バイトリーダー、ユニークのヒントを得る。
ふと思った。ルージュとネルミーナのごたごたはどうなったのかな。
俺としては今後もジャミルとの交流を続けたい。
けど貴族の子供って親同士の仲が悪いとろくに話すこともできないらしいしなぁ。
「ところで兄上」
「え? あっ、うん」
これはよくないな。
この世界に転生してからというもの、様々な問題や悩みをずっと自分1人で解決してきたせいで、何かあるたびに黙考する癖ができてしまってる。
せっかく隠し事無しで話せる相手ができたというのに、これじゃ意味がない。
「どうした?」
「実は誰にも言ってないことがありまして」
「それは今世のことでか?」
「はい」
前世のことを俺以外に話してないみたいだから、必然的にそうなるよな。
ぶっちゃけ、聞くのが恐ろしい。
嫉妬に狂ったネルミーナが俺の暗殺を企ててるという内容だったらどうしよう。
「言ってみ」
「自分のクラス、
「ふむ」
この話題は予想外だ。
なぜなら、【自宅警備員】は
名称以外は何も判明されてない、謎に満ちたクラスだからだ。
特に話すことはないというか、話せることがないはずなんだけど。
「実はですね。クラスの詳細を把握してるんです」
「は?」
なんでだよ。
歴史書を網羅してもノーヒント。
説明書も存在しない。
まさに神のみぞ知ると言った表現が似つかわしいものなのに。
「説明しても納得して貰えるかは分からないんですけど」
「いいよ。こっちは藁にも縋る勢いで困ってるし」
「おそらく何のお役にも立てませんけど」
前置きが多いな。そんなに自信がないのか。元東大生のくせに。
「いつの間にか分かっていました」
えぇ。
本当に役に立たないじゃん。藁より使えないじゃん。
「もうちょっと詳しく説明できない?」
「えっと。選定の儀式の翌朝のことです」
「うんうん」
「目覚めたらなんか分かってました」
「なんだそれ」
声に出しちゃったよ。いや、仕方ないだろ。出るよ、声くらい。
「何と言えばいいか。あっ、そうだ。これを見てください」
ジャミルが自分の耳を指さした。おお、ひょこひょこ動いてる。
「これ、兄上はできますか?」
「できないね。中学の頃にできる奴がクラスにいたと思うけど」
「たぶんこれと同じです」
「ごめん。まったく分からない」
「すみません。説明が下手で」
「いや、こっちの理解力の問題だと思うよ。もうちょっと優しくお願いできる?」
「えっと。じゃあ、兄上も手や足は普通に動かせますよね」
「そりゃあね」
「ではどうやって動かしているかの自覚はあります?」
「え。意思? それとも脳の電気信号みたいな?」
「そこの解釈はお任せしますが、耳を動かすのも同じようなものです。人間は意思で耳を動かすことができる。できないのは動かし方を知らないからでしょう」
ジャミルは再び耳をひょこひょこ動かした。
「自分はこれをいつからできるようになったか分かりません。いつの間にかできるようになってたんです。学びもせず、知らされてもいないのにです。ただ、なんとなくこうするのかなと思って、実際にやってみたら動かせたんですよ」
どうしよう。
本当に参考にならない。
理屈は分かるけど、それは天才肌だからじゃないの? と言いたくなる。
「なるほど。そんな感じで【自宅警備員】に秘められた力も理解できたと」
「そうです」
グレそう。
この世界で唯一分かり合える存在のはずなのに、ことクラスのことに関しては何一つ分かり合える気がしない。
「なので兄上の【
「だといいなぁ」
「自分としてはそう思い悩むことでもないと思ってますが」
「その心は?」
「すべてかは分かりませんが、他のユニークも解明されてますから」
一理あるな。
言われて気付いたが、ナハト王の戴冠にはおかしな点があった。
【
なのに【王の中の王】の能力を有効活用するためにあいつは国王にされた訳だ。
よく考えると順序が逆じゃん。
ナハトが戴冠したらヴァイト国民のステータスに変化が見られた。よって【王の中の王】の効果はコレに違いない。というのが正しい流れじゃないのか?
どうして【王の中の王】の能力を戴冠の前に知ることができたんだろう。
思い付く回答は、ジャミルが言った通りのものだ。
学びもせず、知らされていなくとも、自ずと理解する時が来る。
「国内のユニーク持ちに会いに行ってみようかな」
それでみんながジャミルと同じことを言うなら、そういうことなんだろう。
そもそもナハトや宰相が【歯車の王】について何の検証もしようとしないのがおかしいんだよな。
この問題は時間が解決してくれるのかもしれない。
そう思うと多少は気が楽になる。
しかしその時間とやらはどのくらいなんだろう。
1年や2年くらいならともかく、10年とかだと困るぞ。ガチで。
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