第2話
家に帰って来た。
とりあえず、剣を一本だけ残して、部下に武器防具を与える。俺のコレクションの放出だ。
こいつらは、遠いけど親戚でもある。俺の私兵だ。
大騒ぎになって、奪い合いを始めた。
そうすると、また母親が現れた。
「……括。これは?」
「これは、母上。出発前に、部下に武器防具を与えております。少しでも士気が上がってくれれば、いいのですが」
「自分の身を守る武器を、部下に与えるというのですか?」
「今回は、総大将なので。私が武器を抜く時は、敗戦が確定した時です。それならば、剣一本あれば十分です」
あれ? 母親は、大泣きだ。
間違ってないよね?
◇
趙家の千人の私兵を率いて、長平に向かった。
長平では、廉頗将軍が待っていたよ。
命令書を渡す。
「けっ、趙国の命運もここまでか」
この人、『戦国四大名将』って呼ばれてるんだよね。でも、指揮権を取り上げられて、他国に亡命すんだっけ。
三代の王様と仲が悪いんだったな。それと、
とりあえず、地図と藺相如からの言葉を書いた木簡を出した。
「藺相如殿は、平地戦を避けよとのことなので、私も防衛戦に徹します。もう二年ですからね。秦国も補給に問題を抱えてるでしょうし、ここは他国を動かしたいと思います」
「……ほう?」
廉頗将軍は、帰って行った。
さて、こっからだな。
まず、廉頗将軍の将兵と俺の将兵を入れ替えるけど、戦術は今まで通りとした。
とにかく、砦に籠っての防衛戦だ。
でも、旗を変えると秦軍が襲って来たよ。
「弓矢で押し返せ!」
矢が飛び交うけど、ここまでは届かない。つうか、低いところにいる秦軍の被害が酷いな。
「趙括将軍! 今です! 撃って出るべきです!」
そだね~。兵法的にはそうだよね……。
「あ~、あれは演技ね。ちょっと離れた所に、伏兵がいっぱいいるから。砦から出ないでね~」
「「「えええ?」」」
兵法書通りなら、今突撃すべきなんだけどね。今の俺は……、しない。
夜になって、静かに歴史を思い出す。
「確か……、孝成王が積極策を執れって言ってくんだよな~。でも白起将軍もいるから、まず勝てないんだよな~」
今はいいけど、事前に言い訳を考えておかないとな。
「確か歴史では、長平の後に邯鄲を攻められて、平原君が楚に援軍を乞いに行くんだよな~」
長平で負けた後に、『戦国四君』の3人が、合従軍を起こして、秦を追い返すはずだ。
だけど、この長平の戦いが起こったのは、韓の土地を趙に帰属させたことに端を発する。その案を出したのが、平原君だ。
内心、冷汗をかいているだろうな。
「藺相如殿が動いてくれれば、合従軍の時期が早まんだけど……」
廉頗将軍は、王様に嫌われてるしダメなんだよな~。
次の王様もどうしようもない。その次もだ。
「あれ? 趙国ってこの時点で詰んでいる?」
王様変えないと、ダメっぽいな。
◇
秦軍は挑発して来たけど、趙軍は動かない。兵法書通りに攻撃を仕掛けてくるのは、秦軍だった。
そうすると、邯鄲から使者が来た。
「王命だ。撃って出よ。戦争の早期終結だ」
「あ~、いま~、合従軍の準備中です。もうちょっと待ってください」
「……はえ?」
使者は、帰って行った。
後は、藺相如と平原君次第だよな~。
行けっかな~。
俺は、楼閣より秦軍を見た。
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