妹はちょっと傲慢な方がいい
「………んっ?」
フロイラインは固まった。これはいきなり右ブローを打ち込まれた感覚に近いものがある。
ちょっとまて。アリスからとんでもない事が聞こえた気がする……。
何?お姉ちゃん……?
Is this my sister? Is this yours?
「ちょっとまって……、どうゆうこと?」
「お姉ちゃんが虚言吐いたって事よ。あれは全部作り話」
「いやまぁそれも気になるけどね。私の顔みて!絶対そこじゃない事分かるでしょ!お姉ちゃんって何!?」
「お姉ちゃんはお姉ちゃんよ。分かんない姉妹?何が分からない?文字の意味が分からないの?」
「……ナチュラルに煽ってんの?わけがわからないよ……」
「私とアリスちゃんが血の繋がった姉妹ってことだよフロイラインちゃん」
そう混乱する私にミレアが言う。
駄目だ。さっきの戦いで血を流しすぎて、何も考える気力が起きない。
だがこれに関しては、多分血が足りていても考える気力が起きないと思う。
さっきまで三人で殺し合いと言っていいほどの戦いをしてたんだ。
アリスは何度もミレアに致命傷を受ける攻撃を何度も撃っていた。
何回死んでもおかしくない攻撃の連続だった。
それで姉妹だなんて……。
「まっ、びっくりはするよね、あんだけ戦って!しかも私たちあんまり顔似てないもんね、よく言われるよ。でも私とアリスちゃんは正真正銘血の繋がった姉妹だよ」
ミレアは笑いながら言った。アリスはそんな風に言うミレアにめちゃくちゃ嫌な顔をしながら聞いている。
多分これはマジの姉妹だ。アリスの顔を見ればよく分かる。
信頼、あと多少の照れ隠しを含む軽蔑の目。
私だってこんな姉がいたら嫌だもん。こんな目もするし、あんなに悪口も出るはずだ。
「まぁ、それは分かった……。でもなんで家に入ってから今更お姉ちゃん呼びなのよ」
「だって……、外でお姉ちゃん呼びなんか恥ずかしいじゃない……」
顔を伏せながら言うアリス。
……可愛い!可愛いかよ!
「あの二人で話してるとこ申し訳ないんだけど、アリスちゃん私に聞きたいことあったんじゃなの?」
「「あっ」」
ミレアが話をぶった切った。
すっかり二人の世界に入っていた。
そうだ。こんな事長々と話している時間じゃない。
「それで、作り話ってどういうことアリス?」
「言ったでしょ、この国の王様は嘘つきだって。それで文字通りの意味よ、多分だけどね。そうでしょミレア」
「バレちゃった?やっぱりアリスちゃんは賢いね〜」
「茶化すのはいいから。フロイラインについた嘘、どこからどこまで嘘なのよ」
「…………全部だよぜんぶ。ぜーんぶ嘘。フロイラインのお母さんは殺してないし、フロイラインちゃんを殺そうとも思ってない。全部ぜんぶ嘘。」
「嘘ってミレアさん普通に殺す気だったじゃないですか」
「あれ本気じゃないよ?君たちの攻撃なんか当たるわけないじゃん。やろうと思えばいつでも首ネジ切れるんだから。それにアリスちゃんが壊したところ以外何も壊れてないし。隕石も落ちる前に全部上に飛ばしてあるから。私が本気でやればこの国もたないよ」
「怖いこと言わないでくださいよ……」
随分と私たちは遊ばれていたらしい。それでも死にかけたんだからいい迷惑である。
「…………でも、なんでそんな嘘ついたんですか」
私がそう聞くと、ミレアは手招きをし私達をベットへと座らせた。
「アリスちゃんちょっと寝といて」
「なんでよ」
「いいから」
「…………フロイラインに変な事言ったら口聞かないから」
ミレアがそう言うとアリスは嫌そうな顔をしながらしぶしぶ寝た。ミレアの膝枕で。
こういう場面を見ると姉妹なんだとよく分かる。
「ごめんね、アリスちゃんに聞かれるのは嫌なんだ」
「……それじゃあ話してくれますか」
「分かった。……さっき全部嘘って言ったけど……君のお母さんと友達だったて言うのは本当。友達っていうか小さい頃勝手に君のお母さんに誘拐されてついて行って友達にされただけなんだけどね!」
「本当ですかそれ……?」
「大マジのマジ。いきなり現れて連れてかれたんだよ」
駄目な人間ではあったが、お母さんなんてことしてんだ。
「でも私たちの親共々クズしかいなかったから…………それがとっても嬉しかったんだよ」
