退屈しのぎの今日

人は退屈な時あくびをすると言う。


それは私とて例外では無いらしい。


今、アリスに魔法を撃たれながら殺されそうな状況でもあくびがでるくらいなんだ。

これは、紛うことなき退屈と言っていいだろう。


もうなんか色々だるい。もうほんと……、すっごいだるい……


もはやそのあくびの話題ですら、私の中でどうでもいい話になりつある


つまり私が今なんの話をしているのかと言うと、学校はやっぱりクソだと言うことだ。


私は、メリットが一切ない中で仕方なくやっている事について言っているのだ。


とにかく、私が言いたい事は本当にこの授業はなんなんだ。


私への嫌がらせなのか。はたまた、カイル先生は私の事が嫌いなのか。

それはカイル先生ぞのみ知る。


「真面目にやらないと殺すわよ」


「……私がジョンウィックならアリスをボコボコにして家に帰ってるのに」


涼しげに躊躇無く火炎魔法を放つアリスに冗談交じりに私は返答する。


私たちは今、魔法訓練の授業をしている。

私が一番嫌いな授業。


通称 お互い死ぬまで野郎の会。

授業につけていい名前じゃない。


首を狙うのは当たり前。凍らしても、燃やしても魔法だったらなんでもありの授業。

どうせ、一年後には治ってるから皆やりたい放題だ。


私も1回アリスに磔にされて殺されかけた事がある。

めちゃくちゃ泣いたらやめてくれたけど……


学校の中では誰でも魔法が使えるせいで、こんな授業あるのだ。

ふざけるのも大概にして欲しい。


何故学校で魔法訓練の授業なんてものがあるのかと言うと、学校とは七燈の許可が合って作られるからだ。


魔法とは一般人において生活には欠かせない存在だ。大抵の事は魔法でだいたい出来る。


水を出すことから、人を殺す魔法まで様々に。

そんな事だから、どこかの馬鹿が魔法の使い方を間違って町を壊されでもしたら迷惑を被るのは七燈なので、それが無いようにと学ばせているそうだ。


なら何故そんな使い方を学びましょうなのに、それで生徒たちの間で殺し合いをさせるのかが全くもって疑問である。


そもそも七燈に逆らってまで国を壊す馬鹿な奴なんかいない。


「ほんっと……アリス楽しそうだよね……」


こんな説明している間にもアリスは楽しそうに笑顔で炎を打ってくる。

あいつは多分サイコパスだ。


それより、何故七燈がいなくても魔法が使えるのか。魔法はさっきも言った通り(2話目参照)魔法は七燈がいて初めて使える。

だがこの街には七燈が居ない。


七燈がいなくても何故魔法が使えるのかは、魔力発生装置というものが学校にあるからだ。


七燈の血が入っていて、学校の範囲内なら何処でも魔法を使えるという便利な道具だ。


だから学校の中では七燈がいなくても魔法を使える。


魔力発生装置、これが私にとって最大の退屈の原因である。


私は魔法が使えない。


こんなくだらない機械があったところで魔法はでもしないし、出る気配もない。


使えなくなったと言った方がいいかもしれない。


私は、幼少期の頃は魔法は使えていた。

だけど、いつからか分からないが突然使えなくなった。

まるで電気を止められたかのようにいきなりだ。


だから私はこの授業が退屈するほど嫌いだ。魔法を使える楽しさが知っているからこそ言える。


だが、この授業でも出来ることはあるにはある。

私は魔法は使えなくなったが、代わりに新しい力を手に入れた。

血を操る力。いわゆる操血といわれるものだ。


人を殺すなんて事は容易だ。やった事ないけど。

でも、血を少し使っただけでも体が相当悲鳴をあげそんな事をすれば普通にぶっ倒れて死ぬだけだから絶対にしない。したいとも思わない。

だからこれを使うのは最終手段。


そもそも私はこの能力をあまり使いたくないんだ。

私は、今でも血を見るとあの日の記憶が鮮明へと蘇る。

だからこんな能力は使えたものでは無い。

皮肉にも血を嫌う私が血を扱えるなんて。つくづく神様ってものはクソだ。

あと、この能力は必ずと言っていいほど暴走する。まともに扱えた事なんて一度もない。

だから、普段は腰に挿しているナイフで闘っている。


剪定者 (ジャッジ)


