第7話
信陵君の援軍という形で、趙国は戦争を続けていた。
そうすると、孝成王が逝去した。この歴史線では、それほどの暗君とは言われなくなっていたな。長平の敗戦も邯鄲包囲もなかったしね。それはそのまま、俺の有能さを示している。
それと、平原君もいなくなっていた。こればかりは、どうしようもない。
そして登場する、暗君の
どうしようもない王様の一人だ。
即位したと思ったら、いきなり廉頗将軍の更迭を言い出すし……。本当に仲が悪いな。
「王様! 廉頗将軍がいなくなれば、趙国は侵略にあいます!」
「そちと、
「ダメっす。他国に武威を示せません! それに、廉頗将軍が他国に行ったら、脅威がそのまま趙国に向かいます!」
悼襄王は、ついに俺まで解雇すると言い出した。
ちっ。やっぱ、馬鹿王は変えられないな。
無言で王宮を後にした。
◇
「何処、行こっかな~」
「……括。なにニートしているんですか? 働きなさい」
母親からだった。
しょうがないじゃん。王様に、職を奪われたんだよ。
一族連れて、どっか行くかな~。
そう思っていると、秦国から連絡が来た。
『うち来ない? 大将軍にするよ。荘襄王より』
う~ん。魅力的だな~。行こっかな~。
馬鹿王に仕えるより、将来有望な国だよね。嬴政にも優しくしたし、冷遇はないと思う。いきなり丞相もありえるよね。呂不韋がいるから、左丞相かな?
そんなことを考えている時だった。
連絡が来た。
「趙括殿! 長平が攻め込まれています!」
話を聞くと、楽乗将軍が守っているのだとか。
秦国は、反転攻勢に出たんだな。
廉頗将軍の更迭は、回避されたけど、兵権を与えていないのだとか。
飼い殺しかよ……。
上党も取られちゃったのね……。
即位直後から、真っ逆さまに転落してんじゃん、荘襄王さんよ~。
「泥船に乗っても意味ないよな~」
「そう、悲観しないでください」
誰かが、部屋に入って来た。
「どちら様ですか?」
「李牧です。雁門から呼ばれました」
早くね?
でも、対燕国で呼ばれんだっけ?
◇
「趙王の側近が、王に従わない?」
話を聞いて驚いてしまった。
趙国の中枢には、忠臣しかいなくなっていたらしい。そういえば、郭開を暗殺したんだっけ。
そんで俺の有能さを示したら、佞臣は他国に逃げてったのか。
気がついていなかった。
「将来の丞相とも噂された趙括殿が、ニート生活とは……、嘆かわしいです」
やかましいわ! だったら兵権返せよ!
いや、落ち着こう。
「李牧殿がおられれば、趙国も安泰でしょう。私は隠居しています」
「そんなにお若いのに……。なんてやる気のない」
もうね、疲れちゃったのよ。
せめて王様がまともならな~。
「信陵君も亡くなりました。これから、各国は秦国の猛威に震え上がるでしょう。ですが、それを防ぐことができる人材がおります。統括殿、あなたです! あなたが丞相になれば趙国が救われる!」
「やりましょう!」
固い握手を交わす。
趙国にも、まだ人材はいたんだな。
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