「それがなんなんですか……」
「ちょっと待って、まだ話の途中。……君はさ、親がいる苦痛って知らないでしょ。クズな親はさ、殴る蹴るは当たり前、知らない人と性交だってさせられた事ある。何度も何度もお腹の中を突かれる感触、それが何時間も。知ってる?痛いんだよ全部。お腹の中がブチブチ鳴って小さい体を持たれて気持ち悪くて全部もどすの。何回も何回もまだ子供なのにさ」
「………」
「でも君のお母さんが助けてくれたんだよ、そんなの全部ぶっ壊して私を連れ去って救ってくれた。そこからはずっと一緒だった、旅に出たり色々ね。でも君が生まれてからは私は居なくなったんだよ。私みたいなのがいたら邪魔だし不幸になるからね。でも君のお母さんはいつの間にか殺されてさ。君を残して死んで。皮肉だよね、知らない小さい子供を助けたら自分の子供は不幸になりましたって」
「……誰がお母さんを殺したか知ってるんですか」
「知らないよ、だから私は君の前に現れた。フロイラインちゃんの事は前々からアリスちゃんから聞いてたんだよ、私の友達がボロボロだーって。そして昨日学校に行って見てみたら私と同じ目をしてたんだよ。他人に全部を任してる目。自分では何も出来ない人の目をしてた」
「……おちゃらけた人だと思ってましたけど人の事よく見てるんですね」
「当たり前だよぉ〜。伊達に七燈やってないからね。それでさ、私はフロイラインちゃんをどうしようかなぁ〜って考えたんだよ。助けれる人は皆助けたいからね私みたいな子は特に……。しかも友達の子供だしね」
「それで思いついたのがあれですか……」
「そう。私は君のお母さん見たいに上手くできないから何かいい案ないかなぁって考えた結果、私が犯人になって君を背負おうと思った。今思うと狂ったことをしたと思ってるよ。多分徹夜で国の仕事してたからハイになってたんだと思う。結構国王ってブラックなんだよ〜」
「ちゃんと休んでくださいよ……」
「分かったよ。まっ、そんな話は置いといて話の続きね。私はさ、誰も犯人を知らないんだから私で憂さ晴らししてくれれば解決すると思ったんだよ。それで全部解決すると思った……。そしたら逆に君が全部背負おっちゃってさ……。私は私を救えてないからこうなるんだろうね……」
そう悲しげに言うミレアに私は何も言えなかった。
そして同時に違和感が走った。
ミレアは私を助けてくれ用とした。それだけはしっかりと伝わった。
でも、私とミレアでは生き方が違いすぎることも伝わった。
────────重い雰囲気が流れる。
だがミレアはそんな事は気にせず話し始めた。
「でもさ、アリスちゃんが助けてくれた。私じゃなくアリスちゃん。私の知らない方法で助けてくれた。二人を見てると私は最初からやり方を間違えてたんだとよくわかったよ……。アリスちゃん見てるとちょっと……嫉妬しちゃったよ……。優しくないよね私……。本当にごめんなさい」
違和感。
フロイラインはこの時分かった。
この人は強いんじゃない。私と違った辛い過去を持って同じがむしゃらに一人で今を作ってる人だ。
「なんか……、ミレアさん思ってたより私と合いそうですね」
「私もそう思うよフロイライン……」
「…私、ミレアさんのこと最初は変な人だと思ってました。人って見え方が変わるとここまで違うんですね……」
「つまりなにが言いたいと?」
「人間は難しいってことです!」
「……今の君らしい意見だね。」
そう言うとミレアはくすっと笑った。
「まっ、結果的にはミレアさんのきっかけで私は立ち直れたということでっ!そんなに自分を責めないで、誇って欲しいです……。やり方を間違えても、私はゴールには着いたんですから!私は過程より結果がオーライだったらいいんです!」
フロイラインは笑顔で言った。
光が宿った底なしの笑顔。
その顔はミレアにとってどこかあの人を思い起こさせる。
「君は今の笑顔の方がお母さんに似てるよ」
ミレアはそう言うと立ち上がりキッチンへと向かった。
「アリスちゃん起こして。ご飯にしよっか、美味しいのつくってあげる」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます