第5話

 長平からは、廉頗将軍が来てくれた。砦の守備隊も残してある。秦軍につけ入る隙を与えない。

 魏国からは、信陵君だ。

 楚国の春申君は……、来ないんかな?


 楚国とは、まだ同盟を組んでいないらしい。

 だけど、戦力差は10倍くらいになったかな~。三方向から白起の陣を牽制する。

 流石に白起といえど、不利を悟ったらしい。一戦もせずに撤退してくれた。


 とりあえず、信陵君に挨拶に行く。


「助かったとよ~。あんがとね~」


 固い握手を交わす。


「また来ると思います。兵は解かないでおいてください」


 信陵君は、了承してくれた。



 夜になった。

 李同将軍と廉頗将軍との3人で、今後を話し合う。


「白起を倒さないと、今の状況ってどうにもなんないんじゃないんですか?」


「そう簡単に言うな。数倍の兵力差でも互角だったんだぞ」


「一度、邯鄲に戻りませんか? 平原君とも話したいです」


「うむ。上党と長平に兵を残しておけば、時間は稼げるだろう。李同将軍頼む」


「承知」


 いいアイディアが出なかったな~。

 その後、一人になって考える。


「……計略でも仕掛けてみるか?」


 密偵を放って、白起の悪い噂を流す。

 離間の計、そのまんまだな。

 この数年、秦国は国土を広げられていない。それと、白起と宰相の范雎はんしょは仲が悪い。

 そこにつけ込む。





 一年が過ぎた。

 白起が出て来ることはなくなった。


「マジで、白起と范雎は、仲が悪いんだな~」


 秦軍は、王陵おうりょうが大将軍になって他国に攻めているけど、戦果が挙がらない。

 その間に、韓・魏・趙・楚で同盟を行う。


 燕国が攻めて来ているけど、防衛はできている。龐煖将軍がいるし、大丈夫だろう。ちなみに、この人も爺だ。

 斉国は、沈黙している。昔は、中華の半分まで獲った国だけど、合従軍を起こされて、楽毅がくきに二城まで追い詰められたんだよね。その後は、大人しい。

 趙国は、兵士はいるので、補給さえ続けば攻め込まれても問題ない。兵士を率いる将がいないので、攻めることはできないけど。


「趙国って、若い人材がいないんだよな~」


 父の代は、李牧と廉頗、藺相如、龐煖とかいたんだけど、次世代が育たなかったんだな~。もしくは、死亡してるか。

 李牧が暗殺されると、趙国はあっさりと滅亡するんだし。

 あ~、そうだ。司馬尚がいたけど、活躍するのは僅かな期間なんだよな。

 慶舎もだ。歴史書に二行の人なんだよね。


「マジに趙括が、最後の希望だったのかもしれないな~」


 秦国は、これから若い人材が育って行く。

 その差なのかもしれない。


「後、王様だよね……」


 廉頗将軍が、嫌っている王族をどうにかしないといけないな~。

 俺としては、始皇帝は好きじゃないんだけど、このままでは統一される歴史は変わらないと思う。

 何とか防ぎたい。


「良し! 始皇帝君に会いに行こう」

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