私のような、個々が独自に使う力を世界ではそう呼んでいる。

一体何をジャッジするんだという話は置いておいて、私以外にもジャッジを持った人はいるらしい。


だが、私以外持っている人を見たことがないので、この力を持っている人はかなり人数が少ないと思う。


「説明終わった?」


「うん」


「それじゃあ、もう一回する?」


「やりたくないけど、やってあげる」


───────


目を覚ますと、そこには青々とした空に風に乗って飛ぶ数匹の鳥たちが見える………、はずもなくを虚無感に包まれながらベットで目を覚ました。

フロイラインは今保健室にいる。


「おはよう、大丈夫?死なない程度にやったつもりだけど」


天井を見るフロイラインを遮るように上から覆いかぶさる様にアリスがそう言った。


「あれが君の死なない程度なら君の感性は狂っているよ!どう考えてもやりすぎでしょ!」


全然大丈夫なんかでは無い。

普通に戦って普通にボコボコにされた挙句普通に気絶までさせられた。


もう治ったからいいものの、何もそんなにやらなくてもいいのにと思うほどにだ。

何故負けたのか。それは至極単純で明快なこと。

単に体力のなさというのもあるが、アリスが容赦なく魔法をうってくるから血が出過ぎてぶっ倒れた。


だが、血出すにしろ出さないにしろ結果は変わらなかったはずだ。むしろ今の結果の方がマシまである。


あのまま続けていれば死んでいた。アリスの目完全に殺す気だったもん。


「それでどうするの、家帰る?あなたその体じゃ授業受けれないでしょ」


「アリスちゃんが家まで送ってくれるなら帰るな〜。それかおっパイでも触らして〜むへへ〜」


「分かったわ、私授業あるからおやすみなさい」


「ちょっとちょっと!」


アリスはこんな私に慣れたのように、あしらったような声で保健室を後にした。


「アリスはつれないな〜」


私もアリスのあの態度には慣れてきた。慣れって怖いねホント。


「………………」


アリスが出ていったことで、部屋が静まり返り空いた窓から風が入り込んでくる。


暇だ。とても暇だ。

・・・・・・さて、アリスが帰った今これから何をするか考えるとしよう。話の綱のアリスがご帰宅なされたわけで、フロイラインは何もする事がない。


強いて言えば、寝るぐらのことしかフロイラインは思いつかない。アリス以外友達いないし。


そんな事を考えているとまた意識が遠のいてきた。

血が足りない時に考え事をするといつもこうなる。

徐々に目がぼやけてき、そしてフロイラインは気絶するようにまたベットへと伏した。



フロイラインが起きたのはそれから数時間後のことだった。廊下から聞こえる二人の言い争いの声で目が覚めてしまった。


「うるっさいな〜!私がまだ寝ている途中でしょうが!!」


外を見ると日が落ちかけて、夜が暗くなってきている。

普通なら学生達は帰っている時間だ。てゆうか私この時間まで学校にいるってことは誰にも起こされなかったんだ。


つくづく人望がないと思い知らされる。


こんな時間まで残ってる学生は誰かと思い耳を澄ませてみると、それはよく聞いた事のある声だった。


アリスだ。私の友人のアリス・アスター。

アリスがいつもうるさいのは知っているが、こんなに声を上げているとこを初めて聞いた。

あともう一人は・・・・・・、だれだ?聞いた事がない。

少なくとも私の知る人間では無い。


何を言い争っているのか気になり、フロイラインは保健室のドアを少し開け少し覗いて見た。

廊下にはアリスと帽子を被った背の高いお姉さんと、それに・・・カイル先生!?


まさかこれは!?三角関係での言い争い!?

・・・・・・それはアリスに限ってないな。アリスが男に籠絡している所を見たことがない。


それにカイル先生がほぼ空気だ。明らかに二人の言い争いに巻き込まれたという感じだ。


やめよう。そうだ、もうやめようそれがいい。

これ以上覗いているとろくな目に合わない気がする。

そう思い、ドアの隙間を閉めフロイラインがベットに戻ろうとすると、足音がこっちに近ずいてきている音がした。

覗いているのがバレたかと思いフロイラインはまたドアを少し開け見ようとすると、それよりも早くドアが勢いよく開いた。


「フロイライン帰るわよ!」


「うわぁ、びっくりした!!」


そこにはカバンをもって仁王立ちをしているアリスと、その後ろに背の高いお姉さんとカイル先生がいる。

アリスは随分と怒っているのか顔が少し赤くなっている。

私の全神経が赤信号を灯している。今のアリスは危険だ。

今のアリスに下手に逆らえば確実に殴られる気がする。

なので大人しく外へと連れ出される事にした。


──────


「それで、なんであんな事があって君は今私の家に堂々といれるわけ〜」


「しょうがないじゃない。家に帰りたくないもん」


アリスは今フロイラインの家にいる。


フロイラインの首元を掴んで家まで引きずり「ここま送り届けたんだから家に泊めて」と半強制的にOKを出させるような要求をされ、今日はなくなくアリスを私の家に泊めさしている。

