七燈

「ねぇー、アリスの家いきたいー」


「ダメよすぐ下に帰るんだから。手、離さないでよね」


「いやだー、いきたいー!いきたいいきたい!」


「あんたのこと下に落としてやろうかしら……」


この国に来てからみっともなく駄々をこねてみるが聞きいられないどころか、アリスの機嫌が悪くなっていく。

半分私のせいの気がするが、気にしていては負けだ。


「……なんでそんなに私の家に行きたいのよ」


「だってアリスの事私そんなに知らないし。三年間の付き合いでまともに喋ったの数日ぐらいだよ?だからアリスこ事色々聞くの、合理的でしょ?」


フロイラインがそう言うとアリスはさらに不機嫌になった。尺に触ったらしい。


無理だ、わたしにはアリスの情緒がわからん。どうしろってんだよ。


「そもそもこの国に長くいない方がいいわ」


アリスが機嫌悪く言った。


「そこまで悪い所には見えないけど?うるさいぐらい平和そうだし」


アリスの機嫌が悪くなるくなる程のものはこの街にはないように見える。

むしろ活気があって明るすぎるくらいだ。平和そのものと行っても過言では無い。


「パヴァーヌ。フロイラインはこの国の事何か知ってるの?」


「すごい国」


「っ……小並感、結構ざっくりね。まぁいいわ。結論から言うとこの国の王はクソ。この国は好きだけどあの人は嫌い。それが私がこの国に居たくない理由。それだけよ」


アリスが不機嫌そうに言う。

仮にも自分の国の王なのにめちゃくちゃに言うじゃないか。

てっきり、七燈が治める国は皆七燈が好きだと思っていたがそうでも無いらしい。


「この国の王が他の国からなんて言われてるか知ってる?!詐欺師よ詐欺師!他にもアホ、嘘つき、メスガキ、ろくな女じゃない、その他etc・・・。散々に言われてるのよ!普通にいい人なんだけど、どうも性格がだめなのよ・・・・・・」


詐欺師……アホ、嘘つき……。それより最後の方に言われているメスガキのことの方が気になる……。


一国の王がそんなのでいいのだろうか。もうちょっとマシな名前でも上げればいいのに。

そうゆう問題でもないか。


「ホントにそんな人なの?」


「ホントにそんな人よ。とにかくホラ吹いて他人をおちょくるのが好きなのよ。でも……悪い人じゃないのよね・・・」


まずい場所に来てしまったかもしれない。

だが聞く限りではこの国に問題は無いようだし、普通にしていればそんな奴にも会うことなどまず無いはずだ。


「それでアリスはその七燈のことなんて呼んでるの?」


「カス」


そうやって仲良く会話しながら歩いていると私のお腹が鳴り響いた。

そういえば朝食べるのを忘れていた。

周り見渡すと、辺りには屋台がそこら中に溢れかえっている。

肉に魚。色んな食材が並んでいる。


「アリスあれ食べた……──────────」


声が止まった。今までアリスに握られていた手の感じがしなくなった。


横を見ても誰もいない。

周りを見渡してもアリスらしき人物は見つからない。

一緒に横を歩いていたアリスが消えた。ちゃんと手は握っていたはずなのにいきなり消えた。


「……どうしたのかなお嬢さん」


不意に耳元で囁くように声が聞こえた。


「うわぁ、気持ち悪ぅ!何っ!」


びっくりして横を見てみると、帽子と軍服の様な、でもどこか可愛いらしさを含めている服を着た、なかなか見た事がない服装をしているお姉さんがいた。


「……ちょっとちょっと君!そんな警戒しないでくれ」


「いきなりそんな事されたら誰だって警戒するよ!誰なんですかっ!」


危ない人には見えないがなんなんだこの人……。


「私はミレア。世界で二番目に可愛くて最高な女の子!」


「あ、どうもフロイラインと申します・・・」


うーん…………。

・・・・・・やべぇ奴が来てしまった!

服装を見てすぐきずくべきだった。こいつは頭のネジが一や二本外れている所のやつじゃない!

部品そのものがないタイプだ。


よし・・・・・・、逃げよう!


「君、今めちゃくちゃ失礼な事思ってるよね・・・、ってぇちょっと、逃げないでっ!ご飯!ご飯奢ってあげるから!待ってぇ!」


何!ご飯っ!?


────


フロイラインは串焼き肉を両手いっぱいに持ちながら道を歩いていた。


「君はさぁ、私が言うのもなんだけどそのうち危ない人に連れていかれるよ?」


「大丈夫です。もう危ない人に連れていかれているので。」


「誰それ?」


「おめぇだよ」


食欲に負けて不覚にも着いてきてしまった。これは仕方ないだろ。

私は一に食欲で二に食欲、三に睡眠欲なんだ。

そんな奴が朝飯抜くなよと声が聞こえてきそうだが、まあそれは・・・・・・、私が悪いな。

反省しよう。


「それで、ミレアさんは私の事どうするつもりですか?」


「どうもこうも君、誰かとはぐれたんじゃない?一緒に探してあげるってわけ」


「よく分かりましたね。暇なんですか?」


「ずぼしー!そう言うのはもうちょっと優しく言ってくれないかな、普通に傷つつから。実際私は暇な訳だけど・・・、そこまで暇じゃない!人助けがある!」


「はぁ・・・、なんだかなぁ〜。お姉さん見てるとこういう大人になったらダメだなぁってよく分かりますよ」


「それアリスちゃんにも言われた事ある〜」


唐突にミレアの口からアリスの名前が出てきた。


「ミレアさんアリスの事しってるんですか?!」


「知ってるも何も・・・、」


彼女はそう言うと被っていた帽子を取り、顔を見せた。

顔をよく見ると、それは昨日の夜学校でアリスと言い合いをしていた女性その人だった。


「あっ!アリスとカイル先生の三角関係の人!」


「・・・君は何を言っているんだ?まあ、とにかくどうもー、昨日のお姉さんだよ〜、こんちな〜。これで色々とわかってくれたかな?」


昨日とまるで雰囲気がガラッと変わっていて帽子を取るまで全くといっていいほど気づかなかった。

そんな事よりこの人・・・・・・、よく見ると可愛い!


「いや、それで結局アリスのなんなんですか?顔だけ見せられても分かんないですよ」


「はぁ、君は察しが悪いねぇ」


「そうですよ!察しが悪くてすみませんねっ!」


ミレアが少し間をあけ息を吸い喋った。


「じゃあ改めてご挨拶を。どうもこんにちは、フロイライン。この国パヴァーヌの七燈天が一人、ミレア。よろしくね!」


ミレアは笑顔でそう言った。

七燈・・・。七燈ねぇ・・・。七燈と言えば神に作られし一国の王様でしょ?

七燈・・・・・・。このおちゃらけた人が?一国の?

・・・・・・まじで?

やっべぇー・・・。めっちゃ無礼しちゃったよ

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