第6話

 始皇帝になるはずだった嬴政は、まだ邯鄲にいた。

 呂不韋もいるし、貧しい生活はしていない。

 でも、屋敷から出られない生活みたいだ。


 取り次いで貰い、秦の公子の子楚しそに面会を申し出る。

 子楚は、会ってくれた。


「これはこれは。趙国の大将軍自ら出向いてくださるとは……」


「秦国とは、戦争中でしたので。辛い生活をしているかもしれないと思い、参上いたしました」


 でも、身なりも整っているし、大丈夫そうだな。

 子楚としては、平和な世の中を望みたいんだとか。

 少し言葉を交わして、屋敷を後にした。



「そろそろ、秦の昭襄王が、逝去すんだよな~。次の孝文王は、老齢で1年で終わりだし。子楚も荘襄王になるけど、3年で終わりだ……」


 問題は、4年後か……。





「秦の昭襄王が、亡くなられたと?」


「うむ、それで子楚さまが、秦国に帰られた。ただし、妻と子供を残してだ」


 う~ん。困ったぞ。

 幼少の始皇帝への迫害が、始まりそうだ。

 とりあえず、俺の趙家で預かることにした。これには異論が出なかった。まあ、目障りだったしね。


 それと、秦軍は戦争を止めた。

 一時的かもしれないけど、平和になるかな~。

 そう思ったんだけど、韓・魏・楚が動いた。奪われた土地の奪還だね。


「趙国も動くべきだ!」


 下級役人が騒いでいる――と思ったら、郭開だよ……。

 暗殺して、静かにさせる。平原君は、見て見ぬ振りをしてくれた。


 それと、白起は自害したそうだ。

 これで、当分は大丈夫かな~?





 一年が過ぎると、子楚が王になった。そんで、嬴政を返せと来た。

 さて、どうしようか……。

 暗殺が、最適だとも思う。

 だけど、まだ何もしていない子供を殺すのも気が引ける。

 子楚に手紙を書いてみるか。


『嬴政を太子にしないのであれば、返します。趙括より』


 すぐに返事が返って来た。


『帰国してから、子供をいっぱい作ったのでOKです。子楚もとい荘襄王より』


 大丈夫そうだ。

 丁寧に秦国に嬴政を送る。これで、趙国に恨みもないだろう。


「これで、歴史が動き出すかな~」



 魏国の信陵君が、秦国に猛攻を仕掛ける。

 趙国は、廉頗将軍を派遣した。もう平原君も、俺の言いなりだ。

 俺は、丞相代理といっても過言ではない地位についている。

 まあ、そうなるよね。戦争では、負けてないし、土地を取り返したので民心掴んでるし。

 嬴政の保護は、先見の明があったとしか言えない。嬴政を迫害とか殺害してれば、後から秦国に恨まれてたしね。

 全ての策が、当たっている。

 歴史知ってますからね。



「これからどうなされる?」


 平原君からだった。


「う~ん。とりあえず、内政の充実からで」


 後数年で、趙国の孝成王も死去する。

 その時に、廉頗将軍を引き留められれば、まだ趙国はなんとかなるはずだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る