やっている事がチンピラと大差ない。


「それで何があったの、私は聞く権利があると思うんですけどぉ〜。あと首はなして〜」


「………いいたくない」


アリスは下を向きながらムスッとした顔で不機嫌そうにそう言った。怒ったアリスはちょっと可愛い。

だが、ずっとこの調子である。学校から家へ帰る時からずっと何かに怒っている。

はっきり言ってくれてめちゃくちゃめんどくさい。


まあ、人には言いたくないことの一つや二つあるものだ。

ここで問い質してもアリスが傷つくかもしれないからこれ以上の質問は野暮ってもんだ。


あと、私は今からする事があるのでアリスに構っている暇なんてない。

時計を見ると、夜の11時をとっくにすぎている。


フロイラインは時間がないと思い、一本の花が飾ってある机に置いているものを全て片付け、実験器具を次々と並べていく。


「今日もするの?」


アリスはさっきより不機嫌そうに、どこか怒ったように言った。

私が今からすることは、お母さんがやっていた実験の続きだ。お母さんがどんなことをやっていたか知るために、かれこれ三年は続けている。

まだ全然と言っていいほど成果が出ていないがやっていると楽しいものだ。


「・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・」


部屋が静まりかえる。

アリスのあくび声と器具のガラスの当たる音だけが部屋へと響き渡り、時間が流れていくのを感じる。

アリスを見るとベットの上で目を擦りながらウトウトと横になりそうな体を必死に起こしてフロイラインを見ている。


「・・・・・・寝ていいよ、なんか見られてると恥ずかしいし」


「やだ。・・・・・・それより一つ質問いい?フロイラインって今は幸せ?」


「急だな〜。いきなりどうしたの」


「・・・・・・いや、忘れてちょうだい」


「アリスって時々よくわかんないよね〜。早く寝なよ」


「私はこのまま起きておくわ。フロイラインは好きにやっててちょうだい。あなたがどんな風にやっているか興味があるし。それよりフロイラインは寝なくて大丈夫なの?」


「だいじょぶ昼寝たからむしろ元気。それより私からも質問。アリスは私の事・・・・・・、フロイラインはどんな子だと思う」


「誰にでも甘えている犬ね」


「・・・・・・ありがとう。それが聞けて嬉しいよ」


フロイラインは゛あくび゛をしながらアリスへと小さい声で聞こえるようにそう、言った。

そしてアリスはフロイラインの言った言葉を無視するようにただフロイラインを見守るように、朝日が昇るまでベットの上でじっと毛布に包まれながら座っていた。


次の日

朝日が登り始めた頃外から地響きと上から何か降ってくるような音でアリスは目を覚ました。


前日の魔法の実践訓練で相当の疲れが出ていたのだろう、アリスは知らないうちに寝てしまっていた。

だが、そんな事は関係ないかのように疲れている体を叩き起すかの如くその音は鳴り響いた。

なんの前触れもなく。


「ちょっとなんの音アリス!?」


死んでいるかのように床に倒れていたフロイラインも大慌で起きた。

どうやらフロイラインも知らない間に寝ていたらしくアリスと同じ様にさっきの音で起きたらしい。

周りをよく見渡してみると、床には寝た時に落としたのか、割れたガラス器具や薬品などが転がり落ちている。


アリスは落ちた物を踏まないように慎重に玄関へと一歩一歩と進んでいく。

向かっている間アリスはただ胸騒ぎと怒りで頭がいっぱいだった。外で何が起きたか概ね検討がつくからだ。

それは゛私たち゛にとって災厄で最悪。そんな事を思いながら。


アリスは玄関の扉を開け、外に出るやいなや一言、「あぁもう、ほんと最悪」そう言って家へと入っていた。


それに続く様にアリスを追いかけていたフロイラインが外に出ると、フロイラインは自分自身の目を疑った。

嘘でもなんでもない。それは確かにそこに確かにある。


「すっご………」


フロイラインはただ呆然とした顔で上を見ながら言った。。

そこには、街を覆うほどの浮遊する島があった。


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