第3話 不思議ちゃんとゲーセン
「…………」
「何? 早く入る」
俺は姶良柚とゲーセンに来たのだが……入り口の前で止まっていた。
理由は、平日の午前中&制服&男女&女が美少女で普通にモデル体型(胸もそこそこある)というミスマッチのせいで数多な人から注目を浴びているからである。
そんな俺を姶良柚は不思議そうに見ているが……貴女のせいなんですけど。
「いや、姶良さんのせいでめちゃくちゃ目立ってんの」
「ん、何故?」
姶良柚が本気で意味が分かっていない様子で、首を傾げている。
そんな彼女に俺は大きな溜め息を吐いた。
「確認だけど……自分が異性にモテることは自覚してる?」
「ん、えーたに告白された」
「し、下の名前……ふっ———って違う!」
くっ……一瞬物凄く嬉しいと思ってしまった俺を殴ってやりたい。
「んん”ッ!! それは忘れてくれ……兎に角! 姶良さんは沢山の男子にモテる程美少女なの。だから目立つわけ」
「えーた面倒」
「ぐはっ!?」
じょ、女子に面倒って……ヤバい死ぬ。
ショック過ぎて余裕で死ねるぞ。
「ん、行こ」
「あっ、ちょっ———それはエグいて!」
俺が多大なダメージを食らって心臓を押さえていると、姶良柚が俺の手を引いてズカズカとゲーセンに入って行く。
それと同時に周りから———特に男性から物凄く嫉妬の目を向けられた。
や、やめろよ……そんな目で俺を見ないでくれ……普通に怖いから。
彼女とは付き合ってないどころか、つい先日フラれたばかりなんだよ……!
姶良柚の距離感が明らかにバグっているだけなんだ!
しかし俺の心からの叫びは周りの人間どころか姶良柚にも届くことなく、俺はさながら連行されるかの様にゲーセンの中に入った。
「———ん!」
「それ以上はやめた方が……」
「やだ。絶対取る」
ゲーセンの猫のぬいぐるみが取れるクレーンゲームにて、俺は、既に1000円を溶かした姶良柚を止めようとしていたが、彼女は意気地になって新たな100円を投下した。
「次は、取れるっ!」
「いや無理だから。もう既に完全にミスってるから」
「———っ!」
姶良柚は、この世の終わりの様な表情で猫のぬいぐるみに触れもしないクレーンを見ながら無言で台パンする。
不覚にもその姿は可愛かったが、流石に可哀想になったので、俺が100円を入れると、姶良柚が驚いた様に俺を見る。
「!? 何で」
「まぁ少し任せなさい。巷で『ゲーセン泣かせのクレーンゲーマー』と呼ばれてた俺の力を見せてやろう」
嘘です。
ただカッコつけただけです。
何なら、ずっと昔から『クレーンゲームで取るより買う方が安い』と豪語してました。
しかし、任せなと言ってしまった手前、何としても取らなければ。
普通にダサいし最悪殺されるかもしれん。
俺は緊張に手を少し震わせながら、横からクレーンとぬいぐるみを見て、前後に進むボタンを押す。
彼女が1000円かけて動かしてくれたお陰で、落とし口に近付いているので、ワンチャン取れるかもしれない。
俺はうろ覚えの知識で、猫の首にあるタグ目掛けて2本爪の片方を突き刺す。
すると美少女が側にいるお陰か、片方の爪が奇跡的にタグにすっぽり入った。
「おお!」
「ん!」
思わず俺達は驚きの声を上げる。
更に、幸運の女神が俺に微笑んでくれたのか、そのままタグがアームに引っ掛かって、上に上がった時の『ガタンッ』という衝撃で、奇跡的に落とし口に落ちた。
「おおおお!!」
「す、凄い……!」
俺は取り出し口から猫のぬいぐるみを取り出すと、姶良柚に渡す。
すると何故か姶良柚はキョトンとした後、俺にぬいぐるみを返そうとしてくる。
「取ったの、えーた」
「いや、俺いらないし。それに俺『ゲーセン泣かせのクレーンゲーマー』だからあと3つくらい余裕で取れるし」
勿論、俺は本当にいらないので拒否。
そんな俺の言葉を聞いて、姶良柚は少し目を大きくすると———。
「……ん、ありがと」
そう言って、少し口角を上げた。
その後は普通にめちゃくちゃゲームした。
あと帰って母さんに死ぬほど怒られた。
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人気が出れば1日2話上がるかも。
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