バイトリーダー、己をよく知る。
ステータス。
ゲームでよくあるアレだ。
死ぬ直前くらいだとアニメやマンガでも流行ってたな。
そのステータスだが、この世界においては8種ほど見つかってるらしい。
よくあるレベル、HP、MP、EXPは無いとのことだ。
STR――ストレングス。いわゆる力だ。筋トレをすれば上がるし、老化が進めば下がる。筋力や腕力の数値化だと思うが、筋肉量の少ない人でも高い場合があるからよく分からない。ウチにいるやせ細ったメイドがB判定(60~79)だったりするしな。俺は6才児らしくD判定(20~39)なのに。
VIT――バイタリティー。いわゆる生命力だ。これも筋トレをすれば上がるし、老化が進めば下がる。とにかく運動しまくれば上がるため、全ステータスで最も高くなりがちだ。ろくに家から出てない俺は余裕のD判定だけどね。
INT――インテリジェンス。いわゆる知力だ。理不尽なことに勉強をしても上がらない。現状、分かってるのは3点で、1:魔力の保有量に比例する。2:50以上で魔術師の才能アリと判断される。3:下がることがない。なお、俺はC判定(41~59)だ。試したことはないけど、もしかしたら魔術を使えるのかもしれない。
MEN――メンタリティー。いわゆる精神力だ。正直、名称詐欺だと思う。教会の出身者に高い者が多く、INTと同じで50以上で聖職者の才能アリと判断される。神通力とか信仰心とかの方が近いんじゃないかな。宗教に興味のない俺は当然のようにE判定(1~19)だし。
DEX――デクスタリティー。いわゆる器用さだ。手先だけじゃなく、口先にも関係あるらしい。盗賊は当然として、逮捕した詐欺師が軒並み高いそうだからね。音楽家や芸術家、錬金術師なども高いみたいだし、逆にこれが低いとバカにされる可能性がある。6才の俺でもB判定だからね。
AGI――アジリティー。いわゆる素早さだ。これも足の速さや動きの俊敏さだけじゃなく、頭の回転の速さも該当するが、体か頭かの片一方が高性能なら数値が高くなるみたいだ。これもDEXと同じで大体の人が高いため、D判定以下の人はもれなくノロマの称号が与えられる。俺はC判定だからセーフ。
LUK――ラッキー。いわゆる運の良さだ。これは生まれてから死ぬまで変化しない。全ステータスで最も不明瞭なもので、何に作用するのかまったくの不明。A判定(80~99)で生まれても3日以内に病死することもあるし、貴族という恵まれた立場に生まれながらE判定の者もいるとのこと。俺はB判定だけどね。
CHA――カリスマ。そのままカリスマだ。人を引き付ける力という点においては魅力と言っていいかもしれない。人々から尊敬の念を集めれば自然と高まるが、スキャンダル1つで一気に底をつくこともあるそうだ。全ステータスで最も乱高下するやつだね。1年前に測定した時はB判定だったが、今はどうだか分からない。
「クラスは最も高いステータスの影響を受けるらしいですね」
「うむ。ワシはDEXじゃった。ナハト王はCHAじゃな」
「ですが必ずしもそうとは限らないんですよね?」
「当然じゃ。6才の時点でSTRやVITが最も高い子供なんぞおらんからのう」
つまり、選定の儀式はピックアップガチャなのだ。
STRが高ければSTR系のクラスを引く確率が他と比べて10倍高いですよーって程度でしかない。
良いクラスが欲しければ乱数の女神に祈りを捧げるしかないのである。
「王位継承権を得られる条件は知っておるか?」
「CHA系クラス。すなわち統率型と呼ばれるクラスを獲得することですよね」
カリスマ無き王は王に非ず。
初代ヴァイト国王がそんなことを言ったせいで、この国の跡目争いはとてもシンプルなものとなった。
王に相応しき者は神様によって選定される。
その考えが根付いたお陰で、身内による王族の暗殺事件はほぼ起きない。王位継承権を持つ者が2人も現れることが滅多にないからね。
むしろ統率型の子供がなかなか生まれないせいで国が滅びそうになったことがあるくらいだ。
まだ20代のナハトが早くも代替わりを求めてる理由もそこにある。
彼はヴァイト王国を滅ぼさないためにも、統率型クラスを持つ子供が現れるまで、50人以上もいる妃を毎夜のごとく抱きまくらないといけないのだ。
まさにハーレム。男としては羨望の念を抱かずにはいられない。
けどそこまでいくともはや種馬と変わらないからなぁ。
王様なのに人権がない感じなのはちょっとねぇ。
「では解析してみるかのう」
ローレンが両手を差し出してきたから、俺も両手を差し出してみる。
握られた。そして目を閉じ、めっちゃにぎにぎしてくる。
これもスキルの発動に必要なモーションなのかな。かなり気持ち悪いんだけど。
「解析完了じゃ」
「え。早いですね」
解析の宝玉を用いる場合、1つのステータスにつき1分掛かる。なのにローレンのスキルでは全ステータスの把握に1分も掛かってない。これ、かなり実用的では。
「少し待っておれ」
ローレンは卓上の羊皮紙に羽ペンを走らせていく。なんで過去の転生者はこの辺を改善してくれなかったかな。ボールペンくらい作っといてくれよ。俺も構造をよく分かってないけどさ。
「ほれ。できたわい」
差し出された羊皮紙には達筆な字でこう書かれてた。
STR:23+2
VIT:20+2
INT:55+2
MEN:18+2
DEX:74+2
AGI:48+2
LUK:66+2+34
CHA:81
やっべ。カリスマが上がってるじゃん。A判定になってるわ。
百年に1人の神童とか評されたせいなのかな。この+の数字がよく分からんが、適用されるのが素の数字なら統率型クラスがピックアップされちゃってるよ。
「かなり優秀じゃな。魔術師の才はルージュ譲りかのう」
このジジイ、何かとルージュを持ち上げるな。もっと他に触れるとこがあるだろ。
「この+2ってなんですか?」
「加護じゃな。ナハト王の【
まじでチートだよな。ガチで50年は王様をやった方が良いと思うぞ。ギリギリで魔術師の才能がなかった奴が魔術師になれちゃうくらいぶっ壊れの効果だもん。
「LUKの方はよく分からんのう。+34なんぞというバカげた大きさの補正は初めて見るのじゃが」
あっ。
これはあれか? お祈りメールの数か?
応募した会社の数が34だった気がする。
「なんでしょうね」
説明する訳にもいかないし、すっとぼけるしかないな。ついでに話を逸らしてしまおう。
「この加護の補正分は解析の宝玉に反映されないんでしょうか?」
されてたらMENはD判定。LUKはA判定になるはずだしさ。
「されないようじゃな。あの宝玉は百年以上も前に開発されたものじゃからのう」
「そうなんですか。いい加減アップデートが必要ですね」
「できる者が現れたら、の話じゃがな」
そっちの問題があるのか。もしかしたらこれも転生者の成果なのかもね。
技術革新には何のステータスが必要なんだろ。それともクラスが重要なのかな。
これがフラグになってそっち系のクラスになってくれたらいいんだけどなぁ。
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