第4話

「援軍には、李同を将軍にして送ろうと思う」


 平原君からだった。

 これも歴史と違うな。李同は、邯鄲が包囲されてから平原君に見いだされる人物だ。

 まあ、歴史書が正しいとも限らないか。


「45万人の兵士……。趙国の命運は、彼等次第なんですよね」


 廉頗将軍は、黙って聞いている。

 さて、どうしようか……。

 進軍となると、20万人が限界だ。これは、補給の問題からだ。

 秦軍は強くて、数で優っても勝てるとは限らない。

 それは、廉頗将軍が率いてもだ。

 白起がいては、良くて相打ちだろう。

 それと俺は、上党を攻略しなきゃなんない。


「白起と戦わずに、魏国と上党に兵を送る……。長平を護りながら……かな?」


 平原君と廉頗将軍が頷いてくれた。

 兵法書では、一点集中だけど、今回は、三方向同時展開しないといけない。

 戦略的に下策でも、兵を分けないといけない場合もある。

 戦略を練らないとな~。





 王に謁見して、再度長平に向かった。

 副将として、廉頗将軍も来てくれた。それと、李同将軍もだ。


「まず、上党に兵を向けます。秦国は王齕おうこつを向かわせて来るでしょうから、討ち取ってください」


「……簡単に言うな」


 3人で話し合った結果だった。

 上党で秦軍を打ち破れば、魏国を攻めている軍の背後を取れる。そうすれば、魏国から秦軍が引き上げる――と思う。

 白起とは、徹底的に戦を避ける。

 万が一の場合は、廉頗将軍に当たって貰う。


 李同将軍に軍を率いて貰い、上党へ向かう。

 長平には、廉頗将軍だ。砦を空にするわけにもいかない。


 上党は、守備兵がほとんどいなかった。

 城をサクッと落とす。

 入植していた秦人は、逃げて行った。


 物資を城に移して、準備完了。待っていると、秦軍が来た。

 王齕だな。


 城を攻められるけど、こっちは準備万端で待ち構えていたんだ。秦軍が強くても、防衛が可能だ。

 つうか、秦軍の被害が広がって行く……。

 ここで、李同将軍が城から撃って出た。


「史実だと三千人で特攻したらしいけど、今回は、三万人だ。規模が違う」


 李同の特攻が、秦軍を破って行く。

 秦軍の陣形が、みるみる崩れて行く。

 これ、行けんじゃね?


「城の兵も突撃して~! 総攻撃よ~!」


 もう城の防衛は、必要ない。戦力の逐次投入はしない。

 陣形など無視して、全兵力で王齕を包囲する……。兵は神速を尊ぶんだ。多少不格好でも包囲完了だ。

 いいね、いいね。兵法って感じじゃないけど、数は正義だよね。



 その日……、王齕が討ち取られた。





「ヤバくね? 秦王が怒りそうだぞ……」


 ちょっと、戦果を挙げすぎたかもしれない。

 そう思っていると、魏国を攻めていた秦軍が上党に向かって来た。

 白起が来たぞ~。白来起来……。


 とりあえず、城の門を閉じて防衛の構えだ。

 白起は、城から10里の地点に陣を敷いた。


「一応、予定通り……かな?」


 冷汗しか出てないけど、俺の戦略は、ここからなんだ。

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