教師って案外やばい

「ねぇ、あれすごくない!マジやばくない!アリスなんだと思う?!」


「わかる。マジヤバい……ほんとに……」


学校ではあの島のことで話題が持ちきりだ。もちろん学校だけでなく街も大混乱。


もちろん私もその一人だ。

ただアリスだけ興味がなさそうに、何故か機嫌が悪かった。


あちらこちらで声が聞こえる。


学生たちがなにか知らないかとフロイラインは、それをカッコイイ顔をしながらフロイラインは盗み聞きしていた。


「世界の終末だー」だの、「神が怒った!」だのそんな話があちらこちらで聞こえてくる。


バカもいい加減にして欲しい。そんな訳ないだろう。


だが、無理もない話だ。いきなり街を覆い尽くす程の島が現れれば誰だって驚くし怖い。しかも一瞬で現れたとなると尚更だ。


もちろん私だって怖いし、漠然とした不安な何かがある。


明らかに何かが起きる予感がする。

だがこんな時でも学校は通常通りであった。世の中とは本当に理不尽だよアリス君。


「それでアリス君はどう思うかね?あれのことなんか知ってそうだったじゃん」


「……………少し黙ってくれる」


「もー、アリスちゃんきつい〜」


話しかけるが会話が続かない。

アリスは朝からこんな調子で、露骨に冷たい態度をとってくる。

いつもはもうちょっと会話があるが今日は極端に少ない。


このままだと最悪友情が破綻してもおかしくい。なのでフロイラインなりに理由を考えていく。


まず考えて、十中八九あの宙に浮いている島にが関係しているはずだ……。

それか、昨日アリスが寝ている最中にアリスの下着と私の下着を履き替えさしたのがバレたか・・・。


・・・・・・うん、それ以外何も思いつかない。下を向いても上も向いても何も思いつかない。

多分前者だと思う。


あの浮いているデカイ島。


言ってしまえばあれはただの宙に浮くでかい岩の塊のようなものだ。それの何に怒ろうと言うのだ。


あの島が落ちてくるとなると話は別だが、そんな気配は今の所全くと言っていいほど静寂に留まっている。


わからん、私には分からん。一体アリスは何に怒っているんだ。

そう下を向いて考えていると、廊下の方から私とアリスの名前を呼ぶ声がした。


見るとそこには、カイル先生が廊下からこっちへ来いと手招きをしていた。


どうやら私たち二人に来て欲しいらしい。

カイル先生が私たちを呼ぶ事なんて今までなかった。絶対ろくな事ない。


だが、呼ばれている以上仕方ないから行くしかな。


「…………なんですかその顔は」


「なんでもないです。……それでなんですか?」


「あなた達、風は好きですか??」


なんだその新手の宗教勧誘みたいな質問は。


「まぁ別に好きか嫌いかで言われれば好きだけど……、どしたの先生?」


「・・・・・・私もまあ一応は好きですけど」


質問の意味が全くと言っていいほど分からない。一体先生は何を言っているんだ?

ついに、働きすぎでおかしくなったらしい。


そんな一人で盛り上がっている私とは裏腹に、先生は「なら良かったです」といつものように無愛想に言いフロイラインの首根っこを掴んでどこかへ引きずって行く。


この私を掴む握力。どうやら私には拒否権というものがないらしく、このまま引っ張られるしかないらしい。

それについて来る形でアリスもカイル先生の後ろを歩いていく。


────


数分歩いた末ある場所に着いた。


「あのぉ、先生?カイル先生何を致しますんでしょうか……?」


フロイライン達が連れてこられたのは広い中庭だった。ただ草木が生い茂っている多くの学生達が行き交っている、なんの変哲もないただの中庭だ。


まさかここで三人仲良くシャボン玉遊びをするために呼んだ訳でもあるまい。


着いてから何が起こるのかと待つこと数分。中庭に来てだいぶ時間が経過するが一向に何も始まらない。


あとカイル先生はさっきから何故かずっと微笑んでいる。

なんなのか、何か楽しい事を始める子供の様にずっと何かを待っている様に見える。



退屈していると近くにいたアリスがカイル先生に近ずいてきた。

するとカイル先生は、私を掴んでいる手と反対の手でアリスを掴み、二人を持った状態でクラウチングスタートのような姿勢をしてしゃがみ込んだ。


とてつもなく嫌な予感がする。それは直感ではなく経験だ。カイル先生が何かをする時は私はだいたい酷い目に合っている。


「先生私家に帰りたいです!なんかやばそうなので家に帰りたいです!!」


「ダメです」


「あぁぁぁ、ねぇアリスこいつ頭おかしいよ!嫌ぁぁぁぁぁぁはなぢでぇぇぇ!」


「諦めなさい。私たちは話しかけられた時点で詰んでいるのよ」


アリスが何かを悟った様にそう言った。おおよその予想はできたのだろう。


するといきなり、先生は何も言わずに大きく手を振り上げ私たち二人を空へと上に投げ飛ばした。


「あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


二人とも風を突き破っていくように天高く飛んでいく。

先生が言っていた「風は好きですか?」とはこういうことか。

風を浴びさせるにも強引すぎるだろ。


なんなんだよこいつは。


普通こんな事はできることでは無いし、出来てもやらないのが普通だ。ましてや可愛い一生徒にやるか普通?


とにかく私が今言いたいことは───────


「あの野郎帰ったら絶対殺してやるぅぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

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