第3話 自動販売機を使う

ここはお金が存在しない世界。良いことをした分、報酬として翌日の時間の長さが増える世界。カイトが初めてこの世界に来たときの話。


『しまった…。寝ていた。』


カイトは公園のベンチで目を覚ました。


『どこだ、ここ?』


『見覚えがあるようで、どこかが違う。そんな印象の公園…。スマホで現在地を調べるか、便利な世の中になったよな…』


『ない!、スマホがない!!』


『財布もない!!!!』


カイトはベンチから立ち上がり、ベンチの下や周囲をぐるぐる回ってみるが手がかりはなかった。


『盗られた!最悪!』


一気に目が冷めた。


『場所もわからず持ち物もない。まるで異世界だな。とりあえず何とかして家に帰るか。どこかの駅が近かったら場所もわかっていいんだけど…』


公園の入口まで行くと、自動販売機が並んでいるのが目に入った。


『お金を持っていないと逆にお金が必要そうなものに目がいってしまう…。あっ、下に硬貨が落ちていたりしないかな。』


自動販売機の周りを探すが、そうそう落ちているわけもなく、ふと、しゃがんだ姿勢から自動販売機を見上げる。


そこには小学生が2人立って、こっちをみている。


『やばっ、恥ずかしい。』


ごまかすため自販機の修理を装うように機器を触る。自販機の後ろに周り、調べるフリをして正面に戻る。


『良し、異常なし!』


『???、異常なし?。あれ?この自動販売機、変だ!お金を入れるところがない!!』


すると2人の小学生はお金を入れずに自動販売機のボタンを押し、ジュースを持っていった。私が邪魔だっただけのようだ。


『良かった~。変な人と思われなかった。あれ?この自販機は無料なのか?』


恐る恐るボタンを押すと、「ガタン」ジュースが出てきた。


『無料?!、どうなっているんだ?、誰かに見られていてモラルのテストをされているのか?』


『しまった。自動販売機の下をゴソゴソしてるのを見られていたかも…、いや、今更考えても仕方がない。』


1本のジュースを飲みながら、しれっと何食わぬ顔で去ることにした。



本編

https://kakuyomu.jp/works/16817330657339730406

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る