベットから起きたはいいものの、学校に行く気がまるでおきない。

学校に行きたくないなんてこんな事を思っているのはいつもの事だが、そうゆうのでは無い。

また違う何か……。


「何してるのよフロイライン、遅刻するわよ!ただでさえ飛び降りるまでの時間があるのに」


そう言ってアリスは急かすが、フロイラインはまだ動かない。

何かが違う。いつものなんて事ないただの日常だ。文句なんてつけようがないほどの幸せな時間。

フロイラインは考えた。考えて考えて考えた。

そしてフロイラインは一つの結論を出した。


「アリス!わたし学校辞める!」


「バカな事言ってないで用意」


「私マジで辞めるよ。てゆうかあの町から出ていく、私」


「……マジで?」


そう言うと手を止め、さすがにアリスもびっくりした表情でこっちを見た。

私は本気だ。本気と描いてマジだ。

私は、あの町も学校も結構酷いこと言ってるがなんだかんだいって結構すきだ。

私が生まれて育ってあの町は色々教えてくれた。大体の事はあの町で学んだよ……。

でも、あの町にいたら私は変われない気がする。今までの自分のままで終わる気がする。

だから私は──────────


「私、旅に出る。だからアリスにも来て欲しい。私の隣には……アリスが必要だから」


「分かったわ、私も学校辞めてついて行くわ」


そう言うとアリスはキッチンへと向かいお湯を沸かし始めた。


「いや、ちょっと!?めっちゃあっさりじゃん!ダメ元で話してたんだけど……」


「フロイラインなに飲みたい?大体はあるわよ」


「じゃぁ……コーヒで。……って違う!ついて来てくれるって……」


「私、学校飽きたのよ。フロイライン以外友達もいないし、フロイラインの事それなりに好きだし」


「悲しいこと言わないでよ……。でも、そう言ってくれて嬉しい……」


「フロイラインについて行った方が楽しそうじゃない」


そう言ったアリスは実に笑顔だった。


「……いいの、そんな適当で。君一応学校の優等生だよ?」


「優等生なんて世の中知らないバカが勝手に言ってるだけでしょ。私みたいなのは探せばいくらでもいるわ」


「そういうもんかな〜。まっ、アリスがついて来てくれるならいいけど……」


「決まりね。……パン焼けたけど食べる?わたし特性のパン」


「食べる!」



「こうやって学校辞めてパン食べるの以外と楽しいわね」


「楽しいのはいいけど今私たち学歴なしの中退クソ野郎達だよ?不安とかなわけ?」


「その言い方だとまるで引きこもりのニートみたいな言い方じゃない」


「ニートと変わらないでしょ私達」


「……フロイラインがニートなんて言うから、そう思ってきたじゃない」


「いやだからニートだって私達」


笑いながらパンを食べる二人。

こんなくだらない会話をパンを片手にずっと話し合っている。

くだらなさすぎる。いい歳したニート二人が真剣によく分からない議題を答えあっている。

こんなくだらないことで今はちゃんと笑えてる。

でもこうしてずっとここにこうして居る訳には行かない。


「……そろそろいく?」


「それもそうね。天気もいいし時間もちょうどいいわ」


フロイラインたちは机にあった皿を片付ける。


「あれ、もう朝ごはん終わっちゃったの?アリスちゃんの手料理食べたかったのに!」


いきなりフロイラインの後ろに現れ、何故起こさなかったと言わんばかりの目でミレアが言う。ていうかなんかミレア全身が焦げている。


「ミレアさんいきなり後ろに現れるのやめてくださいびっくりするんで!!それより、なんでそんな姿なんですか……」


「いやぁ〜、フロイラインちゃんのベットに入って寝てたらいつの間にか燃えてて」


そういう事か。ベット燃やされたもんなアリスに。

でも私のベットに勝手に入った方が悪い。私のベットに入る以上ベットが燃えるくらいは、想定に入れなければいけない。


「お風呂入ってきてください!臭いんで」


「それより朝ごはん!今日何作ったの!」


「パンですよ!もう全部食べましたから入ってきてください!」


「え〜、また作ってくれないとお風呂入らないぞ〜」


めんどくせぇー、子供かこの人は。その焦げた体であんまり体を引っ付けないでほしい。


「あーもう恥ずかしい!つくってあげるからお風呂入ってきてお姉ちゃん!」


そう言ってアリスは街に材料を買い出しに行った。

これじゃ、どっちが姉か分からなくなる。


「……それじゃ、お風呂入ろっかフロイライン!」


「えっ……嫌ですけど…………」


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